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#9

#9(ナンバー・ナイン)ニューアルバム“Sing”発売記念ライヴを観に新宿のurgaに行った。たどりついたときはVoodoo Hawaiiansの演奏中。元プリンセス・プリンセスのギタリスト、中山加奈子のバンドがヴォーカル/ギターのバンドであるらしい。メンバーはあとギター、ベース、ドラム。曲調はキャッチーだけれどパワフルにはじけた演奏で、めいいっぱいロックンロールしていた。人がいっぱいで全然見えず、たまに場内後ろのほうにあるTVモニターをちらちら見る以外ほとんど音を聴いているだけの状態だったのだけれど、すごく上手い演奏でCDを聴いているかのようにキレイできらびやかなサウンドだった。#9もむちゃくちゃ上手いバンドだけれど、さすが超メジャーの世界でやっていた人はすごいなと思った。

#9がはじまる前に前のほうに移動。今度はステージが良く見える。#9のメンバーは元ガスタンクのBAKI(ベース/ヴォーカル)、コーサク(ギター)、そして昨日もAfter the Rainで観ている藤掛さん(ドラム)。ずっと昔はじめて#9を観たときは、ガスタンク時代とのあまりのギャップにびっくりしたというのが正直なところ。その頃とはまた多少サウンドが変わってきている気もするけれど、基本はひたすら演奏のパワーでぐいぐいひっぱっていくのが何より魅力のロックンロールバンドである。レコ発ということで気合もばっちり。もちろんいつもはそんなに気合が入っていないなんてことはないけれど、前回観たときはBAKIがけっこう酔っ払っていてリラックスした雰囲気のライヴだった。今日は客の入りもノリもいい感じ。MC少なめでどんどん曲をやっていたけれど、たまに曲間があくと、すかさず観客からメンバーの名前が呼ばれまくっていた。

最後はゲストを交えての演奏。たぶんゲストはVoodoo Hawaiiansのギターの人と中山加奈子(コーラス)だと思うのだけれど、さっきは本当にステージが全然見えていなかったので自信がない。1曲演奏して、そのあとギターのゲストの人はステージに残ってそのままYou Really Got MeとAll Days and All of the Nightを演奏。#9のライヴでは最後The Kinksメドレーなど昔のロックカヴァー大会になることがよくある。しかも特に事前にセットリストに入っているわけでもなく、なしくずし的にそのようになっていくらしいのだ。

The Kinksのカヴァーで終了したものの、声援に応えて再びメンバーが登場。ゲストのギターの人にコードを教えたりしている。アンコールは1stアルバムの「ワン・ツーでダラッタ~Simple Song」。BAKIはベースを弾かないでステージ前の柵に上って唄っていた。ひっそり橋本ジュン(Aというバンドのギターの人)が現れてベースを弾いていた。藤掛さんのドラムを観るのはきのうに続いて2日連続だけれど、きのうは演奏時間も短かったし、今日も続けて来てよかったなと思った。

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殺す・な博

青山ブックセンター本店でおこなわれた椹木野衣『戦争と万博』刊行記念イヴェント、「殺す・な博」に行ってきた。「殺す・な」というのは、イラク戦争の勃発と前後して美術評論家の椹木野衣や小田マサノリが中心となって結成された集団(?)。実際の活動については実はあまりよく知らない。たまたまメールマガジンで見かけた「殺す・な博」の案内には、「音あり光ありトークあり映像ありハプニングありの不定形万博鎮魂イベント」と書いてあり、2時間でなんと10人以上の出演者が載っている。どのようなイヴェントなのかさっぱり想像がつかなかったのだけれど、個人的には特に山川冬樹、伊東篤宏が観たいと思って足を運んでみた。

会場はふだんトークショーなどがおこなわれている部屋2つ。どう考えても大きな音で楽器演奏などするような雰囲気の場所ではない。メインの大きめの部屋(20畳ぐらい?)が <お祭り広場2>、その隣の小さい部屋(10畳ぐらい?)が <ネオ鉄鋼広場>。各部屋には出展者のそれぞれのエリアが割り振られ、パヴィリオンを出展している。出展者の振り分けは以下のとおり。

<お祭り広場2>
椹木野衣「戦争と万博の塔」
小田マサノリ「イルコモンズ生活館」
カスガアキラ「超気配主義館」
工藤キキ「万博鍋館」
田中偉一郎[安全爆弾]
点[グラフィック参加]
山本ゆうこ「山本・現代・映像館」
ヲノサトル「魅惑のムード音楽館」

<ネオ鉄鋼広場>
伊東篤宏「光と闇(病み)館」
宇治野宗輝「まわる電磁館」
山川冬樹「人体のふしぎ館」

ミュージシャンは15分ずつ区切られたタイムテーブルにしたがって登場。そのタイムテーブルにはトークショーも含まれている。2つの部屋を行き来しながら、いろいろな組み合わせのセッションが観られるように工夫されているわけだ。なるほど。

開演10分前ぐらいにたどりつき、とりあえず <お祭り広場2> で各パヴィリオンを観察。小田マサノリの展示を観たりカスガアキラの機材を眺めたり。山本ゆうこはホットプレートを持ち込んで鍋を作っている。正面のスクリーンでは工藤キキによるヴィデオ上映。キャプションによると宇川直宏の映像作品などが流れているらしい。映像を観て過ごしているとまもなく開演の3時になり、ヲノサトルのオルガン演奏がはじまった。この時間、隣の <ネオ鉄鋼広場> は山川冬樹のライヴなので早速移動。

山川冬樹は心臓の鼓動にしたがってたくさんの電球が点滅するようになっている機器を上半身裸の身体にとりつけ、ホーメイなどのヴォイスパフォーマンス、さらにはエレクトリック・ギターでフィードバックノイズを出していた。しかも弦をはじくことは一切せずに、両手でつかんだギターを思い切り振って音を出し、それをエフェクターで増幅させる。山川冬樹のこのパフォーマンスは去年「倍音闇鍋」という倍音Sとの企画ライヴでも観ているのだけれど、これは本当にすごい。激しい動きで心臓の鼓動とともに電球の点滅が速くなったかと思うと、息が止まっているかのようにしばらく電球が消えて真っ暗になってしまったり、あるいは数秒間点きっぱなしになったり。酸欠状態スレスレの緊迫感あふれるパフォーマンスは本当にスリリングだ。最初は人が少なかった <ネオ鉄鋼広場> にどんどん人が集まってきた。あっという間の15分が終わり、次は宇治野宗輝の出番。宇治野宗輝の機材の周りにはすでに人だかりができていてよく見えないので <お祭り広場2> に移動。こちらは小田マサノリ+カスガアキラのライヴ中。

小田マサノリのパヴィリオンは古い電気製品や印刷物などがところ狭しと並べられている。ネックだけのベースを弓で弾いたり、りん(仏具)をならしたりいろいろしていたけれど、それ以外に電気製品からも音が出ているみたい。カスガアキラは2台のラップトップPCとターンテーブルなどの機材で演奏。客に向けて置かれたTVモニターにはミニマルな四角形の模様が伸び縮みしている。二人ともそんなに大きな音は出さないので <ネオ鉄鋼広場> の宇治野宗輝の音と混じってしまって何をやっているのかよくわからないのだが、むしろそういう混沌とした状況を楽しむような雰囲気。

また15分があっという間に過ぎて、今度は小田マサノリ+ヲノサトル+椹木野衣の組み合わせ。ヲノサトルのムード音楽のようなオルガン演奏はこの混沌とした状態のなかでかえって異彩を放っている。椹木野衣はなんとギターを演奏。パヴィリオンにギターとベースが置いてあったから当然弾くのだろうと思っていたけれど、美術評論家としてしか知らなかったので意外だった。しかしちょっとノイズっぽい音を出してはすぐやめてしまったり。弾いている手つきもなんか恐る恐るといった感じ。ちょっとだけ観てすぐ <ネオ鉄鋼広場> に移動した。

<ネオ鉄鋼広場> では山川冬樹+伊東篤宏のライヴがはじまっている。伊東篤宏は蛍光灯が発生するノイズを増幅して音を出すoptronという装置の考案者。蛍光灯のスイッチをバチバチいじって点滅させて激しいノイズを撒き散らす。山川冬樹は先ほどと同様に鼓動で電球を点滅させつつ、ノイズに対抗してホーメイを響かせる。暗い部屋のなかで蛍光灯と電球の点滅、あとはわずかにアンプやエフェクターのLEDだけが光っている光景は、白熱した演奏にますます拍車をかけていく効果をもたらしているようで非常におもしろい。この組み合わせはなかなか相性がいいので、また別の機会にも共演してほしいと思う。

山川冬樹と伊東篤宏の演奏が終わり、その次の15分は <お祭り広場2> での椹木野衣vs小田マサノリ対談。小田マサノリは自身のパヴィリオンの展示物の多くは以前NADiffで展示をしたときのものであることや、伊東篤宏のoptronに習って蛍光灯(オプトロソという張り紙があった)のノイズをパチパチと鳴らし続けていることなど最初に説明。バックに流れている映像は1970年の大阪万博のドキュメント。椹木野衣は、「このようなイヴェントを思い立った背景には、前衛芸術家が多く参加していた大阪万博に比べて、今年の愛知万博ではアートが果たす役割がずいぶん少なくなってしまっているということがある。」と述解し、また第二次世界大戦時に戦争画を描いていた従軍画家のことに触れ、戦争と万博との関係について小田マサノリと話をした。しかし15分は本当にあっというま。「続きはまた最後のシンポジウムのときに」ということで対談は時間ぴったりに終了。

