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独身者たちの夢

ギタリストの高橋裕さんが企画した「<鉄線>ミーティング-独身者たちの夢-」を観に、Studio 蕨「鉄線」に行った。ここに来たのははじめて。高橋裕さんからのご案内のメールによると「古い木造建築の1Fを改造したスペースで、以前はアンテナ製造~シュークリーム等菓子製造~パチンコ店の従業員の独身寮」だったそうだ。京浜東北線の蕨駅から徒歩10分ぐらいの住宅街の中にある。「日本の高度経済成長期、働き疲れた独身者たちは二段ベッドで何を夢見ていたんだろう?」と考える企画とのこと。

仕事帰りでちょっと開演に遅れてしまったが、受付で配布されたプログラムによると、はじまって2曲目の演奏中だったみたい。最初に出演していたのは桜井真樹子(声明、ヴォーカル)+高橋裕(ギター)デュオ。日本古来のお祭りや歴史を題材にした現代の民謡といった趣。シンプルで味わい深い高橋さんのギター、透き通った桜井真樹子のヴォーカルは一聴して軽やかですがすがしくもあるのだけれど、自身のアイデンティティを探求するかのような文化への深い造詣によって裏打ちされる重みと求心力にはいつものことながら感嘆させられた。

最初演奏がおこなわれていた部屋は元食堂だったらしい15畳ぐらいのスペースだが、その後、元は二段ベッドが2つ置かれていたという小部屋に移り、電気を消した暗闇の中で、桜井真樹子の声明とノイズ合唱団によるヴォイス・パフォーマンス。ヴォイス・パフォーマンスは寝室であることを意識した人のイビキや寝息の擬態的ヴォイスからホーメイまでいろいろ。ドイツのメールス・ジャズ・フェスティバルでは途中入退場禁止で真っ暗闇の中で演奏されるステージがあるらしいのだけれど、それをヒントにしているのかどうかはわからない。暗闇でライヴを聴くというのはそれ自体とても変わっているのだけれど、桟敷状態で狭いところに密集してムンムンした中で聴くという体験がそれに勝っていたように思う。寝苦しい暑い夏の夜を想起させられ、芝居を観る感覚に近いものがあった。

その次は隣の応接室に移動して昭和歌謡コーナー。高橋裕さんが今日の出演者をゲスト・ヴォーカリストに迎えて昭和歌謡の演奏。後半はフレンSの嵯峨治彦(馬頭琴)が演奏に加わった。ヴォーカルは曲ごとに入れ替わっていたが、桜井真樹子が唄った「夢は夜ひらく」が特に心に残った。

それからしばらく休憩。そのあとはまた食堂に戻って元倍音Sの徳久ウィリアム幸太郎率いるノイズ合唱団によるパフォーマンス。メンバーは徳久、畠中、岩崎、五十嵐、菊川の5人。マイクを使って声にもならないようなノイズを発したり、ホーメイや朗読も交えたパフォーマンスをおこなう。桜井真樹子の声明&笛、嵯峨治彦の馬頭琴も加わって、混沌とした雰囲気を生み出していた。最初はメンバーのほとんどは別の部屋に隠れてパフォーマンスしていたのが効果的。いったいどうやって出しているのかわからないような不思議な声によるサウンドが四方八方から迫ってくる様は実にダイナミック。緊張感を伴った音響的なおもしろさもあるのだけれど、むしろ声を使っていることでユーモラスな雰囲気が醸し出されるのが特徴的。前にMANDA-LA2で観たときよりもパフォーマンスとして良く練られていて、期待をはるかに超えるおもしろさだった。

その次は、さきほど真っ暗闇で演奏を聴いた小部屋に移動。嵯峨治彦の馬頭琴ソロが2-3曲。ここまでの嵯峨治彦の高橋裕さんやノイズ合唱団とのコラボレーションでは、あまり思い切り弾いていない感じがしていたのだが、このコーナーでの演奏は見違えるほどすばらしかった。「モンゴルの伝統的な曲です」といったMCも交えて本格的な馬頭琴の演奏を聴くことができたのが実に有意義だった。

最後は食堂に戻ってフレンSの演奏。嵯峨治彦(馬頭琴)、たなかたかこ(ギター他)、横田和子(馬頭琴)の3人組。モンゴルの有名な曲をアレンジした曲は変拍子ばりばり。民族音楽的な素朴さに現代音楽的な要素も感じられるアンサンブルは、親しみやすくもあるけれど聴きごたえがあっておもしろかった。最後は他の出演者も加わり、この企画のフィナーレを飾った。

古い住宅をそのまま生かした会場の雰囲気がとても良く、さらに会場を余すことなく利用して(市村美佐子によるイラストやコラージュの展示もあった)今日の出演者全員が有機的に関わって作り上げていく企画の独自性がすばらしい。普段ライヴを観に行くのとは一味も二味も違った特別な体験をすることができて大いに満足した。

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ヨ・ラ・テンゴ

ヨ・ラ・テンゴの演奏による "Sounds of Science film show" を観に六本木ラフォーレ・ミュージアムに行った。フランスの映像作家であるジャン・パンルヴェが1920-80年代にかけて制作した深海生物の生態を収めた映画をバックにヨ・ラ・テンゴが生演奏するという特別企画。ヨ・ラ・テンゴの通常のライヴは今までの来日時にすでに何度か観ているのだけれど、今回はどうなることやら、事前にあまり情報を入れることもなく当日を迎えた。

六本木のラフォーレ・ミュージアムに来たのははじめて。最寄駅は南北線の六本木一丁目なのだけれど、降りたこともない駅だ。会場の建物もとても立派で、新鮮な気分というか慣れなくて妙な気分というか。

会場のロビーに入ってすぐにLou's Pale Horseのベースの松田さんを発見。「ねおじさんとかめさん見かけたよ」というので、さっそく場内へ。このライヴには数年前に転勤で九州の小倉に行ってしまったねおじさんも観に来ているはずなのだ。その他にも友人がたくさん集結するので、この日が来るのが待ち遠しかった。会場内でねおじさんご一行を探していたら、我々のギターの川田さんを発見したので、ロビーに出てしばらくお話し。川田さんは前日のヨ・ラ・テンゴ渋谷クラブクアトロ公演も観に行っていて、非常に良かったとのこと。ギターのアイラが使っている「ジャズマスターかストラトキャスターが欲しくなった」というのでギター談義で盛り上がる。

場内に戻ると、さっきは会場を一回りしてもみつけることができなかったねおじさん、かめさん、しょうさん、ユキコさんの後ろ姿を発見。そろそろ開演だと思ったので声をかけずに自分が確保した席に座っていたら、かめさんがこちらのほうを振り向いたので、離れたところから手を振ってお互いを認識。

やがてヨ・ラ・テンゴの3人が登場し、上映と演奏がはじまった。演奏はステージ正面、スクリーンの下でおこなわれていたので3人の動きもけっこう目に入ったけれど、映画が予想していた以上にすばらしくて、ずっと映像を注視していた。生演奏と一緒に流れるのだから、もっとイメージ映像っぽいものを想像していたのだけれど、極めて学術的なドキュメンタリー映画だった。スクリーンの左右には字幕用の電光掲示板も設置され、ハイアス、ウニ、タツノオトシゴ、クラゲ、タコ、カエデなどといった海洋生物の生態が詳しく紹介される。それぞれの生物ごとに、10分ぐらいの短編映像作品になっている。てっきりヴィデオ・プロジェクターでの上映かと思っていたのだけれど、ちゃんとフィルムで上映されていた。

海の中の変わった生物のゆったりとした動きはとてもユーモラスで幻想的。最初のハイアスという生物についての白黒の作品は、古そうなフィルムの質感が美しくて見ほれてしまった。後のほうに上映された新しめの作品ほど生々しさが目について、幻想的というよりはヌルヌルしていてなんかいやらしいというかエロティックというか。でもそれはそれでおもしろかった。電光掲示板に出る字幕は全然まともな日本語になっていない。しかし、家内製手工業的に素人が訳したような拙い日本語訳のとぼけっぷりは、生真面目な学術的雰囲気を緩和しているかのようで、それも一興だった。もともとがフランス映画なのでフィルムの中には英語の字幕も出ていて、日本語の字幕と英語の字幕と両方追いながら忙しく観ていた。

