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g-p.s.(楽園をみつめて、そして・・・)

万城目純さんの新作映像作品『g-p.s.(楽園をみつめて、そして・・・)』が上映されるイメージフォーラム・フェスティバルのAプログラムを観にいった。会場は新宿パークタワーホール。今日の上映は増田直行(ギター)、矢野好士(キーボード)、久田祐三(パーカッション)、小柳昌博(ギター)によるW.B.O記念伴奏団の生演奏つきということで楽しみ。

初台駅で下車して会場に向かう途中にあるギャラリーに寄り道。ケンジタキ・ギャラリーでは塩田千春 新作展「砕けた記憶」が開催されていた。塩田千春は2001年の横浜トリエンナーレでの巨大インスタレーションが記憶に残っているが、あのような巨大な作品自体がバブル時代の名残を感じなくもない上に、作品に対する客観性をあまり観てとることができない妙にシリアスな作品だったことで、あまり評価する気になれなかったというのが正直なところ。でも不況の時代に合わせたようなこじんまりした作品をつくるアーティストが増えていくなかで、今でも強力なインパクトで記憶に残っていることも事実である。新作「砕けた記憶」はギャラリーじゅうに細かくはりめぐらされた黒い糸のところどころに鏡の破片が置かれている。やはり表現行為として新鮮さなどは感じられないのだけれど、何の説明もなくても視覚的なイメージとして伝わってくるものはあった。

そのお隣のワコウ・ワークス・オブ・アートではジョアン・ジュナス展。正面の壁にはエジプトなどで撮影されたと思われる映像、脇には黒板に渦巻きやピラミッドやスフィンクスを書いている小さい映像が投影されている。あとギャラリー内には肘掛つきの長いすと幼稚園などにありそうな子供用の椅子。どちらも木製で彩色されている。ぱっとみたところ何を意味しているのかよくわからない作品。正面の映像では砂漠の中からTVやラジオのようなものを掘り出したり(そのラジオのようなものもギャラリー内にあった)、街中を車で走っていたり、作者のギャラリーでの展覧会でのパフォーマンス風景が流れたり。ちょっとぐらい観ていてもやはり良くわからないことには変わりないが、どういったことに興味の視点を置いて作品を制作しているのかはなんとなく伝わってくるし、まぁそういうことで良いのだろうということにしてギャラリーをあとにした。

そこからパークタワーホールまではもうすぐ。会場にたどりついてからは、チラシを漁ったり、ロビーで上映されているスイスのアーティストのヴィデオ作品を観たり。大好きなピピロッティ・リストのヴィデオ・クリップがあって嬉しい。曲はずっと前に観た2面の直角の壁に映像を投影したインスタレーションでも使われていたクリス・アイザックの「Wicked Game」のカヴァーだけれど、今回上映されていた映像はそれとは違っていた。しかしこの曲でのピピロッティ・リストの唄声(&叫び声)には本当にやられたという感じ。「I'm victim of this song」というタイトルがつけられているけれど、わたしもまたこの曲の犠牲者。当時いろいろ調べてやっと入手したピピロッティが唄っているヴァージョンのこの曲のCDをいろいろな人に聞かせまくったものだった。

ロビーの脇のほうには伊藤隆介による映像インスタレーション『Realistic Virtuality』。人物や照明、TVカメラなどすべてが精巧に作られた報道番組のスタジオのミニチュアセットが展示されていて、TVカメラはモーターでまわる円盤に取り付けられた糸にひっぱられて前後に動いている。そのカメラに捕らえられた映像は拡大されて壁に投影されていて、映像で観ると本物の報道番組の映像みたい。おもちゃみたいにかわいいセット、妙に簡単な仕組みで前後に動くTVカメラと、リアリティある壁の映像とのギャップがわかりやすくておもしろい。

そんなこんなでうろうろしている間に若尾伊佐子さんや山崎幹夫さんなどにお会いする。そしてまもなくAプログラムの上映開始ということでホール内に移動。このプログラムは一般公募の大賞受賞作品を含んでいることもあり、注目が高い様子。万城目さんの作品で演奏するミュージシャンが全然見えないけれど、画面が良く観える後ろのほうの真ん中あたりの席を確保。

最初に上映されたのが万城目純さんの『g-p.s.(楽園をみつめて、そして・・・)』。最初は長いこと暗転の状態が続き、口琴の音が会場に響く。ギターは流麗なメロディを奏でることはなく、ディレイなどのエフェクトを多用した効果音的で抽象的なサウンドが中心。そこにシンセサイザーのサウンドが彩りを添え、パーカッションのリズムが起伏をつくっていく。映像はガラパゴス諸島で8ミリフィルムで撮影されたという動物や自然を撮影したもの。人間は一切登場しない。普段見かけることのない変わった動物の生態も興味深いけれど、ごつごつした岩や海、ひたすら広い空が光の具合でどんどん変化していく様子が素敵。万城目さんの代表的な作品でよく観られるコマ撮りによるめまぐるしい映像効果は一切使われず、未開の地でゆったり流れる時間をそのまま映しとったようなシンプルな画だった。最後のほうでパーカッションのリズムが盛り上がっていき、シンセサイザーが白玉音符の和音をベンディングで変化させていく中、映像は船から撮影した海や島を捕らえながらパンしていき、だんだんと露出オーバー気味の白っぽい画面になっていくところが印象的だった。

次に上映されたのが相原信洋の『Yellow Night』。手書きイラストのアニメーション。ちょっと毒気のあるイラストだけれどなかなかオシャレにまとまった作品。

その次は小池照夫の『生態系-14-留』。海辺にある藤壺をコマ撮り(静止画で撮影?)してめまぐるしい速さで構成したもの。最初に「速い動きが苦手なかたは目をつぶっていてください。」という注意書きテロップが出るだけのことはあって、素材の映像は渋いけれど画面は終始チラチラと変わり続ける。サイレント作品だった。

そして一般公募部門入選、大山慶の『診察室』。これも手書きイラストのアニメーション。診察に来た患者、医者、そして子供、太った婦人などが登場。明確に語られるストーリーはないものの、それぞれの場面はストーリーを喚起させるような不穏な雰囲気を伝えている。けっこう不気味な画だけれどディテールの細かさに脱帽。

次は奥山順市の『現像処方 Dev-18』。リトアニアの現像所を撮影したという静止画映像に奥山順市自身によるナレーションではじまる。奥山順市の作品は以前もイメージフォーラム・フェスティバルで観ているが、フィルムや現像手法そのものに工夫を凝らした実験映像でありながらひょうひょうとしたユーモラスなナレーションが入るのが特徴。タイトルのDev-18というのは「デブ嫌」なのだそうだ。自家現像のフィルムを無理矢理4枚重ねて投影した映像とのことだけれど、どうやってフィルムに焼き付けた映像なのか作品中で語られることはない。専門家にはもしかしたら現像液の成分などを語るナレーションなどから想像がつくのかもしれないけれど。

最後は一般公募部門大賞、瀬戸口未来の『ははのははもまたそのははもその娘も』。ある意味女性的と言うことができるような(名前から勝手に女性と判断していますが)グロくて執拗な作品だった。廃墟が出てきたかと思うと、洗面所でいかをさばいたり、生のレバーみたいなかたまりをハイヒールの靴でぐにょぐにょになるまで踏み潰したり、ゼリーをぶちまけた床を転げまわったり。正直なところ苦手なタイプの作品。全編に作者自身のものと思われるナレーションがかぶさる。母がどうのこうのという内容を語っているのだけれど、そういうのもちょっと苦手。でも気持ち悪いと思いつつも最後まで観させてしまうだけの編集力は感じたし、すさまじい労力をつぎこんで徹底的に作り上げられた作品だと思う。こういうのがイメージフォーラム・フェスティバルで大賞をとるのはなんかわかるな、って感じ。