<お祭り広場2> の次の15分は椹木野衣+カスガアキラの組み合わせ。椹木野衣は今度はベースを演奏。指慣らしみたいな感じでたいしたことはないが、さっきのギターよりはずっと慣れた調子で弾いている。きっとバンドでベースを弾いていたことがあるのだろう(もしかしてわたしが知らないだけで現役?)。カスガアキラの発している音はミニマルな電子音が主体で、あまりメロディやキーに縛られることもないから合わせやすいということもあるかもしれない。

演奏や正面のスクリーンに上映されている万博映像を観て過ごしていたら、美術家の中ザワヒデキさんに遭遇。お会いするのは3年ぶりぐらいのことでとても嬉しかった。最近、映像作品をつくるためにネパールと上海に撮影に行ったとのこと。中ザワさんが映像作品とは意外なのだけれど、ご本人も映像はやる必然性を感じないと思っていたのだそうだ。それだけに一体どんな作品を構想しているのかまるで想像がつかない。いつか作品として日の目をみるときが来るのがとても楽しみ。中ザワさんとお話ししていた間も椹木野衣とカスガアキラのライヴは続いていたが、そこに山川冬樹がメガホンを持ってホーメイで乱入。さすがに電球はつけていなかったけれど。<ネオ鉄鋼広場> からは伊東篤宏のoptronのノイズが大音響で響いてくる。

次は <ネオ鉄鋼広場> に移動して山川冬樹+宇治野宗輝のライヴを観た。宇治野宗輝の演奏はまだ間近で観ていなかったからすぐ近くに陣取る。主要な機材はターンテーブルで、その上のレコードの数箇所に3センチぐらいで輪切りにした鉛筆が立てて貼り付けられている。レコードがまわると、ターンテーブルの上に覆いかぶさるように仕掛けられたスイッチみたいなものにあたってカタカタと音をたてる。あともう一つ、エレクトリック・ギターのボディと(ジュースをつくる)ミキサーを組み合わせた機器があって、仕組みはよくわからないけれど電気仕掛けでときどきバタンバタンと音がしていた。破壊的だけどユーモラス。アンプをなぜこんなにたくさん? というほど積み上げているのも、なんだかおもしろい。その頃 <お祭り広場2> では小田マサノリのライヴ。音を出しているのが一人だけだとわかりやすくていいかも、と思って最後のほうはまたそっちに移動。観客の質問の相手をしたり、りんを鳴らしたり、マイペースにやっていた。

その次の <お祭り広場2> は小田マサノリ+カスガアキラ。しかし椹木野衣と山川冬樹も乱入して混沌とした様相に。<ネオ鉄鋼広場> の伊東篤宏+宇治野宗輝の音も混じって小田マサノリとカスガアキラの出す音が一番目立たない。観るほうもだんだん疲れていて、もうそんなに観察力が残っていない状態なので、ひたすら混沌に身をまかせる。<ネオ鉄鋼広場> の様子はときどき正面のスクリーンに映し出されていたが、その映像は白黒で天井あたりから部屋全体を撮影している監視カメラ風。暗い部屋で激しく蛍光灯が点滅している様子は映像で観るのもカッコいい。そんなこんなでまた15分が経過し、最後のシンポジウムがはじまった。

シンポジウムの時間は30分とられていて、タイムテーブルではそのときはもう演奏は終わっている段取り。しかし<ネオ鉄鋼広場> では山川冬樹+伊東篤宏+宇治野宗輝による白熱したセッションが続いている。スクリーンにその様子が投影される中、椹木野衣+ヲノサトル+小田マサノリ+カスガアキラによるシンポジウムがはじまった(本当は伊東篤宏もシンポジウムに呼びたかったみたい)。

椹木野衣が「万国博覧会は、もともと戦争などと同じで国家の威力のようなものを世界に示すような意義をもって開催されていた」ということを説明。しかし現在ではその必然性が薄れていて、愛知万博がおこなわれるといっても、なんのためにやるのかよくわからないようなところがあるし、そのなかで芸術が果たす役割は(1970年の大阪万博に比べて)非常に少ない。カスガアキラは、生まれが1970年の大阪万博の年だったからその記憶は当然ないものの、中学生のときにおこなわれたつくば博には何度も通ったのだそうだ。浅田彰、ラジカルTV、坂本龍一による「TV WAR」が記憶に焼きついているとのこと。小田マサノリは「自衛隊をイラクに派遣するぐらいならそのかわりに毎年でも万博をやってもらったほうがまし」と皮肉めいた発言。椹木野衣の「もし数億単位のお金を提示されて万博への参加を要請されたらどうする?」という問いかけに、ヲノサトルは「万博会場の中に人を住ませるとか、公共事業みたいなことをやりたい」と発言。小田マサノリは「僕の作品にはお金はほとんどかからないし、そういう中でやっていくタイプではないから断る」ときっぱり。

大阪万博のときは、「太陽の塔」をつくった岡本太郎はもちろん、武満徹や具体美術協会など、日本の前衛芸術家もたくさん関わり、美術史上重要な意義を持った作品も少なくない。しかし、今日の出演者と当時の作家を比べるのはいろいろな点でかなり無理がある。それだけに一人一人の発言はおもしろくても、今ひとつ話が深まっていかないもどかしさがあった。そもそも愛知万博であまり芸術がとりあげられていないというのは、現在の状況をそのまま反映しているといってよいだろう。椹木野衣は美術評論家として、そのような状況に対しての何かしらの働きかけをしたいと考えているように思われた。まぁ、それはアートで生計を立てている多くの人にとっての根源的な問題と言えなくもない。

30分ほど時間が押したところで無理矢理収束。最後に椹木野衣が会場からの質問を募ると、反戦運動をしているという年輩の女性が発言。その女性はおそらく普段はマイナーなアートや音楽に触れたりしていなさそうなのだが、このイヴェントに感銘を受けたようだ。時間が押していたことを気にしていた様子でもあり、それに対する椹木野衣のレスポンスはなかった。というかどう受け答えしてよいものか困っていた雰囲気。わたしはというと、やはり場の雰囲気とはかなり波長の違う発言に戸惑ってしまったというのが正直なところ。後日、「もう一つの万博 - ネーション・ステートの彼方へ」という展覧会を企画しているキュレーター、渡辺真也のblogでそのことが触れられているのを読んではっとさせられた。わたし自身、社会運動関係者とのつきあいは今までにけっこうあるものの、それがなかなかうまくいかなかった苦い経験もある。

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レニングラード・ブルース・マシーン / AFTER THE RAIN

渋谷屋根裏にレニングラード・ブルース・マシーンの「Yaje」レコ発ライヴを観にいった。今日は出演バンド(ユニット)がなんと6つもある。たどりついたときは2番目のKING & COUNTRYの演奏中。ギター/ヴォーカル、ベース、ドラムの三人組。3曲ぐらい観たけれど、最後の曲の途中のギターソロがものすごく長い。ギター/ヴォーカルの人の独壇場という感じだった。

次はヒゴヒロシ率いるIjar Connect。一度観たことがあるけれど、アグレッシヴな即興演奏をえんえんと1時間ぐらい続けているのがすごくカッコよかったので今日も期待大。しかし、今日はギターのブラボー小松がはじまってすぐにギターを交換していたり、ストラップの肩にあたるところが落ちてくるのをしょっちゅう直していてやや集中力に欠ける感じがしなくもない。たぶん20分くらいであっけなく終わってしまったのが残念。ちょっと短すぎ。それでも感情よりは肉体に訴えてくるラウドなサウンドには説得力があって、周りの客もみなステージにくいつくように集中して観ていたし、終わったあとも感嘆の声があがっていた。

次はAFTER THE RAIN。元P-MODELの秋山勝彦がギター/ヴォーカルのバンド。といってもわたしは全然知らなくて観るのも初めてなのだけれど、ドラムが藤掛さん。藤掛さんは本当にいろいろな人とバンドをやっていてすごい。このバンドは2年ぶりぐらいのライヴになるそうだ。音はP-MODELのイメージとは全然違っていて、ピュアなロックンロール。パワフルで熱気あふれる演奏だったけれど、ノイジーなサウンドのバンドが多い今日の出演者の中にあってテレキャス+JC120のクリアなギターサウンドが印象的だった。特にワウペダルを使ったときの音がきれい。藤掛さんのドラムも、パワフルで手数が多いけれど安定感があって気持ちがよい。ただベースの川守田久佳のあまりアタックを強調しない演奏とはいまいちマッチしていない感じもする。そういうタイプのベースは実はかなり好きなので、どっちがどうというわけではないのだけれど。