そのようなわけでヨ・ラ・テンゴの演奏のほうにはそんなに集中していなかったのだけれど、3人ともいろいろな楽器をとっかえひっかえしつつ、決して映像のBGMに徹することのない彼ららしいサウンドを奏でていたと思う。ドラムが普通に8ビートを刻むようなロックバンドらしい演奏から、サンプラーを使った効果音の味付けまで。最後のほうはギターのフィードバック音で激しく盛り上げていた。

上映&演奏は全部で1時間半強。映像の尺は当然決まっているだろうから、映像なしでアンコールなどもあればいいなと期待していたのだけれど、それはなかった。まぁ、普通のライヴが観たければ他の日にも行くべきだろう。

終演後はねおじさん、ユキコさん、しょうさん、かめさんと四谷のメキシコ料理屋に行った。かめさんの知っているお店だったのだけれど、おいしくて雰囲気も良くて値段もそんなに高くない。久しぶりに集まるメンバーで話も尽きない。それから、Lou's Pale Horseが出演する「ブルーベルベットナイト50回記念パーティー」を観るためにみんなで渋谷の青い部屋に移動。オールナイトのイヴェントだけれど事前の情報では松田さんの出番は11時台だという話。

一番最初は、元レッド・ウォリアーズのギタリスト、木暮武彦のソロだった。一人でギターの音をディレイで重ねながらのインストゥロメンタルの演奏。淡々としていてそんなに特別な工夫に富んだものではなかったけれど、大物ギタリストの意外なパフォーマンスを観ることができて興味深い。20分くらいの演奏。

次はイヴェントの主催者でもある鳥居賀句が率いるLoaded。松田さんはこのバンドでもベースを弾いている。ちょっとがさつだったけれど勢いのある演奏。途中からゲストのPANTAが加わった。こんなに狭い段差もないライヴハウスでPANTAを間近で観ることができてちょっと感激。カッコ良かった。

そして次がLou's Pale Horseの出番だったのだけれど、しょうさんはLoadedの途中で帰り、ユキコさん、かめさん、ねおじさんもLou's Pale Horseを1曲観て帰った。わたしは終電までまだ間があったので最後まで観ていくことにする。Lou's Pale Horseは3月のライヴを最後にギターのウエさんが脱退し、現在はLouさん(ヴォーカル/ギター)、松田さん(ベース)、久保田さん(ドラム)の3人編成。3人になって今までよりも荒削りにロックっぽくなった気がする。Louさんの弾くギターはエレアコだし、ロックといっても全然うるさいサウンドではなく、あくまで唄中心のバンドなのだけれど。ウエさんのギターはツボを押さえた職人的な演奏で、ある意味ポップスっぽい味付けだった。ウエさんが脱退してしまって残念と思っていたけれど、シンプルな3人編成のLou's Pale Horseは、むしろわたしの好みにあっているかもしれない。ただ、そのためにはLouさんにもっとギターをがんばってもらわないと。2曲目か3曲目ぐらいでやったアルペジオの曲ではギターの音が良く聴こえていたけれど、唄いながらのカッティングは、それ1本で上物としてバンドのサウンドを支えるには、まだちょっと心もとない。今後に期待しよう。

幸いLou's Pale Horseを最後まで観ても十分終電に間に合う時間だった。でもセッティングの入れ替えがあって次のバンドがはじまるまでいると危ない。夜中に出演するバンドも観てみたいのがいろいろあったのだけれど、場内はかなり混雑していて、とても一人で夜通し過ごすのは耐えられそうにないので、松田さんにちょっと声をかけて退散した。今日は実はヨ・ラ・テンゴのフィルムショウの前にもいろいろと用事があったので、ものすごい盛りだくさんの長い一日だった。

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カエターノ・ヴェローゾ

カエターノ・ヴェローゾのコンサートを観に東京国際フォーラムに行った。東京国際フォーラムのホールは何度か行ったことがあるけれど、今日の会場ホールAはおそらく今まで入ったことがない。わたしの席は23列目だったけれど、軽くその3倍くらいは後ろに席があるという巨大なホール。すぐ前が通路というなかなか良い席だったのだけれど、ステージはかなり遠く感じた。

バックのメンバーはチェロを中心にギターx2、ベース、ドラム、パーカッション。最初数曲は、クラシカルな演奏をバックに素直に良い曲を美声で唄いあげるまったりした雰囲気に、やばい、眠くなりそう、と思ってしまった。しかし、途中からチェロの人とデュオの演奏になったり、そこにギターの人が加わったりというようなメンバー構成の入れ替えがあり、ゆったりとしつつも穏やかな起伏のある唄と演奏にだんだんと惹きつけられていった。かすかな音量で伸ばし続ける声を微妙にコントロールして振るわせるようにして唄い、そんなふうにして曲が終わっていくときは本当にうっとりするような美しさだった。

バックバンドのギターの人は、一人はアコースティック・ギターでテクニカルな演奏が主体、もう片方の人はほとんどエレクトリック・ギターで、ファンキーなカッティングをするときもあれば、曲調を壊さない程度の控えめな音ではあるがちょっとノイジーな音を持続させたりもしていた。カエターノ自身も、ギターを弾きながらさらっと唄うときもあれば、ギターを弾かずに感情をたっぷりこめて唄うことも。中ほどでカエターノの弾き語りのみで演奏するコーナーがあって、個人的にはそのあたりが一番良かった。再びバックのメンバーが加わってからは、激しい調子で大きな声を張り上げて唄う曲もあれば、ひたすら美しい美声でゆったりと唄いあげる曲もあるといった具合で、最初のうち感じていたようなまったりとした雰囲気は全くなくなっていった。

アンコールの最後の曲ではカエターノが「ウタッテクダサイ」って日本語で呼びかけながら演奏していたけれど、会場内はわりとシーンとしていて、場内で歌っている人の声はかすかにふわっと聴こえる程度。さすがにポルトガルの曲でいきなりウタッテクダサイと言われてもなかなか難しいものが。全体が盛り上がっていればわからなくてもハミングかなにかで適当にあわせたりできたかもしれないけれど、静かだったのでそれもできなくて固まってしまった。中盤でも、唄いながらステージの縁の部分まで出てきてポーズをとったりするような場面があったのだが、クラシカルな高尚な雰囲気のなかでいきなりそれを乱すかのようなアクションに対して、会場のノリとしてついていくことができていない感じがしていた。カエターノは日本の観客のことをどう思ったのだろうと、なんとなく心配になってしまう。

実はわたしはカエターノ・ヴェローゾの音源は70年代初頭ぐらいまでの古いものしか持っていないので、知らない曲が多かった。せめて最新アルバムぐらいは聴いておいたほうがより楽しめたと思う。開演前に周囲から聴こえてくる会話では3日連続で来ているような熱心なファンもたくさんいそうだったが、とにかくキャリアの長い大物のコンサートなだけに、そこまで熱心でもない客がかなり多かっただろう。カエターノの唄は本当にすばらしくて満足したのだけれど、ふだん観にいっているようなライヴの雰囲気とはあまりにも違っていて、なんとなく心から浸ることができないような、よそよそしい気分のままコンサートが終わってしまった。でも、今後そうそう来日してくれることがあるかどうかわからないし、観に行って良かったなと思う。

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JOJO広重+西村卓也

みみのこと、JOJO広重+西村卓也、光束夜が出演するライヴを観に高円寺ペンギンハウスに行った。

たどりついたときにはみみのことの演奏がはじまっていた。こないだのジェリージェフでのライヴはまとまりのある良い演奏だったが、今回はスペースにも余裕があるし、3人とも勢いあまってのめっていくような演奏。ちょっとぎくしゃくしたところもあったけれど、逆にまとまりすぎていないところが魅力的に感じられた。ベースの竹内さんのネックを大きく上下に揺らしながら弾く様子は、以前みみのことでベースを弾いていた西村さんを意識しているようにもみえる。志村さんはスティックを次々に持ちかえて1曲のなかでもどんどん演奏スタイルを変えていく。川口さんのギターももちろん良くて、今日は3人それぞれに目がいくような演奏だったのが良かった。