上映終了後は作家によるトーク。大賞受賞の瀬戸口未来は来場していなかったようだが、それ以外の作家が壇上に勢ぞろい。正直言ってあんまりめぼしい話はなかった。一般公募部門入選の大山慶はかなり若そう。作品のエンド・クレジットに「協力 かわなかのぶひろ」と出ていたので、おそらく学生だろう。この『診察室』は今年のカンヌ国際映画祭の監督週間に出品されるそうだ。去年の辻直行、宮崎淳に続く快挙である。

場内ではサノトモさんと佐藤さんに遭遇。サノトモさんはあした大阪でライヴだそうだ。万城目さんや音楽担当の人たちの後片付けを待って、十数人でぞろぞろと移動。途中で散りぢりになりながら新宿駅方向に向かい、万城目さん、今日の生演奏のバンドのギタリストの増田直行さんら8人でさくら水産で打ち上げ。皆今日の上映作品に対してけっこう手厳しい意見。わたしも大賞受賞作家に関しては、ああいうインパクトの強い作品で世に出て、これからもあの執拗さで作品を作り続けていくことができるのだろうかと懐疑的な気分。

その後同じ店内に小池照夫、相原信洋がいるらしいことが判明して合流。席を移動すると小池照夫さんが横笛を吹いていらっしゃった。なんという笛なのかよくわからないけれどとてもお上手だ。しかし個室になっているわけでもないのにずいぶんと寛容な飲み屋。なんでも小池さんはよく自身の作品の上映時に生演奏するらしい。今回は万城目さんの上映も生演奏つきだったからコラボレーションでもという話もあったそうなのだが、事前に準備する時間がなかったらしい。

そのうち一番奥のほうの席に山崎幹夫さんがいらっしゃるのを発見したので挨拶に行く。山崎さんは小池照夫ファンなのだそうだ。「小池さんの作品、渋いヴィデオ・ドラッグって感じですよね~」「大賞受賞作はいかにもイメフォって感じですよね~」「『診察室』はフランス人は好きそう」と盛り上がる。山崎さんの向かいにはミストラルの水由さん、片山さんがいらっしゃった。国立のキノ・キュッヘでお会いしたことがある。片山さんは帰りの電車で数駅一緒でお話ししたことも。お二人ともわたしに見覚えがあったようで嬉しい。5月15日(日)におこなわれる上映会のチラシをいただいたけれど、この日は高遠さんの上映もあるので残念。

時間もだいぶ遅くなり、一時期はずいぶん大所帯だった宴会も人がだんだん少なくなっていく。今日はいろいろな人に会うことができて充実した日だった。

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プレジデントガス

プレジデントガスのライヴを観に吉祥寺MANDA-LA2に行った。プレジデントガスを観るのは去年のクアトロ公演に続いて2度目。今回は前回ギターを弾いていたGOKIさんがお休みで、まゆこさんが出演。とても気持ちの良いカッティングをする人だという噂を耳にしたことがあるのだけれど、お見かけするのははじめてである。とても楽しみ。

まゆこさんのギターはすごくカッコ良くて、カッティングだけでなくソロもばっちりだった。わたしみたいなあとで聞きなおすと何弾いてるのかわけわからないようなのとは大違いで、わりと堅実にきっちり弾くタイプみたい。GOKIさんのようなきらびやかな感じともまた違う。でもけっこう派手にアクションつけながら楽しそうに弾く様子がプレジデントガスの雰囲気にあっていて良かった。最後の曲でワウペダルを踏みながら弾くソロはちょっと真似してみたい感じだった。

場内では知り合いにもたくさん会って打ち上げにも参加。とはいってもプレジデントガスのメンバーとはほとんど話さなかったのだけれど。みんな帰らない人ばっかりで、終電ぎりぎりまで飲んでから帰った。吉祥寺からの井の頭線の上り電車、もっと遅くまであればいいのに。

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秋のユーモレスク

山田勇男さんの映画『秋のユーモレスク』の上映とペーソスのライヴを観にシネマアートン下北沢に行った。この企画は一週間にわたりシネマアートン下北沢でおこなわれる「楽音キネマ vol.2」のうちの一つ。この楽音キネマ、他の日もあがた森魚さんや坂本弘道、山田広野、灰野敬二など多彩な人々が登場していて興味深い。

場内でさっそく高遠さんに遭遇。こないだのChrome Greenのライヴを観に来ることができなかったからと言って、お芋でできたお菓子をくださった。わたしなんてこないだのcinevisの高遠さんの上映、遅刻して観られなかったというのに申しわけない気分。でもとても嬉しい。

『秋のユーモレスク』は以前『ペーソスな旅』というタイトルでLA CAMERAで上映されたのを観たことがある。出演はペーソスの島本慶さん(唄)と岩田次男さん(ギター)ほか。演奏シーン以外にも、吉祥寺の井の頭線の階段のところで待ち合わせをしていたり、飲み屋でくつろいでいたり、旅先の路上で佇んでいたり、自然の風景の中を歩いていたり、微妙に芝居の入ったお二人のスナップが大量に集積された映像作品である。上映がはじまると、山田さんのレタリングによる素敵なタイトル・クレジットが追加されていて嬉しくなる。山田さん本人曰く、中身は特に手は加えていないとのことだけれど、やはり一回観ただけだから、あまり覚えのないシーンもあったり、前はそんなに印象的ではなかったシーンがとても良かったり。でも暗がりの井の頭公園で演奏しているシーンは前回観たときと同様とても素敵だった。演奏シーンで画面の音と映像のサウンドが同期しているわけではないのが残念だけれど、画面のなかにうつろな表情を見せつつ唄う島本さんの姿があって、でもその声が聴こえてこないというのがまたペーソスな情緒を引き立てて、なんとも言えないものがあるなぁと思ってしまう。

そして上映が終わったあとはペーソスのライヴ。ペーソスのライヴは去年の初台THE DOORSのレコ発以来。噂には聞いていた「オヤジいらんかぇ~」という新曲を聴くことができた。司会のスマイリー井原さんが豆腐売りの人のようなラッパを吹いて活躍。スマイリー井原さんは他の曲でもハンド・パーカッションで効果音を入れたり、観るたびに活躍度があがっていく。MCでも関西ツアーでのエピソードを語ったり、司会とはいってもきばった感じがなくナチュラルで良かった。新曲のほかには高田渡を追悼してカヴァー1曲。それ以外はすでにおなじみのペーソスの曲だったけれど、「独り」は何度聴いてもしみじみしてしまうし、前はなんかぴーんと来なかった「恋人生」の歌詞って実は「濃い人生」のことなのかと思ったりしながら聴いた。

レコ発のとき同様、「涙腺歌」の途中からスエイさんがサックスで乱入。狭い劇場内でのライヴなのでサックスの音は生音。レコ発のときより落ち着いて演奏されているように見えた。島本さんのハーモニカは前より上手になっていてアヴァンギャルド度は少し後退(?)。ゲスト登場という盛り上がる場面だけれど、ステージ上でいろいろ気遣いをする島本さんの様子が場の雰囲気を和ませていた。でも、むしろそこまでの堂々とした島本さんの唄いっぷりは、ツアーもこなしてペーソスどんどん良くなってるなぁと思わせるものがあって良かった。最後は「霧雨の北沢緑道」で大いに盛り上がる。その後も拍手が鳴り止まず、予定していなかったみたいだけれどアンコールで「豆大福」を演奏した。