次がECD+イリシット・ツボイ。この人たちについてはなにも知らなかったのだけれど、ものすごくおもしろかった。DJのイシリット・ツボイはスクラッチやフェーダの操作など全く手を休めることがない。しかも手先の動きだけでなく左から右、右から左に体も慌ただしく動き、さらにはクロスフェーダーを持ちあげてみたり、機器の操作以外のムダな動きが多い。それでいて次から次へといろいろな音がリズミカルにミックスされ、出している音は寸分の隙もない。時には破壊的なまでにノイジーなサウンドを発しながらも、しっかりとノリを生み出しているところがすごかった。ECDはラップをしながらシンセサイザーで効果音的なサウンドを発していたけれど、ラップの内容や声の出しかたなど全然気取ったところがないのが良い。最後はECDがサックスを吹き、それに対してイリシット・ツボイが「そうきたか」など合いの手を入れつつ、ヘッドホンをコンタクトマイクのように使ってターンテーブルの音を拾ったりヴォイスを発したりもしてアヴァンギャルドな(?)展開に。その部分はちょっと長いと思ったけれど、でも相当変わったことをしていておもしろかった。

ECD+イリシット・ツボイが終わってドリンクをもらいに行ったら、ちょうど藤掛さんに会った。最近藤掛さんのライヴを観にいっても会わないで帰ってしまうことが多かったからお話しするのは久しぶり。藤掛さんはあしたも#9のレコ初でライヴ。アルバイトもライヴもないお休みの日が今年に入ってから2日くらいしかないのだそうだ。

最後のレニングラード・ブルース・マシーンの音が聞こえてきたのでまた場内に(屋根裏のドリンクカウンターは会場に入るドアの外にある)。レニングラード・ブルース・マシーンは田畑満(ギター/ヴォーカル)、シマジマサヒコ(ベース)、渡邊靖之(ドラム)のトリオ。田畑満はシンセギターを弾いてピアノみたいな音も出したりする。でも今日の演奏はわりとストレートで芸の細かさよりはラウドに突っ走る感じだった。レコ発だからけっこう長めに演奏するのかなと期待していたのだけれど、30分くらい? わりとあっけなく終わってしまって物足りない。でも観客の拍手に応じてアンコール。あまりアンコールをやるつもりがなかった様子でマーシャルのギターアンプのスイッチも切っていたし、最後の曲で弦を切っていたから、弦を張り替えつつトークでつなぐ。最近オープンしたレニングラード・ブルース・マシーンのウェブサイトに昔のボアダムズ時代の写真なども載っているから見てねということなど話していた。今日は新譜の曲が中心だったのか、アンコールも含め今までライヴで聴いて印象に残っていた曲(といっても一曲頭に残っているのがあっただけだが)も演奏されなかったけれど、いつもの調子の田畑満のMCも含め楽しいライヴだった。

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残光

きのうに続いて首藤幹夫スライド上映会を下北沢のLA CAMERAに観にいった。今日の上映はCプロとDプロ。

Cプログラムの一つ目の作品は『人形とヴィジオネエル』。これはずっと昔に観たことがある。人形作家、伽井丹彌さんの人形をさまざまなロケーションで撮影した写真のスライド。一番最初のカットで像が二重になってふわっと浮かび上がったので、なんだろうと思って後ろを振り向くと、首藤さんがプロジェクターの前に眼鏡をかざしていた。人間の等身大よりは幾分小ぶりな人形が何気ない感じで街中にたたずんでいたり、古い車両だった頃の世田谷線に乗っていたり、代官山の同潤会アパートでベランダのような柵に座っていたり。人形はハダカのもあれば下着姿や着物を着ているものもある。2体の人形が出てきたけれど、2体一緒に写っているカットは一つ。受付でもらったプリントには、「人形が2体写っていると関係性が生まれていい」という生前の種村季弘氏のコメントが載っていてなるほどと思った。スライドだと上映される前後関係によっても重層性が生まれておもしろい。それにしても伽井さんが作った人形は伽井さんにとてもよく似ていてドキっとしてしまう。

もう一つの『Vignette』は七海遥くんの写真を中心としたスライド。これは先月、東十条Cafe SAYAでおこなわれた「星影幻灯祭」でも観ているけれど、スライドの順番がかなり変えられていて、だいぶ違う印象になっていた。らせん状にまるまった紙をアップで撮ったカットがわりと最初のほうにかためられて、七海遥くんが写っているカットを出し惜しみしているような構成がおもしろい。

Dプログラムの上映作品は『残光』。この作品は、他の作品と比べると明確なテーマや集められた写真の共通性みたいなものを見出すことができない。首藤さんの中にはあるのかもしれないが。田舎の住宅街や田園の風景からはじまり、人のいないお寺のような建物の中で撮影された写真、そして最後のほうはどこかの山に登って撮ったらしい雄大な風景。人が映っているスライドもある。特に最後のほうで出てくる年配のカップルを写したスライドは同じアングルで表情が少し違うカットを複数回重ねているのが印象的。今日のゲストのDJ SUMIEがその場で音楽をつけていった。

各プログラムの最後はDJ SUMIEとのコラボレーション。スライドの多くはきのうの凡淡水さんとのコラボレーションでも使用されていたもの。最初のほうの雪景色のスライドは、今日は緑とオレンジのフィルターを使っていてだいぶ雰囲気が違う。途中からは花をアップで捉えたスライドが続く。きのうは使われていないカットもたくさん挿入されていた。一番最後はSUMIEさんを撮影した写真のスライドに直接マジックでDJ SUMIEと描かれたものが投影された。

きのうのゲスト凡淡水さんが観にいらしていたので、CプロとDプロのあいだにギターの話やブルースの話などをした。凡淡水さんはSUMIEさんがかけていた音楽をいろいろ尋ねてメモしていらっしゃった。SUMIEさんの機材は、クロスフェーダーにカオスパッドがついているのがおもしろい。少しだけ触らせてもらった。SUMIEさんにプロジェクターも2台で交互に投影するし、DJも二台のCDプレイヤー(普段はアナログのターンテーブルも使うのだそうだ)から交互に音を出すからちょっと似てますねという感想を言った。ふだんクラブでDJをやる場合はVJのほうが音に合わせてくれるので、今日は映像を観ながら考えて音を出していたのでとても神経を使って疲れたそうだ。でも2回目のほうが明らかにうまくいっていたと思うし、きのうとはまた全然違った雰囲気で良かった。

今日の打ち上げはたくさん人がいて賑やか。ヘンリクさんは今日は自家製のカレーとこんにゃくとアイスクリームを持っていらした。こんにゃくはなんと家で粉からつくったのだそうだ。ポン酢または牡蠣しょうゆにつけて食べるのだけれど、あっさりしているからエンドレスでどんどん食べ続けてしまう。2日間、食が充実して幸せな気分だ。それにしてもアイスクリームを作って持ってくるとは、ヘンリクさんは相当の子供好きと見受けられる。わたしはいちごを持っていったのだけれど甘くてなかなか好評。食べる合間に陽月ちゃん(首藤さんの娘さん 5歳ぐらい?)とあやとりをしたり、お母さんやヘンリクさんも交えてトランプをした。単に出せるカードを正直に出していっただけなのだけど七並べで勝ってしまい、そのあと神経衰弱をやったときはつい本気になってしまい、また勝ってしまった。うーむ、子供の相手って難しい。というか自分が精神的に子供なだけかも。帰りは山崎さん、岩崎さんと下北沢の駅まで一緒に帰った。

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沈む教室

下北沢のLA CAMERAに首藤幹夫スライド上映会を観に行った。首藤さんのスライド上映は2台のプロジェクターから投影される像を交互にオーバーラップさせながら映写する。プロジェクターを手で覆うなどして、遷り変わるスライドの最後まで像が残る部分をコントロールしたりもする。一枚一枚のスライドが投影される秒数などは特にプログラミングされているわけではなく、そのときどきの勘で手動で1コマずつ進めていくのだそうだ。また、同じ作品でも上映するときによってスライドの順番を変えたりするらしい。今日の上映はAプロ、Bプロの2プログラム。

Aプログラムの最初の作品は『「扉<記憶を捏造する試み>…切りとられた風景をめぐる移動者の視線…」より「沈む教室」』。とても長いタイトルだが、含めたい言葉を全部入れたらこういうタイトルになったとのこと。オリジナルでは3話構成になっていたが、今回はそのうちの3話目の「沈む教室」のみ上映。写真はすべて函館の古い小学校、中学校3校で撮影されている。3校とも現在はもう存在していないのだそうだ。きっちりとした構図の写真は、それぞれ一枚一枚でも十分に美しいのだけれども、ピアノ演奏と朗読にあわせて上映されることによりストーリーが浮かび上がってくる。さりげなく人(舞踏家の池田ユリヤ)が写っているカットもあるがほとんどのスライドは無人。朗読の内容も相まって人がいない夏休みの校舎を想起させる。高解像度のスライドからはその場の気配までもが生々しく伝わってくるような気がして観ていたが、実際に撮影していたときは校内に生徒がたくさんいる状態だったらしい。

次に上映されたのが『陽だまりの光景』。最初のほうは何の変哲もない住宅街で撮られた風景が中心だが、木漏れ日や影によって生み出されるコントラストが美しい。最後のほうは雲一つない青空をバックにした梅の花のカットが続く。とても天気の良い澄んだ明るい空だけれど、被写界深度が浅くてピントが合っている花とボケた花が画面上に混在している。