そして次はJOJO広重+西村卓也。この組み合わせは去年「JOJO広重☆ギター・インプロヴィゼーション10番勝負☆番外編」でも観ているが、それがとてもすばらしかったので今回も期待。去年は10分くらいの短めの区切りで3セットの演奏だったが、今回は30分くらいのセッションで1セットだった。最初のうちは音数少なめで、JOJO広重は不協和音の鋭いカッティング主体。西村卓也はいつもの調子で微妙にリズムをはずしながらのダイナミックなベースラインを奏でる。それが次第に変な音大会になっていき、西村卓也は足でエフェクターのつまみをまわしたり。だんだん混沌とした音の出しあいになり、どちらがどちらの音かわからなくなって混ざっていく。最後のほうは西村卓也が一定のリズムで白玉音符で弾くなかJOJO広重が激しくノイズをまきちらすような展開になっていった。西村卓也は去年のこの組み合わせのデュオのときよりはおとなしめだったような気もする。でも長い1セットの中でいろいろなパターンを聴くことができておもしろかった。

そして最後が光束夜。約2年ぶりのライヴだそうだ。光束夜は数年前に金子寿徳(ギター/ボーカル)、Sachiko(ベース/ヴォーカル 現在OVERHANG PARTY他)、松橋道伸(ドラム 割礼)というメンバーで観たことがあるが、今回は金子寿徳以外のメンバーはミック(ベース/ヴォーカル)と高橋幾郎(ドラム)。個人的には高橋幾郎(現在は北海道在住)のドラムが観られるのが楽しみだった。高橋幾郎のドラムは力強くもあり、壊れてしまいそうなもろさもあり、すさまじい気迫にあふれていて相変わらずすごかった。全体的には高揚感もいま一つで、ちょっとリハーサル不足のようにも感じられたけれど、一音一音ごまかしがなく、無骨にぶつかりあっていく様子には潔さのようなものを感じた。光束夜はスコットランドでおこなわれるLe Weekend festival in UKに出演するために翌日には旅立つとのこと。

物販のところに川口さんがいらっしゃって少しお話。今まで見かけた覚えがないみみのことのLPと、高橋幾郎ソロのCDを買って帰った。

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HEATWAVE

HEATWAVEのライヴを観に渋谷AXに行った。3年ぐらい前のフジ・ロック・フェスティバルでソウル・フラワー・ユニオンのライヴを観たときにゲストでHEATWAVEの山口洋が出演していたのだが、それがかなりカッコ良かった。そんなこともあってHEATWAVEのライヴも一度観てみたいと思っていたのだけれど、今回たまたま友人の北橋さんに誘ってもらって観に行くことになった。それで最新アルバムも聴かせてもらったのだけれど、そうしたらイメージとはだいぶ違う、いかにもJ-POPなゴテゴテしたサウンド。もっとシンプルなロックンロールバンドだと思っていたので意外だった。

会場の入り口でもらったチラシはやけに元ルースターズ関係の人のが多い。と思ったらドラムが池畑潤二なのだそうだ。メンバーは山口洋のギター/ヴォーカルのほかに、ベース、ドラム、キーボードの4人組。なんとなく3人組のイメージがあったのだけれど、つまり最新アルバムから今の4人組になり、音数が多い豪華なサウンドになったらしい。

ライヴがはじまってみると、ダンサブルな曲もあれば渋い曲もあるといった具合。山口洋はアコースティック・ギターを弾くことが多く、キーボードの人がきめ細かなアレンジで活躍していた。キーボードの人は要塞のように大量の機材に囲まれていた。なにしろ正面に置いているエレピらしき鍵盤の上にLine6のディレイ、ワーミーペダルとあともう1つエフェクターを置いているところからして、相当音をいじり倒すのが好きな人であろうことは見てとることができる。横や後ろにもシンセサイザーやらラップトップPCやら機材がびっしり。特に後ろに置いてある大きな木製(?)のキャビネットが気になるけど何なのかよくわからない。ベースの人も曲によってはフレットレス・ベースにカポをつけていたり、かなりエグい音を出している。そして池畑潤二のドラムは破壊的なほどのすさまじさ。

もちろん山口洋もこの濃いメンバーに負けていない。エレアコや、1曲だけ使っていたテレキャスのときはエフェクターを駆使して音をループさせたりもしていた。ただでさえキーボードの人の活躍で音数が多いのに、もうどの音がどこから出ているのかわからなくなってしまうような。でもアコースティック・ギターでは繊細に聴かせる演奏もあり、間奏でハープを吹く曲もあり。また、間奏でえんえんと激しくティンパレスを叩く場面も。何をやっても器用で巧みにばっちり決まっている。唄は、技巧的ではないけれど声そのものの迫力がすごい。全体的にリヴァーブがかった音が多く、音もよく反響する広い会場だったから、個々の演奏内容がどうこうというよりは音全体がかたまりになって体に響いてくるような感じだった。それはそれでいいのだけれど、個人的には山口洋のギターの上手さを堪能したいと思っていたので、どちらかというと音数が少なめの曲のほうが楽しめた。

特に時計は見ていなかったけれど、本編は1時間半ぐらい? 一度ステージを去ってから1回目のアンコールまではけっこう間があった。そして出てきて「ドラム池畑潤二」と叫ぶやいなや演奏したのがルースターズの「テキーラ」。それまで演奏してきたどの曲よりもストレートなロックンロール。客も「テキーラ」って一緒になって叫んでいる人がたくさんいる。

そして2回目のアンコールの1曲目は、わたしにとってはソウル・フラワー・ユニオンの演奏でおなじみの「満月の夕べ」。この曲を聴くことができたのはとても嬉しかった。2回目のアンコールはあともう1曲。客電もすぐ灯いたので会場を出ると、物販のところにセットリストが出ている。ホワイトボードに曲名が書かれた磁石の板(?)が貼られているようなものだったので、きっとスタッフの人が演奏を聴きながらリアルタイムで貼っていったのだろう。これはおもしろい。テキーラのところだけ曲名の板が手書きだった。アルバムが出たタイミングからはずいぶん経っていることもあり、最新アルバムの曲はせいぜい3曲くらい。

北橋さんとセットリストを見ながら、「なんかまだ中のほうやけに盛り上がってるね」と話していたら、演奏が聞こえてきた。なんと3回目のアンコール。慌てて場内に戻って後ろのほうで観る。さっさと帰ってしまわなくて良かった。一番最後は客の盛り上がりも相当なものだった。そんな激しいノリではないのだけれど、熱い声援が飛び交ったりもしていた。決して客層は若くないし、ライヴの最初のうちは軽く体を揺する程度のノリでおとなしく聞いている人がほとんどだった。

初めてのHEATWAVE、イメージしていたのとはだいぶ違っていたけれど、実力もあり個性的なメンバーの演奏は非常に見応えがあった。欲を言えばもう少し各楽器の音をきっちりと聴きたかったのだけれど。終演後は北橋さんと飲み屋へ。北橋さんはHEATWAVEのライヴは3回目なのだそうだけれど、最新アルバムのレコ発のときはアルバムの曲順通りに演奏したのだそうだ。今回のライヴは新旧とりまぜていろいろ演奏していたし、「満月の夕べ」をやったということもあって、初めて観るわたしにとってもかなりいい選曲だったみたい。

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dive

diveのライヴを観に東高円寺Los Angeles Clubに行った。4月にChrome Greenも出演したnatural gift主催のライヴ・イヴェントである。今回でなんと70回目とのこと。

たどりついたときに演奏していたのはThe LOYD。このバンドは4月のライヴでも対バンだったので観ている。そのときよりも3人の演奏がよくまとまっていたと思う。4月のときはアンサンブルはあまり重視していなさそうと書いたのだけれど、全体的に少ない音数で勝負しているのでそう感じただけのような気がする。

そして次がdive。ギター/ヴォーカルx2(男女)、ベース、ドラムの4人組轟音ギターバンド。メンバーは主に学生時代の音楽サークルで一緒だった人たちで、もう10年以上に渡って観続けているバンドなのだけれど、全体的にどんどんシンプルになってきているようだ。唄なしの部分がけっこう長めで、さらにはしばらくドラムの音がなくなる場面も。淡々とした演奏だったが、笹岡さんとmiyouさんとツイン・ヴォーカルが入ると一気に華やいだ雰囲気になる。miyouさんがほとんど一人で唄う曲もあった。個人的には笹岡さんがもっとアグレッシヴにギターソロを弾きまくったりするのも観たいのだけれど、最近はあまりそういう方向性ではないみたい。でも最後の曲で思い切りディレイをかけて弾いていたフワフワしたギターソロはとても気持ち良かった。