終演後、劇場ロビーの奥のほうで山田さん、島本さん、岩田さん、井原さんにご挨拶。山田さんはこないだChrome Greenのライヴを観にいらっしゃって、とても褒めてくださったのでものすごく嬉しかった。その一言で当分生きていけそうだ、というまるでペーソスの「独り」の歌詞そのものの気分。終演時刻がけっこう遅かったので、高遠さんと下北沢駅近くの定食屋でさくっとごはんを食べてから帰った。

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Chrome Green

4月24日(日)はわたしがギターを弾いているロックバンド、Chrome Greenのライヴでした(秋葉原PAGODA)。たくさんの方にご来場いただきまして、本当にどうもありがとうございます。お話しできなかった方もいて大変申しわけないです。今回(前回の9日も)はじめて観てくださった方が多く、しかもポジティヴな感想を多くいただくことができて非常に励みになりました。今回はじめて観てくださった方が多いというのは、わたしの知り合いの人でということなんですが、今回いつも以上に告知をがんばりました。というのも去年のライヴで、Chrome Greenのような音楽はあまり好きではなさそうかもと思った友人にもけっこう褒めてもらえて嬉しかったからなのです。非常に感謝しています。

先日の東高円寺Los Angels Clubでは最後かなり長い曲をやって全部で5曲の演奏でしたが(27分ぐらい)、こないだのPAGODAでは短めの曲が多かったので7曲。でも持ち時間30分のところ35分くらい演奏していました。まぁこれぐらい演奏できると充実感も多少違う感じがします。もっと長くやりたいです(ただしそう思っているのはメンバーの中でわたしだけのようですが)。

Los Angels Clubのライヴでは各パートの音量バランスを失敗したので、今回はリハーサルで内音、外音ともにしっかりチェック。PAGODAのスタッフの一人がベーシストと知り合いのため、なにかとやりやすかったです。とはいえ、自分のギターの音に関して完璧に思い通りというわけにはいきませんでした。普段スタジオでMarshallアンプ(JCM-900)を使っているのですが、PAGODAにはないのでFender Twin Reverb '65を使用。思いのほか歪んでギラギラした音がしたので(Twin Reverbってこんなに歪んだっけなという感じ。アンプの個体差もあるのかも)、エフェクターのセッティングもそれに合わせていろいろ調整。その場での対処としてはベストを尽くしたつもりなのですが、今思えばこの曲のときはもっとこうすれば良かったという点がなくもないです。ちなみに前回のLos Angels ClubもMarshallがなくてHughes&Kettnerを使用し、このときの音作りも反省点がいろいろ。自分で気に入るアンプを買ってライヴのとき持ち込もうとは思っていないので、そのへん場数を踏んでなんとかしていくしかないです。ゆったりペースながらそこそこ順調にバンドを続けていられることを感謝する次第です。

今回の共演バンドのうち、一つ前に出演したリトルダラニスキーはルーツ・ミュージック色の強いソウルフルなロックンロールバンド。ドラムの人は曲によってコンガやジェンベを使っていました。自分の出番の準備などあってほとんど観られなかったのですが、ギターの人はボトルネックがむちゃくちゃ上手で、準備のために一度楽屋に引っ込んでいたのに思わずまたちらっと観に出たりしました。トリ(Chrome Greenの次)の1-Eは青春ロックって感じ。ラジオで曲が流れたりもしているバンドのようです。ヴォーカルの人のルックスもいいし、演奏もアレンジもしっかりしているので、そのうちメジャーデビューしていても不思議ではないです。今回は実力のある(しかもChrome Greenとは全然音楽性が違う)バンドにはさまれて、なかなか良い刺激になりました。

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回向

『回向 echoo』9.1ch Surround Sound & 360°Multi-Projection Videoというイヴェントが六本木SUPER DELUXEでおこなわれ、福岡から出張ついでで週末から上京してきた佐保さんと一緒に観にいった。佐保さんと会うのは2001年に当時佐保さんがドラムを叩いていたFreemanというバンドが東京にライヴをしに来たとき以来。こうやって遠くに住む友達とときどき会うことができるのは嬉しいものだ。ライヴ前に一緒に食事でも、と思っていたのだけれど、六本木ヒルズの前の路上でおちあったときには開場時刻をちょっと過ぎていた。Super Deluxeにも確かカレーとかあるはず、ということで、人ごみでごった返す六本木ヒルズを通り抜けて会場に向かった。

このイヴェントは、山本精一(ギター)、生西泰典(visual)、掛川康典(visual)による3時間ノンストップ・ライヴ。100人限定の予約制ということで、事前に佐保さんとは別々にメールで予約していた。開場時刻の7時を10分ぐらい過ぎて会場にたどりつき、スタッフの指示で番号順に並んだのだけれど、開場時間を過ぎているはずなのになかなか列が進まない。やっと入場できたのは7時40分ごろ。さっそく食事のカウンターに並んだけれど、なんと開演時刻が近いので食事のオーダーは締め切りましたとのこと。2つ前に並んでいた人はOKだったみたいなのだけれど。場内は座布団が敷かれて床に座るような状態で、開演後はあんまり食べていられる雰囲気でもないなと思ったからこそ速攻で並んだというのはあって、そんなものかとあきらめる。隣のカウンターでビールだけ頼んですごすごと確保した座布団のところへ戻った。まぁ、仕事帰りにライヴ観にいくときなんて(仕事にはまっているときなども)夜ごはんを食べないとかザラだからいいんだけれど。しかし、そもそも客入れにかなり手間取っていたこともあり、開演は30分以上遅れたのだった。

山本精一はエレクトリック・ギターをアンプでならし、アンプからマイクで拾った音をさらにMTRに入力。MTRにはあらかじめ別の音も仕込んであって、場面に応じていろいろな音をミックスして出力していた。MTRにはリズムマシンもつなげていて、それも時にはリアルタイムで操作していたかもしれない。出力された音は会場を取り囲むように設置されたたくさんのスピーカーから聴こえてくる。映像のプロジェクターは9面に設置。正面に3面、ドリンクカウンターなどがある背面に3面、会場奥に2面、入り口側に1面。確かここの壁ってコンクリート打ちっぱなしの灰色だったと思うのだけれど、このイヴェントのために壁を白く塗ったのだろうか? 天井のパイプから吊られた板の上に設置されたプロジェクターからの映像はちょうど壁の大きさにぴったり合うように調整されていて、これはセッティングだけでとんでもなく大変だったであろうことが想像される。電気をいっぱい食うので空調は全部切っている、という話し声がどこからか聞こえてきた。

映像は次々と新しい素材を組み合わせていくようなVJ風のもの。9面すべてに同じ映像が投影されていた。面によって違う映像が流れていたりしたらもっとおもしろかったと思うけれど、でも映像そのものは意外とありがちな感じではなくて、ずっと観ていても飽きることなく楽しめた。観たことある素材が出てきたなと思ったら、visual担当のうちの一人、生西康典は去年のPSF/アルケミーレコード20周年記念のライヴで灰野敬二+成田宗弘DUOのバックで映像を担当していた人。でも大部分は新鮮な気分で観られるものだったし、こういうVJの人ってふだんから膨大な量の映像を蓄えているんだろうなと思う。今日みたいな長丁場では大変だ。

