横浜Thumb's UpにThe Red Krayolaのライヴを観にいった。最初に出演したのがTHERMO。生のドラムを叩くドラムの人と、リズムマシン他機材担当の2人組。機材担当の人はリズムマシンをリアルタイムに操作して音を出し、時には左側に置いたフロアタムでも軽くリムショットで叩くなど、かなり変わったこともしていた。リズムそのものよりは極端に加工されたサウンドの感触が印象に残っている。
次はテニスコーツ。さや(vo/key/g)、植野隆司(g/sax/key)のほか、ギター、パーカッション&コーラスの4人で演奏。以前観たときは唄はほとんどなくてドローン風の即興演奏をかなり長くやっていたと思うのだけれど、今回はほとんど唄モノで短めの曲をたくさん演奏していた。
そしてThe Red Krayola。トム・ワトソン(g)が最初に登場しセッティングをはじめる。まもなくメイヨ・トンプソン(g/vo)、そしてジョージ・ハーレイ(ds)が生ビールのジョッキを2杯持ってステージにあがった。1曲目がなんと1stアルバムのHurricane Fighter Plane。ソリッドな演奏でアルバムの混沌とした感じとは全然違うけれどカッコいい。そしてThe Mistakes of Trotsky、A Portrait of V.I. Lenin in the Style of Jackson Pollock, Pt 1と続く。今回のメンバーが参加しているアルバムが中心の選曲になるのかと思いきやそうでもないみたい。
Larkingでのトム・ワトソンの少し歪ませたギターのリフ、メイヨ・トンプソンのシャウトも交えたヴォーカルはアルバムHazelのヴァージョンからはとても想像がつかないアレンジ。Wives in Orbitではジョージ・ハーレイのドラムソロもフィーチャーし、フリーキーにはじけまくる。そんな中にフォーキーなDear Betty Babyなど、メイヨ・トンプソンのソロアルバムの曲も違和感なくまざる。Magnificene as Suchは静かにはじまったけれど、後奏では一気に盛り上がった。
Pessimistyはトム・ワトソンがワウペダルで妖しいサウンドを鳴らし、Farewell to Armsは二人のギターの絡みがキレイ。そしてAn Old Man's Bluesは楽しいノリノリの雰囲気。それに続くI'm So Blaseがとても美しい。本編最後は混沌とした雰囲気の4teen。メイヨ・トンプソンのちょっとキレたようなヘンなヴォーカルが楽しい。
アンコールの最初はメイヨ・トンプソン一人でErgastulumをエレキギターソロ弾き語り。曲が終わるや否やそのまま他のメンバーも加わってWar Sucks。テンション高い演奏が繰り広げられる。そのあと、観客の声援にこたえてもう一度出てきてアンコールをやってくれた。
全部で1時間10分くらいだけれど、たくさん曲を聴くことができて良かった。前回の来日のときは、むちゃくちゃな感じでセッションする中、女性コーラスの人が歩き回りながら朗読のようなヴォイス・パフォーマンスを繰り広げていたり、デヴィッド・グラブスがやけにはしゃぎまわっていたりした印象が残っているけれど、今回はシンプルにロックしていて素直に演奏が楽しめるようなライヴだった。メイヨ・トンプソンがすばらしいのはもちろん、トム・ワトソンの弾くギターもすごく良い。確か家にトム・ワトソンのソロCDもあったはずなんだけれど、どんな内容だったか思い出せない。
翌日は吉祥寺タワーレコードでインストア・ライヴ。開始時間5分前ぐらいに行ったら、もうすでに人がいっぱいであふれている。しかし「前のほうの人は座って観てください」というアナウンスがあり、後ろのほうからでも良く見ることができた。メイヨ・トンプソンはなんと黒いスーツ姿で登場。メイヨ・トンプソンのアコースティック・ギターの弾き語りに軽くジョージ・ハーレイが小ぶりのジェンベでリズムを添えて、15分ぐらい5曲演奏した。
演奏終了後は、なんとメイヨ・トンプソン自身の申し出により実現したという質疑応答コーナー。いったんその場を立ち去ろうとするのを担当者が制したときの、「ああそうだったね」という感じのリアクションがとても気さくな様子。しかも、各質問に対する答えは意外なぐらいに謙虚な人柄が偲ばれるものだった。プライマル・スクリームやレインコーツのアルバムのプロデュースに関する質問の答えなどは自分の手腕がどうというよりもそれぞれのバンドの立場に立って語っていたような感じ。「プロデュースしてみたいバンドはいますか」という質問に対して、「彼らが耳を貸すならばローリング・ストーンズを助けてあげたい」と答えていたのが印象的。「昔どんな音楽に影響を受けましたか?」という質問に対しては、ジョン・フェイヒーを第一に挙げた以外は、マイルス・デイヴィスやジミ・ヘンドリックス、オーネット・コールマンなどわりとオーソドックスな名前を挙げていた。でも好きな日本のミュージシャンとして挙げていたのは大友良英、メルトバナナ、暴力温泉芸者、メルツバウ、ボ・アダムズといった海外で評価の高いアンダーグラウンドのミュージシャンたち。日本にはユニークな良いミュージシャンがたくさんいるねとか、日本食が好きだとか、どうやら日本のことはかなり好きみたい。終始上機嫌な様子で、どんな質問にも詳しく答えていて、とても充実した内容だった。一番最後の質問の答えで、「60年代前半まではジャケットというのはレコード会社が勝手に決めるものだったけれど、1stアルバムを出したのはちょうど初めてミュージシャン自身がジャケットのデザインを決めるようになった頃で、Parable of Arable Landのジャケットは、当時こういうのがサイケデリックだろうと思ってメンバーみんなで描いた。」という話はとても興味深かった。
30分超の質疑応答コーナーのあとはサイン会。お店の中にぐるーっと長い列ができて、わたしはおそらく20~30人目ぐらいのところにいたのだけれど、なかなか列が進まない。だいぶたってから、サインをもらって帰っていくと思しき梅田さんを発見。慌てて列を抜けて声をかけに行ったら、以前一度お会いしたことがあるsaikiさんも。二人で飲みに行く様子だったので、あとで合流する約束をしてまた列の最後尾へ。それから30-40分ぐらい(?)相当辛抱強く待ったけれど、去年発売されたベスト盤が店内に流れていたのがちょっと救い。自分の番が来たときはすごく緊張した。きのうの横浜のライヴの感想や前回来日したときも観にいきましたというような話をして、Finger PaintingのCDにサインをいただいた。よく読めない部分もあるのだけれど、ジャケットいっぱいにいろいろと書いてくださった。他の人は肩を組んで一緒に写真を撮ってもらっていたり、本当に気さくに一人一人丁寧に接している様子が素敵だった。
そのあと梅田さん、saikiさんともメイヨ・トンプソンの素敵な人柄の話で盛り上がりまくり。お二人とはまた来週のソロ公演でお会いできるので楽しみだ。
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