Bプログラムの作品は『光素(エーテル)~おもかげの発掘について~』。上映される膨大な量のスライドはすべて首藤さんが知人の家にある古いアルバムの写真を複写したもの。どこの家のアルバムにあっても不思議ではないような子供の写真。とはいっても服装や背景からかなり古い懐かしい感じが伝わってくる。たまに集合写真のようなものもある。大部分は古い白黒写真だが上映の中盤ではカラーの写真が出てくる。全編にわたってピアノのサウンドが流されているが、上映が半ばに差し掛かった頃になって覚和歌子さんによる詩の朗読がはじまる(音楽も朗読もすでに録音されているものを使用)。全体的に淡々としているけれど、そのときどきでサウンドの変化とスライドがちゃんとシンクロしているように感じられて、40分くらいの上映時間も全然長くは感じなかった。

各プログラムの最後には日替わりゲストとのコラボレーションでのスライド上映。今日のゲストは画家の凡淡水さんによる自作楽器の生演奏。凡淡水さんの楽器はぱっと観たところバンジョーなのだけれど、非常に思いがけない音が出るのでびっくり。まるで三味線のようだった。弦は3本でたぶんラ、ミ、ラのようなチューニングでサンピックを使用。ブリッジよりも駒寄りのところで弦をはじいたり、ボトルネック奏法をやったり、ペグを緩ませてまた元に戻したり、ハーモニクスの音を響かせたり、いろいろな奏法で弾いていた。終わりのほうでは渋い唄声もちらっと披露。上映されているスライドも目に入ってはいたけれど、つい凡淡水さんのほうばかりを観てしまう。スライドの最後のほうには凡淡水さんが描いた絵や凡淡水さんの演奏姿を撮影したカットも含まれていた。あとで尋ねてみたところ、楽器はやはりバンジョーを改造してつくったらしい。ブルースがお好きで以前はギターを弾いていたのだそうだ。なるほどそれを聞いて多彩な奏法にも納得したけど、出す音のユニークさには本当に驚かされた。

上映後は、食べ物やお酒が出てきて打ち上げ。理香さん(首藤さんの奥さん)お手製の竹の子ごはん、湯葉巻き、煮物、そしてヘンリクさんもドライカレーと煮物を作って持っていらしていた。入場料1,000円で来ているのに、こんなにたくさんのごちそうに囲まれて申しわけない気分になる。特に湯葉巻きはお稲荷さんみたいに大きい固まりがまるごと湯葉という贅沢。湯葉なんてちまちまっとしか食べたことないし、そういう食材なのかと思っていたものだからびっくり。どれもこれもとてもおいしくて感激する。ものすごく高級だというチョコレートもあって、オレンジが入っているのとレモンが入っているのを1個ずつ食べてみた。

今日の打ち上げは、首藤さん親子以外で元からの知人はヘンリクさんと大宅さんと倉澤さんだけだったのだけれど、合計10人くらいで、あちこちに分かれることもなくいろいろな人の話を聞くことができて良かった。隣に座っていたのが最初の「沈む教室」で朗読をしている三原さん。10年以上前にカセットテープに収録し、それが今でも残っているとは思っていなくて、録音された自身の声をずいぶん久しぶりに聞いたのだそうだ。収録の時は地元(山口県)の訛りが出てしまって数箇所やり直したことなど裏話も聞くことができた。ギャラリーの壁には凡淡水さんの絵画作品が展示されていたが、それ以外にも小さい作品も持参していらしたので観せていただく。透き通ったりにじんだりしている水彩の抽象絵画なのだが、画材には絵の具以外にもいろいろ混ぜているのだそうだ。

10時半ごろ、そろそろ帰ろうと思ったところで山田さんと島本さんが登場。そういえば今日はペーソスのライヴだったはず。入れ違いになって残念だけれど、あしたは上映を観る予定だそうなので、じゃぁまたあしたということで会場を後にした。下北沢の駅までご一緒した女性は、お名前を忘れてしまったのだが首藤さんの高校時代の同級生だそうだ。大学時代は東京で過ごしたけれど今は地元の大分に住んでいて、月一回、お菓子作りを習いに東京に来ているのだという。首藤さんと会うのも十数年ぶりとのこと。今日のプログラムは子供時代の思い出とか懐かしい雰囲気と関係が深い上映だったから、首藤さんの高校生時代を知るかたとお話しできたのはとても感慨深かった。

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カバレット・キネマ

鶯谷の東京キネマ倶楽部でおこなわれたカバレット・キネマを観にいった。公式サイトによると、カバレットとはドイツ語で「芸術キャバレー」の意。カバレット・キネマは、一言でいってしまえば、いろいろなジャンルのパフォーマーやミュージシャンのコラボレーション・イヴェント。同じ主催者による同様の趣向のイヴェントが過去3回、川崎のクラブチッタで「カバレット・チッタ」としておこなわれている(小規模なものは他でもおこなわれている)。今回の会場、東京キネマ倶楽部はかつて本物のキャバレーとして使われていた場所。数年前から弁士つきの無声映画の上映会やコンサートなどに利用されていて会場名は耳にしていたが、行くのははじめてである。大正ロマンをモチーフとした内装は昭和40年代以来そのままの形で保存されているというので非常に楽しみだ。

鶯谷駅の南口を出ると、すぐ東京キネマ倶楽部の建物が見えた。外から見るとなんの変哲もない古びたビルディング。エレベータで会場に上がると、いかにも元キャバレーらしいじゅうたん張りのロビー。受付は着物姿の女性。混んでいるときにあたってしまったせいもあるけれどちょっと手際が悪い。しかも受付の横でまた別にドリンク代を払うというシステム。受付を済ませて場内にずんずん入っていくと、大きく弧を描いたテラスの縁と鉄の手すりが素敵な指定席のところに入って来てしまった。手前に戻って螺旋を描く階段でパイプ椅子が並ぶ階下の自由席に降りる。前のほうの席はだいぶ埋まっていたけれど、やや上手よりの3列目に席を見つけることができた。

正面のステージに幕などはかかっていなくて、すでに演奏のセッティングがされたステージが見えている。クラブチッタのステージよりも奥行きが狭いのでミュージシャンの位置が近い。ステージの下手側には弧を描く階段があって高い位置にも小さなステージ。古くてボロい部分もあるけれど、これは今どきの新しい建物ではちょっとあり得ない! 感じのスペースに感激。ボロささえも場末っぽくていい雰囲気を醸し出している。今回のコンセプトは昭和30年代ということらしい。昭和30年代というほど古くはないけれどかなり懐かしい歌謡曲や演歌が場内に流れている。

着物姿のスタッフによる開演の案内からまもなく、VJコミックカットによる3分間クッキングの映像をアレンジしたヴィデオがスクリーンに映し出されてカバレット・キネマがはじまった。その後も古いTV番組などを素材にしたVJコミックカットの映像はイヴェント中随所で差し挟まれ、笑いをとりつつ場をつないでいく。以下、出演順など多少まちがっているところもあるかもしれないのでご了承を。

最初は上の小さいステージでキャバレーの従業員に扮した三雲いおり、ダメじゃん小出、ふくろこうじ他による寸劇。それから大熊ワタルバンドが演奏しながら客席後方より登場。中尾勘二(ドラム)、服部夏樹(ギター)以外はシカラムータの現メンバーである。大熊ワタルバンドの演奏に合わせてサロク・ザ・ロービングシアターのパフォーマンス。

ダメじゃん小出の時事ネタコントが場をつないで、寒空はだか登場。よくライヴハウスのスケジュールなどで見かけるからずっとミュージシャンかと思っていたのだけれど、受付でもらったパンフレットによると漫談とのこと。大熊ワタルバンドの演奏に合わせて軽快にネタを披露し、最後は一曲「タワー、タワー、京都タワーに登ったわー」というような歌詞の曲を唄っていたのがやけに耳に残っている。

山本光洋&神山一郎のパントマイムを挟んで、前半のハイライトは大熊ワタルバンドの演奏をバックにした森田智博のジャグリング。ボーリングのピンのようなクラブを足でさっと拾い上げたり、ボールを高く投げ上げた隙にくるっと2回転する身のこなしがすばらしい。最後の7つのボールでのジャグリングは、最初2回落としてしまったけれど3回目でばっちりきまった。

休憩中はサロク・ザ・ロービングシアターが客席内のあちこちでパフォーマンス。鐘をチリンチリンと鳴らしてウェイター姿の女性3人が同じ動作でくるっとまわったりしている。チラシによると、「欧米で大人気のロービングカンパニーがついに日本にも誕生」とのことなのだけれど、ロービングというのが何なのか良くわからない。客席も巻き込みつついろいろなことをやるというのがポイントなのだろうか?