映像は2人いるけれど、演奏する山本精一は1人。途中15分くらい休憩していたけれど、それ以外はずっとソロで演奏し続けた。MTRからの音だけを残してギターを弾く手を休める場面はあったけれど、それは合計してもせいぜい十数分ぐらい。これは並大抵のことではないと思う。もちろんこれだけの長丁場ともなると、出す音すべてが緊張感みなぎるすばらしい演奏というわけにはいかないが、けっこう軽い感じでこなしていたのが印象的。ディレイでループさせながら音を重ねていく演奏が主だったが、それにもいろいろなヴァリエーションがあって楽しめた。特に一番最初のほうでテープ逆回転風の音を出していたのが良かった。最後のほうはひたすら轟音。轟音になってからもけっこう長かったけれど、まるっきり一本調子なことはなくて次々と音像が変わっていって、どこまで行くかな、って思って聴いていた。サラウンド云々ということで言うと、ギターの音は正面のアンプから聴こえてきてしまうのでその効果はあまりなかったけれど、もともとMTRに仕込んであった音は前のほうのスピーカーと後ろのほうのスピーカーとで微妙に違う音が流れてきたりもしていた。実際にはもっと細かいいろいろな細工をしていたかもしれないけれど、あんまり細かいことはよくわからない。正面の映像には山本精一のシルエットが映るのもいい感じで、場内何台かで撮影していたヴィデオ・カメラのうち、そのシルエットだけをねらって撮影しているものもあった。

けっこう大味で快楽的なイヴェントという印象もなくはないが、出演者、関係者とも相当な労力をつぎこんだことだろう。ただSuper Deluxeの会場の仕切りはどう考えてもイマイチ。座布団に座って観るのはいいんだけれど、せめて飲み物を置く台をところどころに設置してくれたら良いのに。ライヴの間じゅう、あちこちでグラスを倒したり割ったりしている音がしていたのもこの状況では無理もない。開演前の仕切りの悪さといい、もうちょっとなんとかならないものかと思う。ライヴ自体は非常に楽しめるものだったのだけれど。

終演は11時10分ごろ。開演が遅れたこともあって3時間はなかった。でも相当のヴォリュームだったし、これだけの長さが十分な意味を持っていたと思う。終演後、場内で我々のギターの川田さんにばったり。でも時間も遅かったしお互い友達を連れていてあまりお話しする余裕がない。あしたのわたしのライヴを観に来てくれるそうなので、じゃぁまたあしたということでお別れ。わたしはこの日の夕方バンドの練習でスタジオに入っていて、12時に閉まってしまう新宿駅のコインロッカーに楽器とエフェクターを預けていたから、佐保さんとも六本木駅でお別れ。でも開演前にいっぱいお話しできたし、本当に久しぶりに会えて良かった。

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ポチャカイテ・マルコ / おしゃれジプシィ

ポチャカイテ・マルコとおしゃれジプシィのライヴを観に初台THE DOORSに行った。両バンドともダンサーが出演ということもあり、客席はダンス関係の人も多い様子でとても華やか。そのままステージに上がって踊りだしても違和感ないような美しい装いの人もいてびっくり。

最初に出演したのはおしゃれジプシィ。メンバーは佐藤圭一(ウード/ブズーキ)、喜多直毅(ヴァイオリン)、伊藤アツ志(パーカッション)、守屋拓之(コントラバス)、ネニュファー(ベリーダンス)の5人。ちなみに公式サイトによると、楽団名が「TERRAPIN」でネニュファーを加えたユニット名が「おしゃれジプシィ」なのだそうだ。おしゃれジプシィのライヴを観るのははじめてだが、伊藤アツ志は去年のポチャカイテ・マルコのレコ発ライヴにゲスト出演していたし、守屋拓之はGhostやTsuki No Waで観ている。アラブや東欧方面の民族音楽を主体とした本格的で質の高いバンドだった。単に民俗音楽べったりという生ぬるさはなくて、とてもよく練りこまれた楽曲に瞠目させられた。日本人好みにうまく消化されているということかもしれない。もちろん演奏も超一流。特に喜多直毅のヴァイオリンがテクニックもすごい上に情熱的ですばらしかった。ネニュファーは5曲くらい演奏されたうちの2曲に参加。大柄な体をこきざみにゆすったり、ステージの床をころげまわったりもするダンスはとてもダイナミックで官能的だった。

そしてポチャカイテ・マルコ。去年のレコ発ライヴ同様ベリーダンスのグループALMIS TARMISが数曲で参加。ALMIS TARMIS主催者のバービー・マコがソロで参加する曲もあった。去年観たときも速くて大きい動きをとりいれたダイナミックなダンスは相当すごかったが、今回は去年以上に演劇的な要素もとりいれた振り付けがなされていた(おしゃれジプシイのネニュファーはもっと即興的な要素が多かった)。特に黒い布と衣装でステージを縦横無尽にかけめぐるダンスのときは、まるでポチャカイテ・マルコの演奏がホラー映画の音楽のように聞こえてしまうほど(ちょっと違うかもしれないけれど『サスペリア2』のゴブリンの音楽を思い出してしまった)。荻野和夫がMCで「怖い踊り」と称していたのがなんとも。ダンサーが加わる曲のたびにヴァイオリンの壷井彰久はステージの前と後ろを移動。「いつもの2倍働かせていただいています」というMC。ポチャカイテ・マルコの演奏は、今回は民族音楽色が強くなるのではないかと思っていたのだけれど、民俗音楽コーナーが設けられていた去年のレコ発に比べればそうでもない。でも1曲目で「ジプシー・ソウル」というイスラエルの曲をやっていたのは今日の企画の趣向にあわせたものなのだろう。全体的にはいつもどおりの力いっぱいの演奏をするプログレッシヴ・ロックなポチャカイテ・マルコだった。演奏内容もおしゃれジプシィに退けをとらないすばらしいものだった。

アンコールでは伊藤アツ志と佐藤圭一も参加。佐藤圭一のウードのピックアップが調子悪いようでマイクから生音をひろって演奏。曲がはじまる直前でヒスノイズっぽいザーっという音が聞こえてきて一瞬不安になったけれど、ちゃんと佐藤圭一の音も聞こえた。あれ、佐藤圭一はハレルヤでも参加していたと思ったけれどこれもアンコールだったかどうか? ライヴを観てからだいぶ日が経ってしまって正確なところが思い出せない。アンコールの一番最後ではALMIS TARMISのメンバーとネニュファーのダンスも加わって非常に華やか。ずっと前から楽しみにしていたライヴだったのだけれど、両バンドともすばらしくて大満足した。

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Meeting at OFF SITE

代々木のOFF SITEに「Meeting at OFF SITE」というライヴ・イヴェントを観にいった。OFF SITEは代々木駅からすぐ近くの路地を入っていったところにある2F建ての小さい一軒屋を改造したスペース。今月いっぱいで閉店になってしまう。OFF SITEのことをはじめて知ったのは2,000年ごろ。そのころペヨトル工房が解散し、大量の本の在庫が裁断されてしまうという事態になったときに、アーティスト/ミュージシャンの伊東篤宏さんとそのパートナーの伊東ゆかりさんがオープンしたギャラリー・カフェのOFF SITEがペヨトル工房の在庫の一部を引き取ったという話を聞いたのだ。それでTOKYO ART SPEAKの原さんやアーティストの高橋さんと一緒に訪れた記憶がある。当時は確か伊東篤宏さんも伊東ゆかりさんも平日の昼間は別の仕事をされていて、週4日夜のみオープンとはいってもかなりハードそうで、志の高さを感じたものだった。その後、いろいろなライヴ企画のチラシなどを目にすることもあり、ずっとOFF SITEに対しては敬意に近い感覚を持っていたのだけれど、でもいつもタイミングが悪くて、せいぜい近くに行ったときにギャラリーをちらっとのぞく程度でライヴを観にいったことは一度もなかった。

「Meeting at OFF SITE」は秋山徹次と中村としまるが中心になって企画されていたライヴ・イヴェント。一昨年末までOFF SITEで定期的におこなわれていたが、その後、チラシによると「十分その役割を果たしたため」休止していた。今回は長いことお世話になったOFF SITEへのお礼の気持ちということでもう一度企画したとのこと。今回はケン山崎(percussion)、中村としまる(no-input mixing board)、秋山徹次(amplified acoustic guitar)によるライヴ。