次はBelfast。ギター/ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム。グランジっぽいギターバンドで、唄の部分はまずまず普通だけれど、間奏になるとかなり熱い演奏を繰り広げていてカッコ良かった。インパクトで言うとこの次に出演したバンドに負けてしまうのだけれど、アレンジも演奏もしっかりしていて非常に良いバンドだった。

そして最後はGreen Milk from the Planet Orange。ギター/ヴォーカル、ベース、ドラムの3人組。ベースとドラムがブラック・サバスのTシャツを着ている。実際の演奏も60~70年代ハードロック/サイケデリックっぽい相当激しいサウンド。最初のほうの5拍子の曲のときはプログレとも思った。熱い演奏に圧倒されたし、客席もすごい盛り上がっていた。何を唄っているのかまるで聴き取れないし、演奏も勢い重視でかなりブロークン。でもサイケデリックな陶酔感のあるギターのサウンドはなかなかカッコ良かったし、ドラムの人がとても上手くて正確なリズムを叩き出しているので、全体が締まって良く聴こえた。

終演後、diveの笹岡さんとお話し。「今日のライヴはちょっと単調だったかな」と話したら、「気をつけます」とのこと。いや、単調でもこれが最近の方向性なのかもしれないので、一概にそれが悪いとは言えない。ギターの音も良かったし、いつ観ても相変わらずカッコ良いバンドだ。ただ後の2つのバンドがすごく熱いバンドだったので、ちょっと印象が薄れてしまったのも否めない。笹岡さんはこないだPAGODAにChrome Greenのライヴを観に来てくれたのだけれど、メンバーにもChrome Greenすごく良いバンドだよと話してくれていたのが非常に嬉しかった。

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誤解

中野のテルプシコールに17番劇場による公演『誤解』を観にいった。出演者である若尾伊佐子さんに事前にご案内いただいた内容によると、セリフはカミュによる戯曲を別の人が朗読し、それにあわせて演技をするのだという。そう言われると咄嗟にク・ナウカを思い出すけれど、ク・ナウカの方法はまた独特だし、普段はダンスで名を知られている若尾伊佐子さんがどんな演技をするのかも想像がつかなかった。

会場で配布されたパンフレットによると、このカミュの戯曲作品「誤解」のストーリーは、小説「異邦人」の中の新聞の切り抜き記事として登場しているらしい。「異邦人」は昔読んだけれど、情けないことにその新聞記事については記憶にない。ステージ左右には、アンティーク調のたくさんの椅子が積み重なるようにワイヤーで吊られて、ところどころ赤い花が飾られている。ステージ奥のほうには2つずつ重ねて置かれた椅子が数脚、蝋燭が置かれた台が2つ。

正面に「一幕 誤解・拒絶」だったか、そのような文字がプロジェクターで投影され、満員の場内が暗転になることもなく静かに公演がはじまった。セリフを朗読する人(丸健介)は客が入ってくる入り口から登場し、舞台上手側の手前のほうに座る。マルタ役の細田麻央、その母親役の若尾伊佐子が舞台の奥から登場。セリフの朗読はおそらく日本語訳された戯曲の文章そのまま。あまり感情をこめることなく、淡々と読み進む。役者はパントマイムのように沈黙したまま演技をするが、ときどき朗読の人が沈黙してその部分のセリフを言ったり、また朗読の人と役者が同時に同じセリフを言ったりすることもあった。

若尾伊佐子の動きはやはりどことなくダンスっぽい。静止しているときも微妙な腕の形やたたずまいが緊張感を保ち続けている。年老いた母親ということで、そんなに大きい派手な動きで見せるような役柄でもなく、ゆったりと優雅さを感じさせるやわらかい動き。たまに発する言葉もはかなげで良い。

細田麻央も舞踏家だけれど、17番劇場の公演には今までにも出演しているようで、さすがに役者として慣れている様子。心のうちに激しい気性を秘めたマルタ役は感情移入がしやすいということもありそうだ。奥のほうに重ねられた椅子を舞台上にランダムに並べたり、その椅子を倒していったり、大きな音をたてて足を踏み鳴らしたり、象徴的で奔放な動きは静かな芝居のなかにメリハリをつけていた。

ずっと昔に家出をし、外国を放浪して故郷に戻ってきたマルタの弟、ジャン役(愛海鏡馬)と、その妻のマリア役(長谷川葉月)の二人は特に舞踏やダンス畑の人ではないようだ。随所にダンス的な要素のある振り付けがあったものの、長いセリフも自身で語る場面が多く、普通に役者らしい演技をしていた。しかし若尾伊佐子、細田麻央に比べるとその分生々しい。マリア役は特に感情的なセリフを言う場面が多く、決して演技そのものに問題があったわけではないが、芝居全体のなかではどうしても浮いた感じがしてしまう。ダンサーもいて役者もいて朗読する人もいて、スタイルの違ういろいろなものが一つの舞台上でまざっているところがポイントなのだろうが、やはりどうしても若尾伊佐子、細田麻央の存在のほうがより傑出して観えてしまう。とはいえあまり観たことのないスタイルの演劇公演で非常に新鮮だった。

マリアとその母親は訪れた男性が自分の兄、息子であることに気がつかないまま殺してしまう。母親はそのことを苦にして死んでしまうのだが、そのときの若尾伊佐子がすばらしかった。淡々とした朗読をバックに、その仕草とたたずまいによって深い絶望や思索を表現。そして最後2分くらいは思いっきりダンス。そこまでの抑制された動きとの対比もあり、死というものが解放のようなものと穏やかに結びついていく様子は悲しくもあり、共感もし、非常に感動させられた。若尾伊佐子のダンスのあと、舞台は初めて暗転。再び明るくなったときには若尾伊佐子は舞台上から消えている。それからマリアがマルタを訪ねてくるシーンがあり、最後は細田麻央のダンス。ステージ上で水をかぶり、靴とタイツを脱ぎ捨て、激しく踊りまくる細田麻央は尋常でなくすごかった。今までに観た細田麻央の舞踏は、たとえば昨年末の除夜舞など顔を白塗りにしているのにもかかわらず可愛らしいという印象だったのだけれど、今回は演技の部分でも大きな目を見開いてすさまじい形相を見せるような場面が多く、狂気を感じさせる熱演だった。

終演後、加藤さん、(陰猟腐厭の)増田さんを発見。そして若尾さんともお話し。「自分でセリフを言うこともなく、朗読にあわせて気持ちを高めていかなくてはならないのが難しい」とおっしゃっていた。本当に派手な動作によって表現できない部分が多い役柄で大変だっただろうけれど、そういう役柄だからこそ、ダンスの素養が生かされていたと思う。若尾さんの実際の年齢よりもずっと歳上の役だけれど、やつれた感じもよく出ていたし、申し分のない演技だった。増田さんが細田麻央さんに話しかけていたので、わたしも便乗して細田さんに感想をお伝えした。細田さんは「わたしは役者ではないので」と謙遜されていたけれど、並の役者さんよりもずっとすばらしい演技だった。

その後は加藤さんと増田さんとテルプシコールの並びにある飲み屋へ。みんなそんなにおなかがすいていなかったということもあるけれど、ビール1杯とお通しだけで食べ物を頼むこともなく閉店まで話し続けた。閉店が11時半だったからよかったけれど、午前までやっているお店だったら終電を逃してしまったかも。

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三上寛 / みみのこと

三上寛とみみのことのライヴを観に西早稲田ジェリージェフに行った。

最初にみみのことが出演。前回ここでみみのことを観たときは、客席から観てギター/ヴォーカルの川口さんが右側、ベースの竹内さんが左側だったけれど、今日は川口さんが左側で演奏していた。真横を向いているベースアンプからの音がちょっと聞こえにくい。ドラムの志村さんも狭い窮屈なスペースでちょっとおとなしめ。川口さんのギター/ヴォーカルはとても良かった(いつも良いのだけれど)。川口さんのギターが曲をリードしていて、リズム隊がそれについていく。みみのことはそれでいいと思うけれど、やはり西村さんがやめてしまったのが残念という気持ちを未だに払拭できないのも事実。でもベースが替わってから観るのが3度目のみみのこと、全体的なメリハリのつけかたが自然になってきて、迫力で圧倒されるだけではなく、じっくり聴いていても良い雰囲気になってきた。