休憩をはさんだあとは来日中のイギリスのバンド、ファームヤード・アニマルズ・トリオが登場。サックス、チューバ、パーカッションの3人組。演奏をしながら客席を練り歩き、ステージにあがったところで三雲いおりが登場。日本語英語入り混じったブロークンなやりとりでウケをとる。キャバレーの座付きバンドとしてオーディションを受けに来たという設定らしい。それからファームヤード・アニマルズ・トリオ+大熊ワタル+こぐれみわぞうによる演奏。トルコあたりの曲らしい。

再び山本光洋&神山一郎が登場してパントマイム。火のついたタバコを次々と取り出すマジックに驚かされる。その次はヨロ昆布が登場。ヨロ市(カラオケ)・タプ江ちゃん(踊り子)によるパンク歌謡ユニット。ヨロ市は着流し姿、タプ江ちゃんは衣装も踊りもベリーダンス風だけれどカラオケから流れる曲はやたらキャッチーでしかもチープな打ち込み調。浪曲っぽい唄いまわしでヘンな歌詞を唄うヨロ市とすごく可愛くてセクシーなタプ江ちゃんのコンビネーションがおもしろい。

それからまた山本光洋&神山一郎のパントマイムを挟んで今日のトリ、藤山新太郎の江戸奇術「蝶のたわむれ」。紙でつくった蝶を手で触れることなく扇子であおいで自由自在に飛ばしたりピタっと止めたり。また、くものすをさっと客席に投げかけてそれを手繰り寄せたかと思うと紙ふぶきに変えてしまう。普段見慣れないものでもあり、とても優雅で素敵なパフォーマンスだった。通常はお囃子などに合わせて演じるらしいのだけれど、ここでは大熊ワタルバンドの演奏がバック。最初は様子を伺うようにそろーっと各自即興で音を発していたのが次第に盛り上がって楽曲に移行していく様子がスリリングだった。

フィナーレは大熊ワタルバンド、ファームヤード・アニマルズ・トリオの合同演奏をバックに、三雲いおりのMCとVJコミックカットの映像に合わせて出演者全員が登場。藤山新太郎もニコニコ笑いながら音楽に合わせて振りをつけている。伝統文化の権化のような人なのかと思っていたのだけれど、とても60歳には見えなくて若々しくて親しみやすい雰囲気をたたえている。今までカバレット・チッタVol.2、Vol.3と観てきたけど、また良いもの観させてもらったなぁという気持ちで胸がいっぱいになる。普段シカラムータのライヴに行くのとたいして変わらない値段でこれだけのものが観られるのだからすばらしい。

カバレット・チッタVol.2、Vol.3では、今回より出演者も多くて、猥雑さすら感じる何でもありパワーがあったけれど(特にVol.2)、今回は出演者数を絞って構成もすっきりしたように思う。興行としての収支も考慮するならば規模が縮小されるのも致し方ないことで、今後も続いていくならばなおさら方向性としてそれが正しいだろう。ただ、今回の大熊ワタルバンドは他のパフォーマーとの共演のときはバックバンドに徹してしまっていたのが残念。Vol.2のときのこまっちゃクレズマーの梅津和時の演奏と風間るり子のダンス、Vol.3のシカラムータの演奏と水中三姉妹のからみみたいなのも観たかったなと思う。

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インテグレイテッド・スリィ / みみのこと

みみのこと、インテグレイテッド・スリィのライヴを観に渋谷の青い部屋に行った。たどりついたときは2番目のDARKSIDE MIRRORSの演奏中。ギター/ヴォーカルx2、ベース、ドラムの4人組のグラマラスなロックバンド。以前一度観たことがある。3曲ぐらい聴くことができたが、最後は客席のところに出てきたギターの人が盛り上がったお客さんと一緒になってむちゃくちゃ音を鳴らしていた。白熱した演奏に圧倒された。

次がみみのこと。つい先日、新ベーシストを迎えての初ライヴを西早稲田のジェリージェフで観たばかり。今日はジェリージェフよりはスペースに余裕があるので、川口さんがけっこう動きまわりながら弾いていた。川口さんのギターアンプの真正面に座ってしまったので、ギターの音ばかりが大きく聴こえてしまったけれど、ベースの竹内さんも指弾きなのに激しいストロークで弦をかき鳴らしたりしていて、必死でバンドのテンションについていっている。3曲ぐらいであっというまに終わってしまったが、1曲が長いから30分ぐらい? 出演バンド数も多いことだし仕方がない。いつものことながら、みみのことはすごくカッコいい。

その次は泉俊行のポエトリーリーディング。ロックミュージシャンのような振る舞いの勢いのあるパフォーマンス。浴びせるように次から次へと言葉を投げかけてくるなかで、「○○○に一緒に行きませんか。」とマイクを突然向けられてしまった。「ぜひ」と答えてみたら、その後どうにかなることもなく、詩の語りが続いていったのでほっとする。バックでは萩原テツオによるライヴペインティング。また、通称エジソンことインテグレイテッド・スリィのドラムの人が詩にあわせて控えめな音でドラムを叩いている。今日のイヴェントはエジソンさんが企画したものらしい。

次がインテグレイテッド・スリィ。ギター/ヴォーカル、ベース、ドラムの3人組ビートロックバンド。いつもどおりギター、ドラムはスーツ、ベースの切通さんは白い革ジャンでばっちり決めている。ギター、ベースのフロント2人が思い切り立ちはだかるように前に出てきてどうどうと弾くのもいつもどおり。2人がぶつかりそうになるのはもちろんのこと、ギターアンプの上に登って倒したり相当激しいパフォーマンス。しかし、今日は切通さんがたびたび落としたピックを拾ったり、ガムテープでぎちぎちにベースにとりつけたストラップが抜けてしまったり、最後のほうではベースの弦を切ってしまったりしてトラブル続き。いまいち演奏に集中できない感じだった。演奏終了後、切通さんに「今日は大変だったね」と声をかける。バックで続いていたライヴペインティングはわたしのところからは良く見えなかったけれど、出来上がった絵はなかなか素敵だった。

そのあと、エジソンさんがつくったヴィデオ映像がプロジェクターで投影された。2つの鍵がどうのこうのという内容で後半はずっと鳩がいっぱい出てくる。スクリーン用に吊ってある布が思い切り折り目がついていて非常に見にくかったのだけれど、ところどころバックの音楽がカッコ良かった。

そして最後はなぜかDARKSIDE HORRORS(DARKSIDE MIRRORSの変名バンド)の演奏にあわせて椅子取りゲーム。そういえばDARKSIDE MIRRORSの演奏中、ギターの人が「最後は椅子取りゲームだよ」と言っていた。エジソンさんが「全員参加」と言うのだけれど、はずかしいので後ろのほうに引っ込んでいたら参加しないですんだ。でも大部分の客が参加して椅子の周りを廻っている。

DARKSIDE HORRORSのメンバーは鹿かなにかの被り物をして現れ、演奏するときはさすがに被り物はとっていたけれど、ヴォーカルの人はマントを羽織っていた。ちょっとHORRORな悪魔的イメージ。淡々と演奏しているが、荒っぽいダークな雰囲気がなかなかカッコいい。音楽に合わせて十数人の人が輪になってノリノリで客席内を歩き廻っている様子はほとんど宗教のよう。ギターの人が、「これって椅子取りゲームという名を借りたサバトみたいなもんですよね」と話していたが、まさに的を射た表現。

最初は椅子10個、それが5個、4個と減らされるにつれて、参加している人のテンションがますますあがる。途中で戸川昌子さんがひっそり登場。手を叩いて喜んで観ていらっしゃったがまたすぐにどこかに去っていかれた。最後に残ったのはイギリス人の女性。エジソンさんが「ホワット・イズ・ザ・トゥー・キーズ・???」とかなんとかめちゃくちゃな英語で話しかけるが、その女性いわく(日本語で)「意味不明」。本当に、まったく意味不明な最後だったけれど、ヴィデオ映像でも二つの鍵というのが重要なモチーフになっていたようだし、何かあるのだろう。一応最後まで見届けて、川口さんとちょっと話してから帰った。みみのことは4月はイギリス・ツアーに出かけるらしい。すばらしい。

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THE DELGADOS

THE DELGADOSのライヴを観に渋谷のクラブクアトロに行った。THE DELGADOSはスコットランドのギターポップバンド。インディ・レーベルChemical Undergroundの主催者でもあり、だいぶ前から日本でも良く知られている存在だと思うのだけれど、なんと今回が初来日である。実はここ最近のアルバムを聞いていないのだけれど、数年前はライヴを観てみたいと心から願っていたバンド。ところがスコットランドの音楽に詳しい友人からは「ライヴしょぼいらしいよ」と聞かされたりもして、最初は行こうかどうかちょっと迷っていた。結局、公演2週間前に前売りチケットを購入。友人のしょうさんも行くらしきことが判明。

当日はぎりぎりまで仕事をして、開演の7時にちょっと遅れてしまったが、まだライヴははじまっていなかった。会場内でしょうさんを見つけたところで客電が落ち、前座の演奏がはじまった。女性のギター/ヴォーカルと男性のキーボーディストの2人組。唄を聴いているとどうやらフランス語らしい。ちょっと鼻にかかったような唄いかたや言葉の響きがアンニュイな感じ。ギターはセミアコースティックギターとフルアコースティックギターの2本を使い分けていたけれど、ほとんど弾かない曲もあった。キーボードもかなり音数少ない。曲によっては打ち込みのリズムを出していたけれどけっこうチープ。正直なところ演奏はかなり適当な感じだったが、素直に和んで聞くことができる良い曲揃いで気持ち良かった。観ていたときは何も知らなかったのだけれど、あとで調べてみたところ、AUTOUR DE LUCIEというバンドの人たちで、本来は2人だけではなくバンド編成でやっているようだ。