当日はちょっと仕事にはまっていて開演時刻の8時に30分ぐらい遅れてしまった。やはりOFF SITE閉店ということもあってか、入り口のドアのところまで立ち見の人がいっぱい。関係者というか知り合いで来ているような人が多い雰囲気だったから、わりとすーっと中ほどまで入らせてもらうことができて、なんとか秋山徹次が見えるぐらいの位置を確保。秋山徹次はフレットのところに何かをはさんで弦をはじいたり、(髪の毛にムースをつける用の?)ブラシみたいなものを使って音を出したりしている。ケン山崎は床に座っていてよく見えないけれど、さまざまな種類のパーカッションを演奏している様子。中村としまるは、機材をあやつって微細だけれども耳につくような発信音を鳴らしたりしている。3人の即興演奏に耳をすまして十数分ほど経ち、前半が終了した。

2Fに上がってお金を払い、ドリンクを受け取る。本棚にはペヨトル工房の本がたくさん。昔の裁断を免れた在庫だけではなくて最近の商品もちゃんと揃っている。CD棚も充実。実験音楽を中心とした世界中の自主レーベル作品からアーティストが個人でつくったCD-R作品までいろいろ。昔聞かせてもらって衝撃を受けて買って帰った「電話畑」のCD-Rも未だ売られていた。壁には貴重なアナログレコードも飾られている。こういうときに限って財布に5,000円しか入っていないのだけれど、Onna/宮西計三「Maila」のコミック+CDを購入。カウンターに持っていったら、伊東ゆかりさんが「以前原さんと来ていただきましたよね」と声をかけてくださって感激。ずいぶん前のことなのに。もっと頻繁に訪れればよかったと後悔。でも、また再開するつもりだとおっしゃっていたので、そうしたらなるべく足を運ぼうと思う。1Fに降りたらスズキジュンゾさんに会った。スズキジュンゾさんはライヴとか下北沢の路上など、あちこちでばったり会う。ドレッドヘアでなにしろよく目立つし。そのわりにはじっくりお話ししたことがない。

ライヴ後半はケン山崎のパーカッションソロからはじまった。今度は立ち見のなかでは一番前の位置まで行くことができたのだけれど、でも床に座って演奏しているのでほんのちょっとしか見えなかった。タムらしきドラムのほかに小物をいっぱい使っているようだ。駅に近いとはいっても住宅が密接しているこの場所では大きい音を出すことはできないが、さまざまなパーカッションを次から次へと持ち替えてどんどん変わっていく演奏に耳を傾けると、映像を観ているような気分になった。それは決してゆったりしたものではなく、めまぐるしくて鋭い感じのものだった。その後また3人で即興演奏。秋山徹次は今度は日本刀で弦をこすったりもしていた。先日のソロライヴでは、実験的な要素が多分にこめられているのがわかる上に、素直に上手いと思って感心させられてしまう演奏が多かったが(「あまり即興をやらないようにしている」とMCで語っていた)、今日はお互いがお互いの演奏をさぐりつつ(?)静かに進行していく即興演奏。プリペアド奏法だなと思って観てしまえばそんなに目新しくも感じない(例をあげられるほどいろいろ知っているわけではないが)。やはり数年前に休止した企画の再現という印象を受けたことは否めない。でもライヴでこうやって小さな音に耳を澄まして集中して聴いていると、精神が研ぎ澄まされていくようで独特の心地よさを感じた。3人で演奏しているときも特にケン山崎のパーカッションには鋭さがあって非常に良かった。

終演後は出演者が差し入れしたお酒などもあるみたいだったけれど、常連さん風の人を含めけっこうたくさんの人がいたので、そそくさと会場をあとにしてしまった。代々木OFF SITEは4月末まで続くけれど、行くのはこれで最後になるだろう。またどこかで再開するときを楽しみにしていよう。

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秋山徹次

秋山徹次ソロCD発売記念ライヴを観に千駄ヶ谷loop lineに行った。この会場に来たのははじめて。秋山徹次のライヴを観るのもたぶんはじめてだと思う。秋山徹次については音響系のギタリストということで名前は前から耳にしていたけれど、ここ最近は知り合いと何度かライヴで対バンしていた。たまたまいつも都合が合わなくて行きそびれてしまっていたのだけれど、それで気になっていたところでこのライヴのチラシを目にし、行ってみることにしたのだ。

どの程度の混雑になるのか事前にはまるで想像がつかなかったのだけれど、会場にたどりついた開演予定時刻10分前ぐらいにはまだ空席が目立つ状態。場内はホワイト・キューブのさっぱりとした空間で、普段はカフェ、ギャラリーとしても営業しているらしい。開演までは小川敦生(美術家)によるDJ。カントリーを中心とした選曲ということだけれど、やはり音響系っぽい感じの変わった曲が多かった。ライヴは30分近く押してはじまったので、DJもけっこうじっくりと聴くことができた。ライヴがはじまる頃までには客席もちょうどいいくらいに埋まっていった。

ライヴの前半はアコースティック・ギターのソロ演奏。変則チューニングを多用し、変わった響きのコードを丁寧につなぎ合わせていったような曲の数々。唄入りの曲もあった。ライヴが進むにつれて曲ごとにかなり大胆にチューニングを変えていたので、あんなにペグを巻いたら弦が切れてしまうのではないかと余計な心配ごとをしながら観ていたのだけれど、案の定チューニング中に4弦を切ってしまう。弦が切れたまま1曲演奏。なんでもツアーで訪れたニュージーランドのギタリストの家には、わざとどれか1本の弦を貼らない状態のギターがたくさんあったとのこと。単にいらない弦をとっぱらって使っているギタリスト、ベーシストはいろいろいるけれど、弦がないことによって共振の具合が違ったりする音響効果をねらってのことなのだそうだ。その後弦を貼って、また曲を演奏したものの、今度は1弦を切ってしまう。どうも1弦のスペアがなかったようで、また新たに弦を貼ることはなく演奏をして前半終了。

後半はエレクトリック・ギターのソロ。ブギをモチーフにした演奏とのこと。歪んだ爆音でブギのリフをえんえんと弾き続ける。決まった楽曲構成のようなものはなく、とはいっても抽象的なノイズを撒き散らすようなスタイルに陥ることもなく、ただひたすら一定のリズムに乗ってえんえんと弾き続ける様子は、サウンド(と秋山徹次本人のルックス)のロックっぽさとはうらはらにミニマリズムを感じさせるものだった。しかしミニマリズムでよくあるような漂白剤をぶっかけたようなしれーっとした淡白さとは無縁。おもしろいけれど、聴いているうちになるほどと納得してしまって、あとはちょっと単調に感じてしまう。でも単調である程度長くやるからこそ意味を持つものだとも思う。

前半も後半も40~50分ぐらいずつの演奏。途中でまた小川敦生のDJもはさんでいたので、ソロライヴとはいえけっこう長めだったのだけれど、なかなか濃密な時間だった。やはり自分がギタリストだから、ギターを使ってあれこれやっているミュージシャンにはとても興味がある。受付でもらったチラシには、もうすぐなくなってしまうOFF SITEでのライヴの告知も入っていた。これもできれば観に行ってみようと思う。

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Farmers Market

ノルウェイのバンド、Farmers Marketのライヴを観に渋谷o-nestに行った。オール・スタンディングかと思ったら椅子が出ていた。前から2番目のなかなか良い席に座ることができてラッキーと思ったけれど、あまりチケットが売れていないのかなと余計な心配も。平日の6時半スタートというちょっと早めの時間のせいもあり、客の出足も鈍い様子。