ジェリージェフは演奏するスペースが入り口すぐのところにあって、前の早稲田通りを通りかかる人がみな店内を見ていく。しばらく足をとめて覗き込む人も少なくない。ガラス張りの扉と窓があるだけで防音らしきことはなにもしていないから、音は外にまる聞こえだろう。かなり若そうな青年(高校生?)がしばらく店の外にいて、一度は去ったけれどまた戻ってきた。ライヴを観ていくのには何か問題があるのか、外でお店の人といろいろ話をして、みみのことのCDを見せてもらったりしていた。

みみのことの演奏は45分くらい。ドラムセットが片付けられて三上寛のセッティング。そのとき、なんとその青年がまた戻ってきたのだ(お金をおろすとかしていたのかな)。もちろん三上寛のライヴは観て損なことがあるはずない。若いのに(若いからこそ?)いろいろと興味を持って、臆せずに行動する様子がなんともまばゆい。わたしなんて高校とか大学時代はものすごく醒めていて、自分の趣味の範囲みたいなものをある程度決めていて、今みたいにたくさんライヴに行くこともなかったし(今は行きすぎだとも思うけれど)、バンドをやっていても音楽を聴いて感動するなんてこととは無縁の人間だったような気が。まぁ今より全然お金がなかったという物理的な問題もあるけれど。

三上寛はいつものGretchのエレアコではなくて、Gibsonのアコースティック・ギターを使用。スタンドにセットされたマイクで音を拾う。最初のうち音が小さいなと思って聴いていたらお店の人がミキサーを調整。しばらくはいい感じだったけれど、そのうちかすかにマイクがハウりはじめた。ヴォーカルのマイクがハウっているのか、ギターの音を拾うマイクがハウっているのか良くわからない。三上寛はいつもより声にならないようなシャウトをする場面も多く、その声と聴こえるか聴こえないかぐらいのかすかなハウリングの音が混ざって不思議な感じだった。でも三上寛は、やはり声がとにかくすごいから、微妙なハウリングの音でもちょっと耳障りになってきた。志村さんが前に出ていらっしゃっていろいろ調整して少し良くなったのだけれど、最後のほうでもときどきハウリングの音がかすかに聴こえていた。そんなこんなで多少集中力がそがれたけれど、やはり三上寛はいつもどおりすごかった。今回は特にあの声にならないような叫び声。三上寛のアヴァンギャルドとしかいいようのないあのギターの演奏も好きなのだけれど、アコースティック・ギターの音だとちょっとやさしい感じだった。アンコールはなし。

例の青年はライヴが終わる少し前に会場を出て行った。最初通りかかったときは友達と一緒だったみたいだし、他に用事などがあったのかもしれない。またみみのことか三上寛のライヴであの青年を見かけることがあったら嬉しい。それにしてもみみのことが演奏していたとき、通りかかって中に入らずとも足を止めていた人は本当に多くて、入り口の張り紙を指差したりしていた人もいた。そこでお店に入ってライヴを観ていくというのは確かになかなかできるものではないけれど、みみのことはもっと多くの人に知られてしかるべきバンドだと思う。

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向井千惠+水晶の舟 / 陰猟腐厭

陰猟腐厭のライヴを観に横浜club24に行った。陰猟腐厭(いんりょうふえん)は、先日イメージフォーラム・フェスティバルで、万城目さんの映像作品の上映のときにギターを弾いていた増田直行さんが参加しているバンド。増田直行さんとはじめてお会いしたのはパーソナルフォーカス(8ミリフィルムによる3分以内の映像作品を無審査ですべて上映する福岡フィルム・メーカーズ・フィールドによる企画)の上映会。増田さんはこの企画にいままでに2回作品を出品されている。そのときにギタリストであることも伺っていたのだけれど、増田さんの演奏を観たのはこないだのイメージフォーラム・フェスティバルがはじめてだった。

会場にたどりついたときは2番目の伽藍のセッティング中だった。伽藍はギターとヴァイオリンの二人組。両者ともエフェクトをたっぷりかけてぼわーっとした持続音をえんえんと出し続ける。ギターの人はナイフのようなもので弦をこするように音を出す奏法が中心。2人ともテンション高く盛り上がったりというような感情的な展開は廃して、慎重に気持ちの良いサウンドを選びながら鳴らしているような感じだった。映像などと一緒だったらいいような気がするけれど、これだけだとちょっと単調でつかみどころに欠けるような気がしなくもない。

次は陰猟腐厭。増田直行(ギター)、大山正道(ギター)、原田淳(ドラム)の3人によるインプロヴィゼーション。原田淳のドラムは、最初のうちはちょっとつまづくような余分な拍を合間に入れた変拍子が中心。後半にいくに連れて拍子の感覚や一定のスピードといったものをなくしたフリーな要素が増えていった。大山正道のギターは効果音、電子音風の変わった音を出していて、全然ギターっぽい奏法はしない(普段はシンセサイザーを弾いているらしい)。増田さんのほうは逆にギターらしい演奏。とはいえ拍子の定まらない自由な即興で、メロディやリズムにはとらわれない。まったくキャラクターの違う2本のギター、そしてドラムの組み合わせはアンサンブルのようなものを追求することもなく、ひたすら各自の音をそれぞれに出し続けているような感じだ。あらかじめ決まった構成やキメのようなものがあるようでもなく、ちょっとメリハリに欠ける感じはしたけれど、いかにも予定調和的なインプロヴィゼーションとはまた違った魅力が感じられる演奏だった。

次は水晶の舟。紅ぴらこ(ギター/ヴォーカル)、影男(ギター/ヴォーカル)の2人組。熱心にライヴ活動をしているようでチラシをよく見かけるが、ライヴを観るのは初めて(影男の演奏は去年Perspective Emotionで観ている)。バンド名はドアーズの曲「Crystal Ship」の邦題からとったのだろうと思っていたら、紅ぴらこが水晶などを売っている店で働いていたからというインタヴューを読んだことがある。それでもドアーズが大好きなわたしとしてはどんなバンドなのだろうと気になっていた。演奏は二人ともエフェクターをたっぷりかけた轟音ギター。club24の広いステージ、高い天井を埋め尽くすようなスケールの大きさで迫ってくるサウンドだった。この前に出演した伽藍、陰猟腐厭ともあまりテンションの高さとか陶酔感を重視しない即興なのに対して、なんだかスカっとするぐらいの思い切りのよい演奏。最後のほうは2人のパフォーマンスの勢いを加速するかのように照明が激しく点滅。演奏そのものは最初から最後までそんなに変化もないのだけれど(最初と最後のほうで少しだけ紅ぴらこのヴォイス・パフォーマンスあり)、とてもドラマチックだった。それにしてもclub24は音が良いし照明もゴージャス。もっと小さいスペースで観たらまた全然違う印象だったかもしれない。

最後は向井千惠(+水晶の舟)。最初は胡弓を演奏。といってもメロディを弾くわけではなく、いかにも投げやりに胡弓をぶらぶらと揺らしながら弓をすべらして音を発し、時折ヴォイス・パフォーマンス。しばらくすると胡弓はステージ脇に置き、鎖のようなものにつないだタンバリンを乱暴にひきずりまわしはじめた。それを客席に落とすと、今度は皮のついたタンバリンをたくさんのスティックを持って叩く。それからドラムセットに向かい、やはり両手それぞれにたくさんのスティックを持ってドラムを演奏。このあたりから水晶の舟の二人が参加。向井千惠は最初のほうはわざと投げやりに見せているようなパフォーマンスだったが、シンバルも使ってダイナミックにドラムを叩くうちにだんだんと緊張感をみなぎらせていく。それから後ろの十字に張り巡らされた鉄管をよじ登り、あたりの鉄管を叩き出す。それから今度はバスドラの上へ。シンバルをとりはずして地面に落とし、タムを超えてステージに転がり落ち、それからダンス。客席にも降りて転げまわっていた。最後はまたステージに上がって胡弓を演奏。水晶の舟との共演とはいえ、激しい体当たりのパフォーマンスはまさに向井千惠の独断場で、すさまじいオーラを放っていた。脈絡などというものをほとんど感じさせない予測不能のパフォーマンスは、それぞれの部分だけ取り出してみれば今までにも同じようなことをやっているのを観たことがあるにしても、その瞬間ごとにハラハラさせられた。そしてテクニックに頼ることのない一見投げやりに見える演奏や仕草は、わたしの勝手な思い入れによるところもあるかもしれないけれど、深い絶望や痛みさえも感じさせるものだった。