セッティングの入れ換えのときに伊藤さんのところまで行ってお話し。一段上がった見やすい位置だったけれど、ちょっとステージまで遠いし、無理やり人の隙間に割って入ってしまっていて申しわけなかったので、THE DELGADOSの演奏がはじまる直前に前のほうに移動した。ステージにはアラン・ウッドワード(vo,g)、エマ・ポロック(vo,g)、スチュワート・ヘンダーソン(b,vo)、ポール・サヴェージ(dr)の4人の他、両サイドにキーボードの人がいる。演奏は思っていたよりはるかに良かった。決して上手いわけではないが、いい感じに荒削りな演奏で勢いがあるし、エマとアランのヴォーカルも楽器の音に埋もれることなくしっかり出ていて曲の良さが伝わってくる。曲によっては左側のキーボードの人がチェロ、右側のキーボードの人がヴァイオリン(ヴィオラ?)を弾いていた。最初いた位置は右側のキーボードの人が全く見えない位置だったので若干移動。右側のキーボードの人は鍵盤ハーモニカらしきものも演奏していた。

MCではきのうの大阪公演のあとにカラオケを3時間してたくさん酒を飲んだとか他愛のない話をし、またステージ上で「やるか」というラベルがついている日本酒らしき一升瓶を回し飲みする場面も。ライヴが進むにつれてみんな酔っ払っていたのか、途中で演奏が止まって(歌詞を間違えたのか?)途中からやり直した曲があった。唄っていたエマがノーノーノーと言い出して、ベースのスチュワートが彼女酔っ払いだと突っ込みをいれる様子がおもしろい。曲も良いし楽しい雰囲気で、やっと実現した初来日公演を観たことに大いに満足した。最後アンコールで2曲演奏したあとは、きらびやかな色とりどりの照明のなかをメンバーが去っていき、ものすごくゆっくりとステージが暗転していってドラマチックだった。

終演後、4Fのロビーに降りると物販のところにメンバーが。持っていない最新アルバムを買ってエマとスチュワートにサインをしてもらう。ステージで見たとおりの気さくな人たちだ。ちょっと離れたところにいたアランにもサインをもらった。しょうさんとわたしがサインしてもらったときはそんなに人がいなくてスムーズだったのだけれど、それからどんどん人が集まってきて人ごみから抜け出すのに一苦労。

そのあとしょうさんと飲み屋へ。会うのがLunaのライヴ以来だったので積もる話で盛り上がる。3月のThe Red Krayolaのライヴにも行くそうなのだけれど、チケットを買っているのがわたしと違う日だったので残念。

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我々

高円寺の無力無善寺に我々のライヴを観にいった。無力無善寺は高円寺から阿佐ヶ谷方面に向かうJRの線路ガード下にあるライヴバー。壁にはミッフィーやらキティのポスターや布がかけられていたり、天井からは赤ちゃん用のベッドの上に吊るすような遊具がぶらさがっていたりするかなりヘンなスペースなのだが、もう何回となく行っているから慣れてしまった。

たどり着いたときに演奏していたのは一番目のさむつらす。ギター/ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムの4人組。曲調や歌詞は非常に純なフォークロックなのだが、各メンバーはそれぞれ自分のスタイルで好きなように演奏している感じがする。特にヴォーカルではないほうのギターの人は、座り込んで地べたにおいたエフェクターをこまめに操作しながらあやしい音を出していておもしろい。各メンバーの個性が見えつつも、あくまでも唄が中心になって前面に出ているのが良かった。

次はパグタスという女性のアコースティック・ギター弾き語り。唄は心地よく、ギターは慎重に音数の少ない和音を爪弾くような感じ。ソファの客席では思いきり眠っている人がいたけれど、MCで「眠ってしまってかまわない」と話していた。特に奇をてらうこともなく、それでいて他の人にはないちょっと変わった雰囲気を持った唄だった。普段はいろいろな編成でやっていて、一人でライヴをやることはあまりないらしい。また違った編成でライヴを観てみたいと思った。

そして次が我々。今日はドラムの須山さんがお休みで、俺はこんなもんじゃない、ハズレッシブの狩生さんが代わりに叩いていた。ギターの川田さんは、インフルエンザにかかってしまったと聞いていたのでとても心配していたのだけれど、ライヴで気がはっているのか意外と元気そう。どちらかというといつもおとなしそうに見えるのに、今日はソロもばっちりですごく目立って見えた。特に3曲目にやっていた演歌調(?)の曲がいい感じ。ややゆっくりめの曲のほうがアレンジの自由度も高くていろいろ弾くことができるのかもしれないなと思う。今回はヴォーカルのコマツさんのMCが少なめだった気がする。ベースのアオウさんは、コーラスのマイクがハウるので少し後ろに引っ込んだ位置で演奏していたけれど、間奏で前のほうに出てきて弾く場面もあった。クールにたんたんと弾いているけれど、細い体でストラップを思いきり長くして動きのあるフレーズを弾きまくる姿はインパクトがある。

最後はパーセンテージホセ。ヴァイオリン、コントラバス、シンセサイザーの3人編成。MCではヴァイオリンの人はもともとパーセンテージハウスというバンドをやっていて、ライヴのお誘いを受けたけれど他のメンバーがみな出られないとのことで、急遽集めたメンバーだと話していた。ヴァイオリンとコントラバスはかなり静かに室内樂調のメロディーを奏でている。シンセサイザーの人は16歳だそうだ。KORGの3オクターブぐらいの鍵盤をひざに乗せて、あやしい効果音ぽいサウンドを発していた。最後2曲はハーというバンドの人がギター/ヴォーカルで参加。マイケル・ジャクソンのRock With Youをカヴァーしていた。最初3人で演奏していたときのほうが、微妙なバランスの上に壊れそうになりながら成り立っていておもしろい感じがした。

川田さんは演奏中以外はずっとマスクをしていたけれど、他のメンバーにインフルエンザということは隠していたらしい。それなのに演奏後、思い切り他の人にも聞こえるところで「インフルエンザ大丈夫?」と言ってしまってとても申しわけなかった。「うつっちゃうよ」と言われつつ、案外元気そうなのでライヴとは関係ない話もちょっとしてから帰った。予報では雪になるかもしれない日だったけれど、自転車で来ていたので、雨も雪も降ることなくて良かった。

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砂城のビショップ

Jules † ジュール Vol.3『砂城のビショップ』を観に新宿のタイニイ・アリスに行った。『砂城のビショップ』はおととしの12月に下北沢のギャラリー、LA CAMERAでも上演されている。楽屋や舞台照明などの劇場設備がない上に、7-8人もの役者が出演する舞台としてはかなり狭いスペースだったが、演出など工夫されていて良い公演だった。今回は劇場スペースでの上演ということで、ダイナミックなストーリーの良さが生きる内容になるのではないかと期待して観にいった。

タイニイ・アリスに行くのはかなり久しぶりだったが、特に地図もチラシも持たずに記憶している場所に行ったら見つからない。以前タイニイ・アリスだった場所は別の劇場になっているようだ。その劇場の外にたむろしている人に尋ねてみると、タイニイ・アリスは新宿2丁目に移転したのだと言う。慌てて2丁目界隈に向かい、コンビニで場所を尋ねたらその隣の建物の地下がタイニイ・アリスだった。ものすごくあせったのだけれど、開演時刻には十分間に合ったようだ。受付を済ませたとき、すぐ後ろにいたのが先日LA CAMERAでお会いし、このblogにトラックバックもしていただいた窪田さんだったので軽く挨拶。場内は入り口に近い下手側のほうから人が埋まっていたので、上手側の前のほうの席に腰を下ろして開演を待った。

『砂城のビショップ』は、自分たちで設計し、組み立てた飛行機を飛ばすことを夢見る少年たちを描いた芝居である。登場人物である少年や亡霊のソロモンを演じる役者たちは全員女性。作・演出は劇団三日月少年の座付き作家でもある櫻木バビ。外の世界では戦争がおこなわれ、飛行機を作る技術があることを国家に知られると軍事的に利用されてしまうという状況の中、少年たちはひっそりと島にこもり、純粋に空を飛ぶことだけを目的に飛行機を造り、クリスマスの日のテスト飛行を計画する。主人公のサキヤ(伊藤香穂里)は、同じく飛行機乗りだった父親がテスト飛行で墜落死を遂げたことや、その後の母親との関係がトラウマになっている。ストーリーはサキヤと異母兄弟のアロー(古瀬木日華)、仲間の飛行少年たちの共同生活の日々を描いて進行していく。

脚本は前回のLA CAMERA公演のときとそんなには違っていないようだ。二つの砂時計が上下に組み合わされて砂が上昇するように見える「錯覚の砂時計」、磨り潰して飲むと翼が生えるかもしれない「羽の骨」など、小道具をうまく使った象徴的な要素を全面に押し出しつつも、ワクワクさせられるようなエンターテイメント性のあるストーリー展開は見事としか言いようがない。前回との一番大きな違いは亡霊のソロモン役を梅原真美さんが演じていること。LA CAMERA公演でのソロモンは確かセリフはなく、仕草による演技がすべてだったと思う。そのほうが亡霊らしい感じはしたけれども、今回の梅原さんが演じるソロモンは唄を唄ったり、詩の朗読のような語りの場面もある。むしろ道化のイメージに近くなったかもしれない。