最初に出演したのは、今回の来日では巻上公一と共演したノルウェイのトーマス・ストレーネン(ドラム、パーカッション)、そしてFarmers Marketのメンバーであるスティアン・カシュテンセン(アコーディオン)とニルス・オーラフ・ヨハンセン(ギター)のトリオ。即興のセッションで30~40分くらい演奏した。トーマス・ストレーネンは最初はブラシを使って小さい音をコソコソと鳴らしていたが、途中から金物のパーカッションなどをまじえたフレーズをループさせ、それにあわせてドラムを叩くなど。スティアンはMIDIアコーディオンで前半はわりとメロディアスな演奏が中心。ニルスはMIDIピックアップをとりつけたギター、スタンドに括りつけられたネックだけのギターのようなおもちゃっぽい楽器(弦が張られているのではなく、指板のフレット間がボタンになっている)を駆使し、さらにはエフェクト用の機材やiBookを使ってさまざまな音色を出している。その場でドラムのパターンに合わせて自身の音をループさせたりもしていたし、味のある歌声も披露。前半はニルスの活躍が目立っていた。途中スティアンのMCをはさんだあとはピコピコした音を発したりして混線する電話で会話をしているような演奏。「モシモシ~」とか「タスケテ~」とかスティアンの日本語をまじえたヴォイス・パフォーマンスに会場は大受け。かと思いきや途中から教会音楽のようになったり。一見ゆるい即興演奏なのに、やることなすこと芸が細かくて、この人たちの頭の中はいったいどうなっているんだろう! という感じだった。

次は素+おいかどいちろう。素を観るのははじめてだが、HONZI(ヴァイオリン)がいるのでとても楽しみだった。バンドのセッティングの間は、ステージの照明が暗くなっている状態のまま、おいかどいちろうが扇子などを使った日本舞踊っぽい踊り。そして客電が暗くなるやいなやHONZIのヴァイオリンが後ろから聞こえてきて、客席を通って素のメンバーが登場。ヴォーカルの中ムラサトコ→は太鼓を叩きながら、変化に富み度胸の据わった唄声を聞かせる。スパン子は最初登場するときは小さいアコーディオンを弾いていたが、その後ステージではキーボード(ピアノの音色)を演奏。そしておいかどいちろうは今度は獅子舞をかぶって登場。獅子舞を脱いだあと頭を覆っていた布をとると、頭のてっぺん部分だけ丸く剃っていてまさに河童の風情。そして顔の表情をひんまげたりしてすさまじい形相を見せるなどパントマイム的なパフォーマンス。その後は鯉のぼりをかぶったり、その中から出てきたら今度は巨大なおかめの面をつけていたり、始終飽きさせることのないパフォーマンスで客席からは感嘆の声があがっていた。おいかどいちろうのインパクトがすごすぎて、素の演奏のほうは後半ちょっとかすんでしまったけれど、ジプシー風のエキゾチックな要素から和風の湿った雰囲気まで混在する音楽性に、中ムラサトコ→のヴォーカル・パフォーマンスも個性的で非常におもしろいバンドだった。HONZIのヴァイオリンもフリーキーにはじけまくっていてすばらしい。実質20分くらいの演奏だったので、またの機会にじっくり観てみたい。

そして最後に3年連続の来日公演となるFarmers Market。今年は「愛・地球博」でも演奏したらしい。というか、たぶん今回はそっちがメインの来日目的。去年の来日公演を1回だけ観ているけれど、ライヴをやるたびにセットが違うという評判で、去年は3回の公演中同じ曲は一切やらないという話だった。ライヴ前には「セットリストなんてありませんから聞いてみたい曲があればリクエストしてみてください。こういう曲と言って説明すればその場で作曲して演奏しますから。」という(ライヴ主催者の?)アナウンス。

Farmers Marketのメンバーはスティアン・カシュテンセン(アコーディオン、ギター、カヴァルというブルガリアの木管楽器、ペダル・スティール)、ニルス・オーラフ・ヨハンセン(ギター)、トリフォン・トリフォノフ(サックス)、フィン・グットォルムセン(ベース)、ヤール・ヴェスペシュタ(ドラム)の5人。最初から超高速の変拍子の曲でとばしまくり。複雑な曲をどんどんメドレーで続けていって演奏は途切れることがない。特に最初のほうではテクニカルな難しそうな曲を立て続けにやっていたが、だんだんゆるいノリになってきて、ビートルズの曲のメロディなどが混じったりも。明確に誰かが合図したりして展開を変えているようにも見えないので本当に不思議。すさまじい演奏が40分ぐらい続いたあといったん一区切り。

その後はムード音楽風の楽しいメロディーの曲がはじまり、それこそ「愛・地球博」などで家族連れがなごんで聞いていそうな雰囲気。といっても演奏は超高速でめまぐるしい。それがひと段落したら、スティアンはアコーディオンからギターに持ち換えて音数の少ない静かな演奏へ。アメリカン・フォークっぽい雰囲気の演奏でニルスが裏声交じりのかわいくて渋い歌声を披露。そのうちビッグ・バンドのジャズ風の演奏(たぶん有名なスタンダード・ナンバー)に移行していった。

その次はブルガリア人のサックス奏者トリフォン・トリフォノフをフィーチャーして東欧のブラスバンド風の演奏。最初のうち伴奏はほとんどスティアンのアコーディオンのみで残りのメンバーは一休み。しかしそのうち他のメンバーも演奏に加わって盛り上がっていき、いろいろな曲をメドレーで連ねながら怒涛の演奏が続く。その手の音楽好きにはたまらないパートだった。

また一区切りついたあとはインド音楽風のリズムではじまった。ドラムのヤールは特に民族音楽のパーカッションなどを使っているわけではないのだが、見事なスティック裁きでタブラを高速連打しているのと似たような雰囲気のリズムパターンを叩き出している。それにあわせるスティアンの(インド音楽でよくあるような)ヴォイス・パフォーマンスも見事。メンバーがみんな演奏に加わってからはわりとゆるいリズムで、でもやはりインドかアジアあたりの音楽を彷彿とさせるようなエキゾチックなメロディの曲に移行。スティアンのワウペダル使いがいい感じ。そのうちまた東欧風のメロディになったり、さらにギターのカッティング主体のファンクっぽい演奏になったり、ジャズっぽいサックス・ソロがフィーチャーされたりいろいろ。

次の一区切りの後はスティアンがペダル・スティールを演奏してアメリカのカントリー風ののどかな展開に。そのうちスティアンがペダル・スティールを持ち上げて傾け、ボトルネック・バーを転がしてスライドさせたのをちょうど良い音程のところでぴたっと止めると観客は大喝采。ニルスは今日の最初のセッションでも使用していたスタンドに括りつけられたネックだけのギターのようなおもちゃから出すほんわかした音をループさせつつ、渋い歌声&ギターも演奏。後ろではベースのフィンが一休みしてタバコを吸っていて、サックスのトリフォンが灰皿を差し出したり(もしかしたらこの区切り内の出来事ではなかったかも)。

ここで本編終了。観客の拍手、声援に応えてすぐにアンコール。ジャズ/ファンク風のグルーヴ感あふれる演奏ではじまる。うーむおしゃれだなぁと思いきや、いつのまにか超高速&変拍子の怒涛の演奏に移行していく。すさまじい激しい演奏に圧倒され、客の盛り上がりもいよいよ最高潮、というところでぱたっと演奏が終了。あのめまぐるしい演奏のなかでいつのまに終了の合図をしているのか本当に不思議。すごかった。その後も客の拍手がやまずもう一回アンコール。今度はわりとゆるい雰囲気で北欧(?)のフォークソング調の曲を演奏し、ライヴが終了した。全部で1時間半超の演奏。じっくり堪能できて大満足だった。