今日は陰猟腐厭や水晶の舟をはじめて観ることができたのも嬉しかったのだけれど、何より向井千惠が圧倒的。向井千惠のパフォーマンスは何度も観ているけれど、おもに他の人との対等のコラボレーションだったし、今日ほどすさまじいパフォーマンスははじめて観た。本当にすばらしくて感動のあまり涙が出そうだった。

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d_i_p_f_e_s

夕方にサノトモさん、佐藤創一さん、村田いづ実さんが参加しているグループ展「ピース!」を観に渋谷LE DECOへ。30人ぐらいの作家が参加している展覧会なので、てっきりLE DECOの上から下まで全部使って展示しているのかと思っていたら、2Fのワンフロアに30人分の作品が全部展示されているという壮絶なグループ展だった。

場内ではサノトモさんと佐藤さんにお会いした。佐藤さんの黒い木枠のなかに新聞記事や雑誌の切り抜き、紙粘土でつくられた鳥のオブジェなどがコラージュされた作品は、鳥のピースな雰囲気が際立つように、バックにコラージュされた新聞や雑誌の記事はなるべく凶悪な内容や文字がみえるところを選んで貼っているとのこと。和紙の作品にラテン語で花の名前を書いた作品は、中国の和紙を使ったものと日本の和紙を使ったものが2種類。サノトモさんは人間のような標識のマークのような形に切った紙に色を塗ってビニールの袋に入れた作品を出品。これは前に神楽坂のイタリア料理屋でおこなわれた展示で観たことがある。あと2人の共作による紙粘土のオブジェ作品。先日イメージフォーラム・フェスティバルの打ち上げでお話しした村田いづ実さんの作品はCDのプラスティックケースを使ったもの。

それから新宿URGAにd_i_p_f_e_sを観にいった。ライヴハウスの前で田中さんと待ち合わせして一緒に入場。開演ぎりぎりの時刻だったけれど、まだそんなに混んでいなくてわりとあっさり前のほうに行くことができた。

最初はゲストの豊田道倫。今までパラダイス・ガラージ(豊田道倫+久下惠生)のライヴを2回観たことがあるが、豊田道倫のソロは初めて。最初はエフェクトをたっぷりかけたエレクトリックギターの音で不協和音主体の曲(「人体実験」?)。それ以降はあまり歪ませずに軽くディレイをかけたエレクトリック・ギターでシンプルなメロディを奏でる唄モノの曲を演奏。心に引っかかってくるような歌詞に関西弁のひょうひょうとしたMC、まさに言葉の人だと思う。余計なものが何もなくて、シンプルなのに濃密さを感じさせる音楽だった。

次はdipのベーシスト、ヨシノトランス(シタール)とanko(ギター/ヴォーカル)のユニット、TRANKO。タブラ、ハーモニウム/シンセサイザー、ベース、ドラムのメンバーを加えて6人編成でのライヴ。ankoことイチバさんは以前はベースでいろいろなバンドをやっていたのだけれど、ギターを弾くところを観るのははじめてだ。メインでヴォーカルをとるのを観るのもはじめて。ヴォーカルは最初の曲では「ニャー」とか「ハー」とか擬声語にエコーをかけたようなものだったけれど、あとのほうでは歌詞のある唄も唄っていた。ギターはかなり控えめだったけれど、慎重な様子でしっかり弾いていた。エフェクトをかけた音でちょっとエキゾチックなメロディを奏でるシタールは全体のサウンドの要。ベース、ドラムのリズム隊はわりとロックっぽいノリで演奏していたけれど、その上に民族楽器の気持ちよい音が乗っかっている。最初のうちはまったりとした気持ち良さだったけれど、だんだんバンドの演奏がのってくると、トランシーで体が自然に動くような感じの気持ち良さになっていった。

最後はdipのギター/ヴォーカル、ヤマジカズヒデのpharmacy。最初の曲は打ち込み+アコースティック・ギターの演奏。打ち込みはある程度作りこまれたサウンドをPCから出力していた(生の演奏も取り込んでミックスしているのかもしれない)。次の曲ではヤマジカズヒデはエレクトリック・ギターに持ち替え、PCのオペレーションをしていた人がベースを演奏。その後はギター、ドラムが加わり、4人編成のバンド形態で2曲演奏。サウンドはdipをもっと重く暗くしたような感じ。小さい紙に書いた歌詞をマイクスタンドにはさんで見ながら唄っていた。かなり若そうなサポートのギターの人は、モジュレーション系のエフェクターなどいろいろ使っている様子で、あまりギターっぽくないサウンド。ヤマジカズヒデに負けず劣らず相当上手い。2本のギターによる厚みのあるサウンドに圧倒された。

終演後は拍手が鳴り止まなかったけれど、ステージの幕が閉められて終了のアナウンス。3バンドともせいぜい30分ぐらいの演奏。最後のヤマジカズヒデは特に短くてあっけなく感じたけれど、もう用意している曲がなかったのではないかと思う。会場の外でイチバさんとヨシノさんにお会いした。出番のあと、混んでいて中のほうに入ることができなかったのだそうだ。TRANKOの自家製CD-Rをヨシノさんからじきじきに購入。シタールは先生について習ったとのこと。お2人ともライヴはとても緊張したのだそうだけれど、演奏も雰囲気もとても良かった。

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キセル楽団 / 我々

キセル楽団主催のイヴェント、「東京ヌードショースペシャル5」を観にいった。このイヴェントは高円寺のライヴハウス、20000VとGEARの2会場で同時開催され、昼過ぎから夜まで総勢20バンド以上が出演するというもの。たどりついたときには一番の目当てだった我々の演奏がもうはじまっていた。入場したときに演奏していた曲は、ギターの川田さんが我々にしてはけっこう長めのソロをとっていてカッコ良かった。ワーミーペダルでぐにょぐにょした音を出したり、バスドラにひょいっと乗っかって飛び降りたり。2月に無力無善寺で観たときも最後の最後にバスドラに乗っかっていたけれど、今日はいきなり飛ばしてるなーと思いつつ、今何曲目なんだろうと気にしながら観ていた。結局そのあと6曲ぐらい演奏。ヴォーカルのコマツさんは客席に出てきて唄ったりもしていたけれど、いつもに比べるとややおとなしい感じ。音量バランス的にもちょっとヴォーカルが聴こえにくい(ベースがちょっと大きめだった)。でもそんなに気になるほどのことではなかった。「ライヴ前1回しか練習していないし、出演バンド数が多いからリハーサルもなし」って川田さんは言っていたけれど、さすがライヴ慣れしていて堂々としたものだった。

我々が出演したのは20000Vのほうで、そのあと同会場で引き続きContiを観た。前からちょっと気になっていたシタールとドラムのデュオ。変幻自在の奇数拍子だらけの曲構成はインドの民族音楽などにヒントを得ているのだろうと思われるが、ギター用のエフェクターをかけてアグレッシヴに弾きまくるシタールといい、やたらに手数が多く機械のように正確にバシバシ叩きまくるドラムといい、まさしくプログレッシヴ・ロックだった。しかも二人ともインカムをつけて激しい演奏をしながらヴォイス・パフォーマンス。なんて言っているのかよくわからなかったけれど、勢いがあってリズムにしっかり乗っていておもしろかった。

その次も20000Vで、Telepathic Swingerを観た。アップライト・ベースとドラムのリズム隊2人はスイングとかルーツ・ミュージックっぽいオーソドックスな演奏なのだけれど、ギター/ヴォーカルの人はニューウェーヴっぽい鋭さのある演奏。その上声にならないような低いうなり声で唄うのがなんとも。唄いながらも相当キレた感じで弾きまくるギターが良い。これもまたなかなかおもしろいバンドだった。