結末は実にあっけなく、しかもさっぱりしている。そのさっぱりさ加減はちょっとひっかからなくもないのだが、あえてそのようにしているのだろうと思う。最後の船に乗って島を去る少年たち、島に残るサキヤとアロー。舞台セットのアーチの向こうからサキヤに語りかけるアロー。このあたりの展開は非常に急激だ。以前観たときは、観客としてストーリーが飲み込めない、というよりは飲み込みたくないちょっとした混乱状況に置かれたなかで最終シーンに突入し、最後はただひたすら伊藤香穂里さんの熱演に圧倒されて芝居の幕が閉じたような気がする。今回はストーリーがわかっているし、舞台までの距離もあるからだいぶ冷静だ。しかし、それでもつい涙が出てしまった。

毎度のことだがアンケートを書くのにはけっこう手間取る。一度観ている芝居だから、けっこう厳しいことも書いてしまった。というのは、せっかくの劇場での公演なのに舞台セットが貧相に感じられてしまったのだ。とはいえ全体的に役者さんたちの成長も感じられたし、完成度の高いストーリーは2度目でも十分に楽しめるものだった。アンケートを係りの人に渡して外に出たときには、顔見知りの役者さんも見当たらなかった。さっきまではすぐ見えるところに梅原さんがいたのだけれど。窪田さんとも開演前にお会いしたときにお話しをしておけばよかったと思う。窪田さんは「アンケートを書くのが苦手」なのだそうだけれど、わたしも同じ。書かないときは全然書かないし、書き始めると時間がかかりすぎて取り残されてしまう。

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美式天然

自由学園明日館講堂に映画『美式天然』(16ミリ 90分)を観にいった。監督は本作が長編第一作となる坪川拓史。くものすカルテットのアコーディオニストでもある。坪川拓史の映画は観たことなかったのだが、この『美式天然』については製作途中であった数年前から噂を耳にしていた。5年の歳月をかけて去年の1月にやっと完成したらしい。こないだくものすカルテットのライヴに一緒に行った中島さんは、昨年国立の喫茶店でおこなわれた試写会で観たそうなのだが、今のところ劇場公開の目処はたっていないようである。

今回は2日間で6回、昨年2月に亡くなったこの作品の主要登場人物である高木均の追悼企画として上映された。会場の自由学園明日館講堂にははじめて行ったのだが、高木均が最後に朗読会をおこなった場所だそうである。入り口には「重要文化財」の看板。窓枠の斜めのラインが印象的なすばらしい建物だ。開演数分前に入場したときには6割ほどの席が埋まっていた。空いていた最後列の真ん中に座る。

まもなく坪川拓史監督の挨拶の後、上映がはじまった。映画は昭和初期の無声映画の上映会のシーンからはじまる。ロケに使用された長万部劇場は、坪川監督の生まれ故郷である北海道南部の海辺の町、長万部町に実在した映画館。昭和初期に開設され、1971年に閉館したのだそうだ。現在は取り壊されてもうないらしい。

物語は昭和初期のシーンと現代のシーンが交錯しながら進行する。昭和初期のシーンがカラーで現代のシーンがモノクロなのが変わっている。しかも昭和初期のシーンで上映されている無声映画はモノクロ。ちょっとややこしい。しかも現代のシーンも古い蓄音機やアンティークな内装のカフェ、登場人物のたたずまいも含め懐かしい雰囲気が満載だ。昭和初期のシーンで映画のフィルムを自転車で運んでいる少年が、現代のシーンで高木均が演じているおじいさんの子供時代であることを理解していないと、ストーリーがわかりにくいかもしれない。そのへんは『美式天然』のウェブサイトを観てあらかじめわかっていたのだが、それでもカラーの場面が昭和初期のシーンということは半分以上観たところでやっと気がついたのだった。長い時間をかけて撮影されたせいもあるだろうが、雰囲気のよい素敵なシーンの集積となってしまっていて、全体的なストーリーそのものに自然に感情移入できるような流れがちょっと乏しいと感じたことは否めない。しかし、どのシーンも本当に丁寧に撮られていて美しかった。特に吉田日出子が演じるお母さんが、おじいさんと自転車で二人乗りしているシーンや、おもちゃのプロペラ飛行機を飛ばしているシーンはとても良かった。

さまざまなシーンで使われている音楽もこの映画の大きな魅力だ。音楽担当は関島岳郎。くものすカルテットのメンバーも昭和初期のシーンで楽士として登場している。現代のシーンに何度となく登場する蓄音機から流れる音楽、吉田日出子のアカペラで口ずさむ唄もとても良い。主題曲であり、タイトルの由来でもある「美しき天然」は明治時代、軍楽隊の為に田中穂積によって作曲された戦前の流行り唄だそうである。

上映後はまた坪川拓史監督、そして吉田均のお弟子さんによる挨拶。それから、高木均をフィーチャーした映画のメイキング・ヴィデオ(25分程度)が上映された。野外・屋内のロケのシーンからアフレコのシーンまで盛りだくさん。いつか映画館のスクリーンで観ることができるのを心から望みつつも、今回の上映は会場も含め特別な感じがして、本当に来て良かったと思った。

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SABOT

チェコ共和国のインストゥルメンタル・パンク・ジャズバンド、SABOTのライヴを観に新宿のLIVE FREAKに行った。メンバーはクリストファー・ランキン(ベース)とヒラリー・ビンダー(ドラム)の男女二人。USAのサンフランシスコで1988年に結成され、ヨーロッパやソ連などでも精力的にライヴ活動をおこない、1993年からチェコ共和国に拠点を移したようである。実はSABOTについては来日公演のチラシなどで紹介されていたこと以外何も知らなかったのだが、チェコの音楽にはとても興味がある。チェコならではの土着性を持った音楽ではなさそうだが、東欧のアヴァンギャルド・シーンを垣間見ることができそうでおもしろそうだ。

LIVE FREAKに来たのははじめて。PIT-INNと同じところにある。たどり着いたときは一番目のMANDOGの演奏中。MANDOGのメンバーは3人ともダモ鈴木の来日公演でも観ているし、ドラムの渡邊靖之はレニングラード・ブルース・マシンやマーブルシープでもおなじみ。しかし、MANDOGとしてのライヴは今日はじめて観た。ワンコードのインプロヴィゼーションがえんえんと続く。高速リズムでドライヴ感あふれる演奏だった。正直なところ、宮下敬一のギターはダモ鈴木と一緒にやっているのを観たときよりもずっと良かった。渡邊靖之の無表情でひたすら突き進んでいくようなドラムがカッコいい。

次がピアノ、ギター、ドラムの三人組、る*しろう。昨年吉田達也のプロデュースでアルバムをリリースしているプログレ色の強いバンドである。ピアノの金澤美也子は高円寺百景にも参加している。一度聞いたら忘れないバンド名だが、ライヴを観るのはやはり今日がはじめてだ。いきなり3人のイカれたような強烈なヴォイス・パフォーマンスから始まってびっくり。演奏もかなりぶっ壊れたフレーズを弾きまくり、叩きまくる。3人とも楽器演奏に関して相当なテクニシャンだ。金澤美也子はピアノを弾きながらのヴォイスはちょっと声量が物足りないが、それでも相当キレまくっていておもしろい。曲間でもいきなり立ち上がって客に背を向けて変な振り付けで踊るような仕草をするなどの挙動不審ぶりを発揮。ギターの井筒好治、ドラムの菅沼道昭は笛なども演奏。後半は奇声を発するようなパフォーマンスは少なめで落ち着いた演奏だったが、それでも曲がかなり変でおもしろい。評判どおりのインパクトのあるライヴだった。

そして最後がSABOT。ライヴがはじまって、まず(前のる*しろうと比べて)音のデカさにびっくりする。とても二人だけとは思えない厚みのある音で、まさにパンク&アヴァンギャルド・ジャズといった感じのサウンド。クリストファー・ランキンのベースは透明のアクリルボディ。ミディアム・スケール(ショート・スケールかも)で小ぶりなボディは構えた感じがエレキギターとあまり変わらない。しかも左手親指位置はほとんどネックの上側でコード弾きが中心。単音を弾くときの運指もかなりギターっぽい。ベーシストとしては非常にユニークなスタイルだ。決してワンパターンに陥ることのない複雑なリフを次々と繰り出してくる。ドラムのヒラリー・ビンダーも非常に手数が多くてパワフル。どの曲もすさまじい変拍子だが、キメの部分は決してはずさない。ライヴ感あふれるしっかりと呼吸のあった演奏に圧倒された。曲調はヴォーカルとギターのないZOAという感じがして、かなりハードコアなスタイルであるものの、わたしとしてはわりととっつきやすい系統。会場で彼らの最新CD "D.I.O." を買って帰った。

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三浦悦子人形展義躰標本室

HIGURE17-15cas(日暮里と西日暮里のあいだにあるギャラリー)に、三浦悦子人形展義躰標本室を観に行った。この展覧会はミルキィいそべさん、今野裕一さん(ペヨトル工房、夜想)のステュディオ・パラボリカによる企画。今日はオープニング。ギャラリー内はゴス系のファッションで固めた人たちがいっぱい。

