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向井千惠+水晶の舟 / 陰猟腐厭

陰猟腐厭のライヴを観に横浜club24に行った。陰猟腐厭(いんりょうふえん)は、先日イメージフォーラム・フェスティバルで、万城目さんの映像作品の上映のときにギターを弾いていた増田直行さんが参加しているバンド。増田直行さんとはじめてお会いしたのはパーソナルフォーカス(8ミリフィルムによる3分以内の映像作品を無審査ですべて上映する福岡フィルム・メーカーズ・フィールドによる企画)の上映会。増田さんはこの企画にいままでに2回作品を出品されている。そのときにギタリストであることも伺っていたのだけれど、増田さんの演奏を観たのはこないだのイメージフォーラム・フェスティバルがはじめてだった。

会場にたどりついたときは2番目の伽藍のセッティング中だった。伽藍はギターとヴァイオリンの二人組。両者ともエフェクトをたっぷりかけてぼわーっとした持続音をえんえんと出し続ける。ギターの人はナイフのようなもので弦をこするように音を出す奏法が中心。2人ともテンション高く盛り上がったりというような感情的な展開は廃して、慎重に気持ちの良いサウンドを選びながら鳴らしているような感じだった。映像などと一緒だったらいいような気がするけれど、これだけだとちょっと単調でつかみどころに欠けるような気がしなくもない。

次は陰猟腐厭。増田直行(ギター)、大山正道(ギター)、原田淳(ドラム)の3人によるインプロヴィゼーション。原田淳のドラムは、最初のうちはちょっとつまづくような余分な拍を合間に入れた変拍子が中心。後半にいくに連れて拍子の感覚や一定のスピードといったものをなくしたフリーな要素が増えていった。大山正道のギターは効果音、電子音風の変わった音を出していて、全然ギターっぽい奏法はしない(普段はシンセサイザーを弾いているらしい)。増田さんのほうは逆にギターらしい演奏。とはいえ拍子の定まらない自由な即興で、メロディやリズムにはとらわれない。まったくキャラクターの違う2本のギター、そしてドラムの組み合わせはアンサンブルのようなものを追求することもなく、ひたすら各自の音をそれぞれに出し続けているような感じだ。あらかじめ決まった構成やキメのようなものがあるようでもなく、ちょっとメリハリに欠ける感じはしたけれど、いかにも予定調和的なインプロヴィゼーションとはまた違った魅力が感じられる演奏だった。

次は水晶の舟。紅ぴらこ(ギター/ヴォーカル)、影男(ギター/ヴォーカル)の2人組。熱心にライヴ活動をしているようでチラシをよく見かけるが、ライヴを観るのは初めて(影男の演奏は去年Perspective Emotionで観ている)。バンド名はドアーズの曲「Crystal Ship」の邦題からとったのだろうと思っていたら、紅ぴらこが水晶などを売っている店で働いていたからというインタヴューを読んだことがある。それでもドアーズが大好きなわたしとしてはどんなバンドなのだろうと気になっていた。演奏は二人ともエフェクターをたっぷりかけた轟音ギター。club24の広いステージ、高い天井を埋め尽くすようなスケールの大きさで迫ってくるサウンドだった。この前に出演した伽藍、陰猟腐厭ともあまりテンションの高さとか陶酔感を重視しない即興なのに対して、なんだかスカっとするぐらいの思い切りのよい演奏。最後のほうは2人のパフォーマンスの勢いを加速するかのように照明が激しく点滅。演奏そのものは最初から最後までそんなに変化もないのだけれど(最初と最後のほうで少しだけ紅ぴらこのヴォイス・パフォーマンスあり)、とてもドラマチックだった。それにしてもclub24は音が良いし照明もゴージャス。もっと小さいスペースで観たらまた全然違う印象だったかもしれない。

最後は向井千惠(+水晶の舟)。最初は胡弓を演奏。といってもメロディを弾くわけではなく、いかにも投げやりに胡弓をぶらぶらと揺らしながら弓をすべらして音を発し、時折ヴォイス・パフォーマンス。しばらくすると胡弓はステージ脇に置き、鎖のようなものにつないだタンバリンを乱暴にひきずりまわしはじめた。それを客席に落とすと、今度は皮のついたタンバリンをたくさんのスティックを持って叩く。それからドラムセットに向かい、やはり両手それぞれにたくさんのスティックを持ってドラムを演奏。このあたりから水晶の舟の二人が参加。向井千惠は最初のほうはわざと投げやりに見せているようなパフォーマンスだったが、シンバルも使ってダイナミックにドラムを叩くうちにだんだんと緊張感をみなぎらせていく。それから後ろの十字に張り巡らされた鉄管をよじ登り、あたりの鉄管を叩き出す。それから今度はバスドラの上へ。シンバルをとりはずして地面に落とし、タムを超えてステージに転がり落ち、それからダンス。客席にも降りて転げまわっていた。最後はまたステージに上がって胡弓を演奏。水晶の舟との共演とはいえ、激しい体当たりのパフォーマンスはまさに向井千惠の独断場で、すさまじいオーラを放っていた。脈絡などというものをほとんど感じさせない予測不能のパフォーマンスは、それぞれの部分だけ取り出してみれば今までにも同じようなことをやっているのを観たことがあるにしても、その瞬間ごとにハラハラさせられた。そしてテクニックに頼ることのない一見投げやりに見える演奏や仕草は、わたしの勝手な思い入れによるところもあるかもしれないけれど、深い絶望や痛みさえも感じさせるものだった。

今日は陰猟腐厭や水晶の舟をはじめて観ることができたのも嬉しかったのだけれど、何より向井千惠が圧倒的。向井千惠のパフォーマンスは何度も観ているけれど、おもに他の人との対等のコラボレーションだったし、今日ほどすさまじいパフォーマンスははじめて観た。本当にすばらしくて感動のあまり涙が出そうだった。

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