そのあとは同じ建物の上階にあるGearとのあいだを行ったり来たり。Gearで観たグンジョーガクレヨンは、アヴァンギャルドでアングラっぽくて、しかも今まで観たことがないような変わった雰囲気だった。ギター、ベース、キーボード、ドラム、舞踏/ヴォイス・パフォーマンスの5人組。特に変なフレーズをごにょごにょっと速弾きするギターと、怪しいサウンドを発するキーボードが良い。舞踏/ヴォイス・パフォーマンスの人は正直なところ動きにいまいちキレがなく、あまり活躍していたとは言いがたいのだけれど、仙人のような風貌にはインパクトがあった。

Gearのトリ、NAPOLEONはすごく上手くてカッコいいロックンロール・バンド。ギター、ベース、ドラムのインストなのだけれど、グループ・サウンズっぽい曲もあればファンク・メタル調の曲もあり、音楽性はかなり幅広い。インストでも全く物足りなさを感じさせることのないギターの人のダイナミックな演奏には惚れ惚れした。最後にフランク・ザッパの「Peaches en Regalia」のカヴァー。最後はドラムもはじけまくりの激しい演奏でカッコ良かった。

そして最後は20000Vで、このイヴェントの主催者であるキセル楽団。キセル楽団は今までに2回観たことがあるのだけれど、延々と続く単調な打ち込みと生ドラムのリズムの上に、妙にノリノリで、しかしどこか醒めた感じのヴォイス・パフォーマンスが乗っていたり、サックスで一音だけプーーー、プーーーっと吹き続けていたり。この説明では何が良いのかさっぱりわからないと思うけれど、というか、実際に観ていても何がおもしろいのかさっぱりわからないのだけれど、それなのになんだか目が離せない。不思議なユニットである。現在のメンバーはドラム、ヴォイス・パフォーマンス/サックスの2人。どの曲も、まず打ち込みのリズムが鳴らされて、それに合わせてドラムもごく普通の8ビートのパターンをずっと同じ調子で叩き続ける。その上にヴォイス・パフォーマンスが乗る曲を2曲、そして最後にただサックスで一音を吹き続ける曲を演奏。何年も前に観たときと全く変わらない。ずっと同じリズムパターンなのに、必ず打ち込みとドラムは同時に終わる。それまで一切のおかずもなしに単調なリズムを叩いていたドラムが、最後だけパシーンとシンバルを叩いて終わるのだけれど、その瞬間なんともいえないものを感じてしまう。うーむ、なんなのだろう、この人たちは一体。しかし、今日はイヴェント主催者ということでお疲れだったみたいだし、過去に観たライヴに比べるとそんなには良くなかった。でもイヴェントの最後ということもあり、観客の声援に応えて1曲アンコール。

今日は我々とキセル楽団以外ははじめて観るバンドばかりだったけれど、おもしろいライヴをたくさん観ることができて本当に良かった。ライヴの合間や終演後、川田さんとお話し。今日の演奏をあとでテープで聴きなおすのが怖いなんて言っていたけれど、我々もとても良かった。遅刻してしまったのが残念なのだけれど。ちなみに2曲目の途中から観ることができたみたい。

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パスカルズ

以前から観たいと思っていたパスカルズが吉祥寺音楽祭に出演するので、夕方から吉祥寺に出かけた。パスカルズが出演するのは北口ロータリー野外特設ステージ(吉音スーパーステージ)。30分ずついろいろな人が出演する(入場無料)。たどりついたときに演奏していたのは須藤もんという女性シンガー・ソングライター。最後の1曲、「めし」という曲だけ聴くことができた。

次に出演したのが中川イサト。フォーク世代のミュージシャンともゆかりが深い大御所のギタリストだという知識はあったが、アルバムも持っていないしライヴを観るのもはじめてである。テクニックもさることながら、リヴァーブがかったアコースティック・ギターのサウンドが美しく、澄みわたる空気のように気持ち良い。ところどころ入るハーモニクスのサウンドがアクセントになってメリハリのある演奏。MCによると、最初に演奏した曲は3曲違うタイトルのついた組曲をメドレーにしたもの。これはわりとアコースティック・ギターの演奏としてはオーソドックスな感じだったけれど、2曲目では指板の上側から押さえるなどややトリッキーな奏法も見せ、最後の3曲目ではギターのボディを叩く音を交えたアグレッシヴな演奏だった(MCではそれでギターを壊してしまったこともあると語っていた)。演奏後、進行役ののろ(吉祥寺の時折ライヴもおこなわれる居酒屋)の店主と先日亡くなった高田渡の話など。

次は三宅伸治。全然知らない人なのだけれど、ギター/ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムのバンド編成でプロらしい観せかたを心得たロックンロール・バンド。停電してドラムの音しか聴こえなくなるハプニングが2度ほどあったけれど、動じることのない堂々としたパフォーマンスで聴衆を盛り上げていた。最後のほうでスタッフの人の肩車で客席内を一周。エレキ・ギターのケーブルがすごい長くてびっくり。

そしてお待ちかねのパスカルズ。リーダーのロケット松が鍵盤ハーモニカとマンドリン(?)、そのほかにトイピアノ、ウクレレ、ギター、バンジョー、アコーディオン、トランペット、チェロx2、ヴァイオリンx4、パーカッション、ドラムという大所帯。セッティングが大変そう。演奏前、ステージ上でパーカッションの石川浩司が着替えはじめたのには笑った。音量バランスは曲を演奏しながら調整していく状態。曲を演奏するごとにPAに対して要望が出され、ライヴの終盤に向けて各楽器のバランスがだんだん良くなっていった。トイピアノのあかね、ウクレレの知久寿焼がヴォーカルをとる曲、チェロの坂本弘道がミュージカル・ソウを演奏する曲、ヴァイオリンの4人がリコーダーを吹く曲など見所はいろいろ。石川浩司は東急ハンズのパーティ用品売り場に売っていそうな派手な色のかつらをかぶったり、空気が抜けるときに音の出る風船をふくらませてプーっと鳴らしたり、たま時代のキャラそのままで楽しませてくれた。一番良かったのはアンコールでやった「どですかでん」。武満徹が作曲した、黒澤明の映画「どですかでん」の曲のカヴァー。最新アルバムのタイトル曲だ。

パスカルズのあと、進行役ののろの店主のアナウンスがあり、先月亡くなった高田渡を追悼してゆかりのある人たちがステージにあがって「わたしはわたしよ」を演奏。高田渡のライヴは一度観たことがある(なんとわたしより7-8歳ぐらい若い友達に誘ってもらって観に行った)。そのライヴには、今ではソロアルバムを3枚発表している息子さん(高田漣)も参加していた。客席内のわたしのすぐ近くに高田渡の奥さんもいらっしゃって、最後にのろの店主(のろには常連の人たちと何度も飲みに行っているのにお名前がわからなくて申し訳ない)がこちらを指差して紹介されていた。同年代のフォーク歌手で活躍している人はまだたくさんいるのに、突然お亡くなりになってしまって本当に残念だ。

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シカラムータ / 躁鬱の宴

シカラムータのライヴを観に大塚welcome backに行った。このライヴハウスに来たのははじめて。店内は(よくあるロック系のライヴハウスなどと比べると)あまり暗くなくて、飲み屋っぽい雰囲気。会場にたどりついたのは開演ぎりぎり。最初に出演する躁鬱の宴のメンバーが、受付の脇にある楽屋からまさにステージに出ていくところだった。場内にはすでに立ち見の人もいたけれど、一応席の予約というのをしてあったので、スタッフの案内にしたがって席につく。しかしそれがなんとスピーカーのすぐ前の位置。スピーカーといっても、TVモニターを置いた鉄骨の上下によくスピーカーの表に貼り付けてあるような細かい穴のあいた黒い布が貼ってあって、その後ろにどうやら小さいスピーカーがあるのかなって感じのもの。別に予約席と張り紙がしてあったわけでもないし、真ん中の前のほうにも空席があったのだけれど、案内されてしまったものだから移動するのもどうかと思っているうちに演奏がはじまった。