去年観たときより観客のノリも良くて、後ろのほうから時折声援が飛んできていたけれど、振り向いたら立ち見の人もいっぱい。さすがにリクエストをする人はいなかった(今回は特にMCでそういう話題をふってきたりすることもなかったので)。途中スティアンがアコーディオンの音を拾っているのとは別のマイクを使おうとしたらオンになっていないときがあって、PA何やってるんだーと思ったけれど、ステージが見えてなかったのだろう。だとしてもそれはちょっとないよなという出来事だけれども。

会場では学生時代の音楽サークルの先輩の石田さんにばったりお会いした。たぶん十数年会っていないのだけれど、なんとなくそうじゃないかと思っていたら、終演後に石田さんから話しかけてくださった。石田さんは今回のFarmers Marketの東京公演は3回とも行ったのだそうだ。羨ましい。

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Chrome Green

4月9日(土)はわたしがギターを弾いているChrome Greenの一年ぶりのライヴでした(東高円寺Los Angels Club)。ご来場いただいたみなさま、どうもありがとうございます。去年も同会場でライヴをやったのですが、あとで客席で録音したテープを聴いたらちょっと自分の音が小さめだったので、今回はなるべく爆音で! と思っていました。しかしリハーサルでPAのかたに音が大きいと言われ、わたしも少しレベルを下げたのですが、それ以上にヴォーカルの小川さんがギターの音を下げてしまっていて、かなりアンバランスな状態になってしまっていた様子。

演奏はまずまず良かったかなと(ライヴの主催者には曲は良いけれど演奏はまだまだと言われたらしいけれど)。でもところどころ頭の中が真っ白になってしまうところもあって、最後の曲ではいきなり出だしで全然違うキーで弾き始めてしまってあせりました。今回初披露の新曲が2曲あり、そのあたりはまだちょっと熟成が足りないようで単調になってしまったかも。最近の曲のほうがいかにもロックな感じ(?)でわたしは気に入っているのですが、2曲目にやった新曲が良かったという人もいれば、あとのほうでやった昔の曲(最後の曲はけっこう長くてくどい!)が良かったという人も。人それぞれの感想を楽しませていただきました。でも次回のライヴでは最後にやった2曲はやらないので新曲をなんとかしないと。

ライヴ後、客席で録音したものと、PAで録音してもらったものと両方聴いたけれど、わたしの音はPAからはほとんど出していなかった様子。やはりレベルが大きすぎたか? 客席で録音したテープではそんなに極端にバランスは悪くないけれど(まぁでも小川さんの音は小さい)、わたしのギターの音はちょっとこもった感じ。なるべくPAから出してもらうようにしたほうがキレイな出音になるという、ある意味当然なことか。しかし今までの経験上そう思って音を絞るとそれなりのレベルでしか出してもらえないことが多いので難しい。次回のライヴではリハーサルで出音もしっかりチェックするようにしなくてはと思う次第です。

他の出演バンドのなかでは、The LOYDというギター/ベース/ドラムの三人組インストゥルメンタルのバンドが良かったです。リハーサルのときはよくあるポストロックっぽい感じかなと思ったけれど、ライヴではもっと幅の広い音楽性が伺えました。個々のプレイヤーがそれぞれに良くて、ある意味そんなにアンサンブルを重視していなさそうなところにおもしろさを感じました。最後に出演したmidoriyamaはギターソロのインストゥルメンタル。キャンドルの炎をゆらめかせながら少ない音数で雰囲気たっぷりの演奏をしていたのですが、このライヴハウス、併設の練習スタジオの音が思いきり漏れてくるのはなんとかならないものか?

次回のChrome Greenのライヴは2005年4月24日(日)秋葉原(岩本町)PAGODAです。出演時刻は7時半ごろ。料金は前売り/当日の区別なく1,500+ドリンク。どなたでもどうぞお気軽にご来場ください。このblog、わたしの知り合い以外の人にどれぐらい読まれているかよくわからないので一応書いておきますが、わりとキャッチーでメロディアスなロックバンドです。ふだんのこのblogの内容からするとけっこう意外な音楽性かもしれません。

#自分のライヴの話となるとなんだかいつもの文体では書きづらくて「ですます調」になってしまいました。

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栗原ミチオ

栗原ミチオ「Sunset Notes」ソロCD発売記念ライヴを観に吉祥寺のMANDA-LA2に行った。栗原ミチオはGhost、The Starsなどのバンドのギタリスト。Damon & Naomiのサポートでも知られている。ソロアルバムのリリースははじめて。アルバムは3月中に購入し、最近は毎日聴いている。最初聞いたときは思いのほか爽やかな感じがしてちょっと意外だったのだけれど、聴いているうちにだんだん良くなってきた。

今日のライヴのバックのメンバーは中村宗一郎(ギター)、寺西千秋(キーボード)、亀川千代(ベース)、柴田一郎(ドラム)。寺西千秋だけはアルバムのクレジットに見当たらない。メンバーがステージに揃うと、栗原ミチオ、中村宗一郎、亀川千代の弦楽器奏者3人が全員SGのギター/ベースなのがなんだかおもしろい。

ライヴはアルバムの曲順と同じく、一曲目が「夕暮れのジャイロ」ではじまった。アルバムのアレンジに忠実だけれど、やはりライヴで聴くほうがダイナミック。次の「夢見るモグラ」はアルバムにはないキーボードのイントロからはじまった。その後も随所にアルバム未収録曲をおりまぜつつも、それ以外はアルバムの曲順どおりに演奏していった。「北北西の風・風力3のワルツ」の前にゲストヴォーカルの朝生愛を紹介(栗原ミチオがステージでMCをしているところを観るのははじめてだ)。栗原ミチオは指弾きで慎重に和音を奏でる。あくまでヴォーカルを生かすバッキングのような演奏。次も朝生愛のヴォーカルで「Orange Hour Circle」。この曲がソロ・アルバムに入っていないのは残念なのだけれど、さすがに去年リリースされたThe Starsの現在のところの最新アルバム "will" の収録曲だからはずしたのかもしれない。朝生愛も自身のライヴでこの曲を唄っていたから、そのときとそんなに変わらない雰囲気。身をつまされるような繊細なギターの音色が心に沁みる。すごく大好きな曲。

そして「次の曲は G線上のペンデュラム~最後のヒグラシ。ちょっと長いです。」というMC。栗原ミチオはこのときだけGibsonのSGではなくてGrecoのカスタムのSGを使用。静かにつまびくギターからはじまり、中盤ではE-Bowで持続する音が次々と表情を変えていく栗原ミチオのおなじみのスタイル。そのままメドレーで「ヒグラシのカノン」へ続く。アルバムでは「 G線上のペンデュラム~最後のヒグラシ」の余韻といった感じのおとなしいトラックだけれど、どんどんドラマチックに盛り上がっていった。再びGibsonのSGに持ち換えた次の「ロシアン・カウボーイ」では栗原ミチオのギターが炸裂。しばらく耽美的な曲が続いたあとの火を噴くかのような激しい演奏に圧倒された。