HIGURE17-15casはもともと木を加工する小さな町工場だった建物。照明が落とされた1Fのフロアは、この展覧会のために床に貼られたと思われる濃い緑色のビニールの匂いでむっとした息苦しい雰囲気。ギャラリー中央のベッドに人形が置かれ、ベッドの手前には立ちはばかるように車椅子が置かれている。壁際にも何体かの人形が弱いランプの照明で照らされている。皮膚を縫い合わされたり、腕がなかったり、頭が曲がってとりつけられている畸形の人形たちは、その(人体としての)不完全さゆえにリアルな人間の精神性をあぶりだしているかのよう。2Fに上がる踊り場の奥には黒い幕がかけられ、その向こうにはからだの中から基盤やケーブルが飛び出た人形が。ちょっとサイバーパンクっぽい。

2Fのギャラリーは明るい照明で照らされ、さまざまな医療用具とともに人形が展示されている。このフロアの人形の多くは木の箱に収められている。今野さん、写真家の黒川さんにお会いして挨拶。ステュディオ・パラボリカでは翌日から三原ミツカズ展もはじまるので、同時進行でとても大変な様子。辺りに置かれているステンレスのワゴンやトレイ、足踏みペダルでふたが開く容器などは今野さんがこの展覧会のために集めたのだそうだ。包帯が巻かれたり、手術跡のような縫い目が痛々しい三浦悦子さんの人形とともにシュールな雰囲気を醸し出している。黒川さんが一体の人形を指して、わたしに似ているとおっしゃっていた。ばさばさの黒髪でおなかが飛び出し、点滴の管と一緒に箱に収められた人形は、似ていると言われるのはどうだろうと思わなくもないけれど、自分に似ている何かを少なからず共有しているようには感じられた。他の人形もみな陰惨な様相を呈していて、人間の病理的な本質を晒し出すリアルさには圧倒的なものがあった。残酷なだけではなく、皮膚の撓みや表情など細かい部分にいたるまで繊細な手仕事のすばらしさを観てとることができて非常に美しかった。

最後に地下の展示室へ。お化け屋敷のように暗い。赤い照明の中、包帯に巻かれた花嫁姿の人形や木を加工する器械の上に寝かされた人形が展示されている。また、ところどころ焼けただれて穴があいている奥のビニールの幕の向こうには白い砂が敷き詰められ、立てられた棺おけと人形が展示されている。今日はオープニングなので自由に観ることができたが、会期中は予約制でこの部屋を30分独り占めできるという。おそらくゴス系の熱心なマニアの人たちがいるのだろう。そこまで行くとちょっとわたしとは縁遠い世界のような気がするけれど、表現としてはシュール・レアリズム直系の精神性が感じられて共感できるものがある。

ギャラリーを出て日暮里のほうに向かう途中、ステュディオ・パラボリカのスタッフの明光院さんにあった。銀座のヴァニラ画廊であしたからはじまる三原ミツカズ展の準備からはしごして駆けつけてきたのだそうだ。あまりお話しする時間がなかったけれど、久しぶりに会うことができて良かった。

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OUT TO LUNCH / みみのこと

西早稲田JERRY JEFFにみみのことのライヴを観にいった。みみのことは去年9月のライヴを最後にベースの西村さんが脱退してしまい、今日は新しいベーシストを迎えての初ライヴ。お店にたどりついたのは開演の7時の少し前だったけれど中ではすでに演奏が、と思ったらまだリハーサル中。外は寒いのでお店の中で待たせていただく。リハーサルはすぐ終わり、ドリンクをオーダーして開演を待った。

川口さんがやわらかい音で不協和音もからませながらギターのコードを爪弾いてライヴがはじまった。ドラムの志村さんは細いスティックをはずませるように叩いたり、マレットでやわらかい残響を響かせたり、ブラシに持ち替えたり。ベースの人は今日はじめて観るけれど、まったく違和感がなかった。西村さんの大胆で時に挑発的なベースラインとは違っているけれど、しっかりとした音程感のあるラインで低音を支えている。フリーフォームの即興が次第に曲の輪郭をなしていき、また曲の途中でテンポが変わってもごく自然に流れていく。前半はわりとゆるいノリで、ずるずると引き込まれるようなところもあり、ロックンロールっぽいはぎれのよい部分もあり。川口さんのヴォーカルがいつもよりクリアに出ている気がする。ギターソロも勢いがあって良かった。

30分くらい演奏したところでMC。「今日は録音しているので、録音されたい人は騒いでください。録音されたくない人は静かに聞くように。」みんなシーンとして聞いているけれど、USAツアーの音源など聞くと、ときどき客が異様に盛り上がっておもしろかったりする。後半は速い激しめの曲を立て続けに演奏して一気に30分ぐらい。すごくカッコ良かった。新ベーシストを迎えてのひさびさのみみのことのライヴということもあり、あまりサウンドに埋没するようなこともなく冷静にさらっと聴いてしまったけれど、よくまとまっていたし、とてもいい感じの演奏だった。

次がOUT TO LUNCH。かつてGhostに参加していた西野公二(ベース)、山崎巌(ドラム)に、吉崎泰子(キーボード)の3人組インストバンド。エリック・ドルフィーのアルバムタイトルからつけられたバンド名は前から耳にしていたけれど、ライヴを観るのははじめてである。演奏をはじめる前に西野公二が「今日は土星(?)の演奏をします。長くなるかもしれないのでトイレや歓談などご自由に。」というようなMC。演奏はふわっとしたスペーシーなキーボードの音で静かにはじまった。キーボードは持続音中心で音色を変化させたりベンディングで音をゆらしたり。ベースはエフェクターを駆使して、とてもベースとは思えない音色もカヴァー。ドラムは主にマレットを使って残響を響かせ、時にはウィンドチャイムの音でアクセントを加える。ドラムの音数によって多少の盛り上がりはあるものの、終始穏やかでアンビエントなサウンドのままゆったりと変化していく。最後はまたキーボードのサウンドだけが残って演奏が収束。全編即興で切れ目のない一時間強の演奏だった。最初から長いつもりで聴いていたということもあるけれど、特にベースのサウンドが細かくヴァラエティに富んでいたから全然飽きることなく集中力が持続した。疲れているときに聴いたら気持ちよくて眠ってしまうかも。

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エコエコサイクルズ / スカルボ

西荻窪のCLOP CLOPにスカルボのライヴを観にいった。CLOP CLOPに行くのははじめて。普段はバーとして営業しているが、おもに週末にライヴをやっているお店のようだ。たどりついたのはちょうどライヴがはじまる直前のセッティング中。しかも一番最後の空いていた席に座ることができた。やたらに細長いお店の一番奥にあるステージ部分は若干の段差があって、また後ろのほうの席も少し高くなっている。わたしが座ったのは中ほどの席だけれど、十分見やすかった。

今日のスカルボはセンヤさんが不参加で三人編成。センヤさんのギターも大好きなので残念だけれど、また今までとは違った感じになりそうで楽しみ。一曲目が不思議な雰囲気の曲で、モモカワさんのギターソロもちょっと変わっていた。ソロのところではやはりちょっと音が薄いかなぁと思ったけれど、モモカワさんがいつもよりのびのびとギターを弾いている感じがしてとても良い。特に「コーヒーショップの悪魔」のギターはカッコよかった。ライヴでいつも演奏している「指に鱗粉」や「Inst.」は、ギターが一本だとセンヤさんのギターが入っているときみたいにドラマチックには盛り上がらなくて、だいぶシンプルな雰囲気だ。ちょっとあっさりしていたけれど、それはそれでいい感じ。ベース、ドラムも良く聴こえてバランスも良かった。

そして対バンがエコエコサイクルズ。去年の8月に観たライヴがものすごく良くて感動したので今日も期待大。エコエコサイクルズは本来はギター/ヴォーカル、ベース、ドラムの3人組。しかし今日は最初ドラムの人がいなくて、代わりにパーカッションの人が参加していた。カホンとハイハットとシンバルを使用していたけれど(1曲だけボンゴを使用)、素直な8ビートで叩いていて違和感がない。素手で叩くシンバルの残響がアクセントになっていい感じだった。1曲目、2曲目、3曲目とも「希望のうたをやります」と紹介。そのうち曲が終わるごとに、やんちゃな感じでピースサイン。去年の8月のライヴのときはMCで「これからまた新鮮な気分でがんばってやっていく」というようなことを話していたのだけれど、今日のライヴでは「がんばるのはやめた。がんばってもうまくいかないこともあるから。」などと言い出したり。MCも演奏も、いたってナチュラルだけど妙にテンション高くておもしろかった。最後のほうで突然ドラムの人が登場し、それからは4人で演奏。気さくな雰囲気で感動のツボをついてくる憎いバンドだなぁと思う。

終演後、スカルボのベースのイチノヘさんといろいろお話しした。1曲目と、あともう1曲新曲があったらしい。最近の曲はちょっと変わった感じの曲が多くてイチノヘさんとしてはおもしろいと話していた。モモカワさんやゆうこさんともちょっとお話しした。帰ろうとしたときにちょうどエコエコサイクルズのギター/ヴォーカルの山田さんが、特に面識ないのにもかかわらず「観に来ていただいてありがとうございました」と声をかけてくださったことにちょっと感激。

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