躁鬱の宴のメンバーは、十時由紀子(ヴォーカル/コンサルティナー/アコースティック・ギター)、壷井彰久(エレクトリック・ヴァイオリン)、佐藤真也(ピアノ)、くどうげんた(パーカッション)の4人。タンゴっぽい雰囲気を感じさせる速いリズムの曲でライヴははじまった。くどうげんたのパーカッションがすごい。コンガ、ジェンベ、多数のシンバルや小物、それにエレクトリック・パーカッションも用いて、すばらしいテクニックの表情豊かな演奏だった。しかしパーカッションの音が大きすぎる。他のメンバーも実力のある人たちなのに、パーカッションの派手さと音量の影に隠れてどうしても単調に聴こえてしまう。ヴァイオリンの壷井彰久も、ところどころ流麗な速いフレーズで見せ場をつくってはいたものの、今までポチャカイテ・マルコやその他のバンドで観たのに比べると精彩を欠く演奏に感じられた。2曲目ぐらいにやったインストの静かな曲ではくどうげんたの音数が少なくて、まずまずのバランスで聴くことができたけれど、その後もリズムの派手な速い曲になると聴いていて辛かった。他のライヴハウスでスピーカーのまん前で演奏を聴くはめになっても、ここまでひどい思いをしたことはない。アコースティック楽器の音量をPAで上げるのには限界があるだろうし、お店側としてはあれでベストを尽くしていたのだろうけれど、あまりいい設備のハコではないなと思う。会場の後ろのほうではだいぶましだったかもしれないが。文句ばかり書いているけれど、唄モノ、インスト織り交ぜ、いろいろな民族音楽の要素が混じった音楽性はなかなかおもしろく感じた。それにコンサルティナーという楽器を観たのははじめて。六角形のボタン式蛇腹楽器で、バンドネオンと似ている。

躁鬱の宴の演奏は1時間ぐらい。それからピアノを脇のほうに動かし、大量のパーカッションを片付け、ドラムのセッティングなどをするのに30分程度。

今日のシカラムータは男祭りと題して、大熊ワタル(クラリネット他)、桜井芳樹(ギター)、関島岳朗(チューバ)、吉田達也(ドラム)、佐藤芳明(アコーディオン)の5人編成。去年の10周年記念ライヴのときにゲスト出演していた佐藤芳明がまた観られるのが嬉しい。全編に渡ってこのメンバー構成での演奏だった。最初のほうは聴きなれない新曲が多かった。MCでも「今回初めて演奏する曲」、「抱瓶(高円寺の沖縄料理屋 わたしは観ていないのだけれど3月にシカラムータがライヴをやったお店)で初めて演奏した曲」などと紹介。また、佐藤芳明のオリジナル曲「サラエボの花」を演奏した。大熊ワタルがこの曲について佐藤芳明に話題を振ると最初は「話すと長くなるので」というような返答。メンバー(桜井芳樹だったかな?)から促され、手短に「サラエボのジャズ・フェスティバルに出演したときに思ったことをもとに作った曲」というような紹介をしていた。シカラムータの曲の中で演奏されても全然違和感がなく、とてもいい感じだった。その後はシカラムータの最新アルバムからの曲が続く。「STARA PLANINA」、「光線とフイゴ」、「眠り男の遁走」、そして「不屈の民」。これで終了して楽屋に戻ろうとするにも、前のほうのテーブル席の間にも観客がいるものだからステージから降りることができない(客席を通らないと楽屋に行くことができない)。客席からの拍手とアンコールの掛け声に応じて、そのまま「アルバート・アイラー・メドレー」を演奏。シカラムータは1時間超の演奏で終演は10時過ぎ。最後ちょっと時間を気にしていた様子だった。

気になる音のバランスは、躁鬱の宴のときよりもだいぶいい。アコーディオンがちょっと小さめ。チューバの音が大きかったけれど、サックス、トロンボーンがいない今回の編成ではそれもまた良かったかなと思う。ドラムの吉田達也はやや力をセーヴしながら叩いていたかもしれない。やはりPAのことを気にしながら聴いていていたものだから、いまいち集中して入り込めなかったのは否めないけれど、大好きなシカラムータのライヴだし十分に楽しめた。シカラムータはまずまずのバランスで聴くことができたことから考えると、躁鬱の宴は、アコースティック楽器を多用するバンドにしてはかなり変わったアレンジを施している難しいバンドだということは言えそうだ。それが良いのか悪いのか、今日観ただけではなんとも判断しがたい。もっとPAのいいライヴハウスでだったらまた観てみたい気がする。

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Synapse

Synapseのライヴを観に吉祥寺MANDA-LA2に行った。同名のバンドが他にもあるけれど、これは藤木弘史さん(ピアノ)とpop鈴木さん(ドラム)のデュオ。藤木さんは以前、わたしが出演している山田勇男さんの映画『ロング・グットバイ』で音楽を担当している。エンド・クレジットに出てくるのは今井雅幸さんのみだけれど、演奏しているのは今井さん(マンドリン)、藤木さん(アコーディオン)、勝井祐二さん(ヴァイオリン)の3人(なんと超豪華メンバー!)。

Synapseのライヴは去年の7月にもMANDA-LA2で観ているが、そのときはチェロの坂本弘道がゲストで参加していた。今日は2人だけで演奏。1曲目はピアノ、ドラムとも激しく弾きまくる曲。pop鈴木さんはいろいろな種類のスティックを持ち替えながら演奏していたが、ブラシを使うときでも渾身の力をこめて思いっきり叩いている。スネアを布でミュートしていたけれど、音量的にはピアノに勝ってしまう。でも藤木さんもグランドピアノに向かって指を叩きつけるようにして、時には椅子から腰を浮かしてダイナミックに弾きまくる。このような2人の激しい演奏の応酬は今までに観たSynapseのイメージどおり。しかし2曲目以降は今までとはまた違った面も見せてくれた。なによりも新鮮だったのは藤木さんがヴォーカルをとる曲が数曲あったこと。今までSynapse以外にも藤木さんがやっているバンドは観たことがあるけれど、唄っているところを観たのははじめて。曲のなかで断片的に少し唄が入ってくるようなものもあれば、全編に渡って唄が入る曲もあった。そのうち2曲はやぎのカヴァー(「弥勒」ちなみに藤木さんは元やぎのメンバーでもある)とYMOのカヴァー。どちらか忘れてしまったけれど、1曲はpop鈴木さんとほぼツイン・ヴォーカル。藤木さんの唄は、ちょっと慣れていない感じはしたけれど、しっかり言葉が聞こえるように唄っていてとても真摯な感じがした。今回は唄が入ったことで今までとは違った印象のライヴだったけれど、とにかくピアノとドラムのデュオと聞いて想像するようなものとは全然違うのがSynapseの音楽。

Synapseも良かったけれど、今日はまた対バンがすばらしい。2番目はエコエコサイクルズ。かなり昔から割礼の対バンなどで観ているけれど、最近はヴォーカルの山田和男のやんちゃ度が増しているような気がして、観ていてなごんでしまう。唄い終わったときにちらっとピースサインとかするし。演奏も良くて、客席の反応もむちゃくちゃいい感じ。気がついたら立ち見のお客さんもたくさんいた。真ん中あたりでやったスローな曲「時間」はイントロで失敗してやりなおしていたけれど、山田和男のギターのシンコペーションの響きとヴォーカルがすーっと頭の中に入ってきて気持ちよかった。

そして最後にポエティックランドスケープが出演。これは元割礼の島雅彦がドラムのバンド。ライヴを観るのは3度目くらい。タイミングが悪くて意外と観ていない。ライヴ前半では、なんとなく前観たときよりもダークでひりひりするような感じの音になったような気がした。でも後半はバンド名そのもののようなちょっとフワっとした美しい感じになっていって、だんだん気持ちよくなっていった。後半のほうが今までに観たときのイメージに近い感じがする。しかし、それにしても今日の島雅彦のドラムは何かすさまじい気合を感じさせるドラムだった。手放しですごい良かったというのとはちょっと違って、心のどこかに引っかかってくるような演奏だった。

終演後、藤木さんと少しお話。今日のお客さんで、山田さんに自作の映画を観ていただいたことがあるという映写技師の方がいらっしゃったらしい。いろいろな人脈があるものだなぁと感心。Synapseがエコエコサイクルズとポエティックランドスケープと対バンというのも、いつも観たいライヴがいっぱいあって困っているわたしにとってはなんともすばらしい組み合わせで嬉しかった。

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