それから石原洋のゲストヴォーカルで2曲。最初はWhite Heavenの「OUT THERE」。The Starsでも演奏されたことがある曲だけれど、それよりも石原洋がリラックスして唄っていた感じがする。ちょっとけだるい雰囲気。そして次は一転してアップテンポで明るいはじけた演奏。なんとフィル・マンザネラの「BIG DAY」のカヴァー。これは意外だった。栗原ミチオとフィル・マンザネラ、あまりイメージが結びつかないけれど、もちろん栗原ミチオが選曲したのだろう。ソロアルバムをつくるにあたって、フィル・マンザネラを多少なりとも意識したのだとしたら、わたしが最初に聴いたときに思った爽やかな印象というのも合点がいく気がする。もちろん爽やかなんて言葉で片付けられるような単純なものではないのだけれども。フィル・マンザネラのアルバムがそうであるように、きっちりプロデュースされた、ある意味お行儀のいいアルバムだという印象は少なくともある。醒めた言いかたをすればそうなるけれど、でもわたしはフィル・マンザネラの大ファンなのだ。ソロアルバムもロキシー・ミュージックのアルバムもクワイエット・サンのアルバムもひととおり持っている。なので、このカヴァーはとても嬉しかった。

その次はまた朝生愛のヴォーカルで「風の12方位」。女性ヴォーカルだとやはりThe Starsとは全然違う優しい雰囲気。でも途中のギターソロはすさまじかった。

それから律儀に「敬称は略させていただきます。」と前置きしてバックのメンバーの紹介。アルバムどおりの曲順で残りはあと2曲。「老人と空」はアルペジオと和音を複雑に組み合わせた繊細な指弾きで美しい旋律ではじまり中盤はE-bowを使った演奏。最後の「勇気のカケラ」は激しく盛り上がって、最後は音の洪水のようだった。アルバムみたいにプツっと終わることはなく、いつまでも余韻を残して漂っていた。

それからいったん退場したメンバーがアンコールに応えて再び登場。今回のライヴ用の特別編成のため曲がないとのこと。「一曲目をもう一回やってもいいですか?」というMC。もちろん悪いなんてことあるわけなくて拍手が沸きおこる。栗原ミチオが「本当にいいですか?」と嬉しそう。本編の途中でもまさかこんなに話すとはと思うぐらいMCをしていたけれど、終始穏やかで丁寧な物腰だった(丁寧すぎて客に受けていたりも)。そして「夕暮れのジャイロ」をもう1回。最初に演奏したときよりも激しい調子で、最後思い残すことがないように、という感じの気迫が伝わってきた。

これでライヴ終了。大部分The Starsのメンバーとはいえ、今回の編成のライヴは今後そうそう観られるものではないだろう。まさに栗原ミチオのギターを浴びたという感触、そしてバックのメンバーの演奏も良くて、本当に一生もののすばらしいライヴだった。

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瀧口修造:夢の漂流物

「瀧口修造:夢の漂流物 同時代・前衛美術家たちの贈物 1950s~1970s」展を世田谷美術館に観にいった。最初の大きな扇型の展示室に瀧口手に自身の手によるデカルコマニーの作品が展示されている。それも壁面の低いところから高いところまでものすごくたくさん。カードのような小さい一つ一つの作品はそれぞれに味わいがあるけれども、ちょっと離れたところから全体を見渡しても圧巻だった。

その後は瀧口修造がコレクションしていた同時代のアーティストの作品が中心。コレクションは小品が主だけれど、著名な美術家の作品がずらり。赤瀬川原平、中西夏之、荒川修作などなど。加納光於のボックス・アートがとても気に入った。大きな絵画作品しか知らなかったけれどこのようなオブジェ作品も作っていたとは知らなかった。岡崎和郎の「電球」も素敵。そうした作品のほとんどは富山県立近代美術館の所蔵品のようだ。富山県立近代美術館と言えば大浦信行の天皇をコラージュした版画作品をめぐる問題をすぐ思い浮かべてしまうが、きっとすばらしい作品をたくさん収蔵している美術館なのだろうなと思う。いつか行ってみたい。

他には瀧口修造が執筆している雑誌や、関係した展覧会のポスターなど。あと他の作家のコラボレーション作品も。特に大きな字で印刷された瀧口修造の詩にミロの抽象的でユーモラスな絵が組み合わさった屏風状の絵本が良かった。最後の展示室にはデュシャンがらみの作品がたくさん。こないだの横浜美術館のデュシャン展にもあったグリーン・ボックスはもっと中身が見えるように展示されていたし、小さいサイズでトランク状に収納できるようになっているマルティプルの大ガラス、マン・レイが撮影したローズ・セラヴィの肖像写真もあった。あと瀧口修造自身の手によるRrose Selavyの看板のような作品、見る角度によってデュシャンのポートレートになったりRrose Selavyと書かれた文字になったりする作品も。

数年前に松涛美術館で開催された瀧口修造展もすばらしかったけれど、今回はまた違った切り口であますことのない魅力が伝わってくる展示で大満足だった。会期終了間際にわざわざ会社を午前半休して行った甲斐があった。カタログは残念ながら売り切れ。まぁ、それも無理もない、本当に良い展覧会だった。

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ベナレス・時間の狭間で

仕事の合間にギャラリーめぐり。まずはタグチ・ファイン・アーツで陳若冰「光のなかへ」展。中国の作家らしい。アクリル絵の具による抽象絵画作品が数点。べたっと塗られた色の中に四角く別の色が塗ってある(あるいはマスキングして四角く下の色を残している)ようなスタイルはロスコの絵画を思い出させるけれど、ロスコのような幻想的で観ていてなごむような温かみのある色合いではないし、輪郭も多少にじんだりはしていてももっとはっきりしている。だいたい中間色が主体でぱっと見はそんなに強烈な色合いではないのだけれど、微妙に蛍光色がまざっていたりて、しばらくながめていたらちょっと目がクラクラしてきた。中国の作家らしい土着性みたいなものを表に出すことなく、でも西欧的なものとはどこか違った雰囲気を感じさせる作品だった。お隣のハヤカワ・マサタカ・ギャラリーは閉廊中。

それから隅田川沿いのギャラリーが集まっている倉庫まで出かけて、小山登美雄ギャラリーでフランツ・アッカーマン展を観た。すごくカッコいいグラフィック。展示されている絵画作品もカッコいいけれど、ギャラリーの壁にも簡略化された地図とか建物のシルエットみたいな線がペイントされていて、ギャラリー全体が一つのインスタレーションになっている。このギャラリーの近所で撮ったと思われる橋の欄干や鉄管が汲まれた工事現場のなどの写真も、グラフィックと同じ雰囲気をかもし出すような線のイメージがうまくとらえられていて、なるほどといった感じ。

お隣のタカ・イシイ・ギャラリーではディーン・サメシマの「Young Men At Play」展。裸体の男性がギターを弾いていたりスポーツをしている写真を、新聞の写真を拡大したような荒いドットのプリントに仕上げた作品がたくさん。下のProject Roomは、ギャラリーのコレクション展のようで、たくさんの作家の小品がいろいろと並んでいた。

最後にギャラリー・マキに寄った。ギャラリー・マキはこの界隈に現代美術のギャラリーがたくさん移転してくるよりずっと前からある隅田川沿いのマンションの一室のギャラリー。十字和子写真展「Time Stands Still ベナレス・時間の狭間で」が開催されていた。DMにも使われているガンジス河の対岸の廃船を撮影した写真はゆったりとしたインドの時間の流れや現地の人の生死感が宿っているかのよう。ヴィジュアルとしてもとても素敵な写真だけれど、インドにはこのようなすごい景色がごろごろあるんだろうなという気もする。むしろそれ以外の、インドの人たちのポートレートのほうがもっとすごかった。アジアやアフリカに行って現地の人の撮った写真なんて今までいくらでも観てきたけれど、被写体となっている人たちがとても素敵で魅力的に見えた。十字さんもいらして、お茶をお入れしましょうと声をかけてくださったのだけれど、さすがに仕事の合間で長居をするわけにもいかないので、そそくさと帰ってしまった。

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