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バ  ング  ント

ア ヤ   ズ エキシビション「バ  ング  ント」を観に元麻布のP-HOUSEに行った。90年代半ばに「動物堂」を開店して以降、アートの世界ではほとんど名前を聞くことがなかった飴屋法水による久々の展覧会である。P-HOUSEもまた、恵比寿でギャラリー&カフェとして営業していたのが数年前に無くなり、このたび元麻布で再開とのこと。

飴屋法水は、911のテロによる貿易センタービル跡地の映像にインスパイヤされて、今回の展覧会の「消失」というテーマを思いついたらしい。それでタイトルなどの文字がところどころ空白になっている。なるほどわかりやすい。しかし「消失」というテーマは相当に深い。東京グランギニョルやTECHNOCRATなどジャンルの幅にとどまらない活動をおこなってきた飴屋法水が、ここ10年近くも動物堂の店主という肩書きのみで世に出ていたというのは、それ自体「消失」と言うことができるだろうし、P-HOUSEにしたってそうだ。

展覧会にはミュージシャンの大友良英、美術評論家の椹木野衣も参加。このメンバーからは、P-HOUSEよりはむしろ梅屋敷にあったレントンゲン藝術研究所を思い出してしまう。P-HOUSEは恵比寿以前の渋谷のマンションの一室のようなところでやっていたときから訪れているけれど、いわゆる現代アートのギャラリーというよりは雑多なサブカルチャーを扱うオルタナティヴ・スペースという印象だった。あの頃と今とでは、世の中はけっこう変わってしまったなと思う。わたし自身は、変わった部分もあるけれど、おそらくたいていの人からみれば全然変わっていないと言われてしまいそう。

日本の現代アート界がまだ微妙にバブルを引きずっていた90年代前半あたりと、今現在との違いに思いを馳せるほど、この「バ  ング  ント」展が非常に象徴的なイヴェントであるように感じてしまうのだけれど、別に今のわたしとしてはお祭りに参加したくてアートを観るわけではないのだ。展示内容についても、実際に行った人の話や、事前にインターネットに流れる情報を読んだりしてすでに知っていたから、実際にギャラリーで作品を観ることによって、これ以上にいったい何を思うだろうという気持ちを抱きながらP-HOUSEを訪れた。

展示のメインは、ギャラリーの中に設置された白い箱のなかに飴屋法水が閉じ込もっていて、会期中(7月29日~8月21日)ずっとその中で過ごしているというもの。箱をノックすると、中からノックで返事が返ってきたりするらしい。また、真ん中の顔の部分だけ白く消えた状態で写真が写る証明写真のBOXが置かれていて、来場者が自身で撮った写真に一部を消した名前が書かれて壁に雑然と貼られている。

別の部屋の壁にはサ ラギノ (椹木野衣)のテキスト。確か怪獣がどうのこうのというような内容。やはり文字がところどころ消されている。そのテキストのあいだにはヘッドホンジャックのような穴が空いている箇所があり、備え付けのワイヤレスのヘッドホンを装着して穴を指でふさぐと、オ トモ シヒ (大友良英)によるサウンドを聴くことができる。サウンドは君が代の音を部分的に消したものらしいが、まるで原曲をとどめていなくて多くは抽象的な持続音のようなものと化している。でもノイズや喘ぎ声、ラジオの音のようなものもあった。いっぺんに2つの穴をふさいだり、穴をふさいだり離したりするのを繰り返すと、自分で演奏しているような気分になることができて楽しい。ちなみに大友良英の作品はトイレの中にも仕掛けてある。トイレの中に微弱な音がずっと流れているのだけれど、どこかをさえぎると消えるらしい。

ギャラリー内には「前所有者が死亡した後、所有者の確定しない土地と土について」「死亡した人間が所有し続ける車について」などと題されて登記簿がそのまま壁に貼ってあったり、ばっさりと切断されて中間部分がなくなった車の部分、それ以外にも細々としたものがいろいろ。

しかし、どうも全体的に無造作な感じのする展示である。壁のところどころ、下のほうに四角い穴が開いていて裏の配線が見えている。これは意図的なものなのだろうか。予算が足りなかったとかだったら悲しい。自由にねじを巻いて音を出して構わないというメトロノームはただ床にごろんと置いてあるし、虫眼鏡で覗くと人物の像が見える映像装置は、斜めから覗いても像が見えてしまう。ちなみにその映像装置はハ ヤ   コ(八谷和彦)による介入作品。

最後に飴屋法水が閉じこもっているという白い木箱をノックしてみる。もう会期がはじまってから相当経っているし、かなり衰弱してしまっているかもしれないと思ったけれど、わりと元気そうにノックの返事が返ってきた。会期が長いので、肉体的にも精神的にも大変だと思う。よくこんなことを考えたなとも思うし、こういう肉体の極限に挑戦するようなことをやるアーティストってけっこういるよなとも思う。でも本人よりもむしろギャラリーの人など周囲の関係者のほうが心配してハラハラしているのかもしれない。ずいぶんとお騒がせの展示でおもしろいと思うけれど、おもしろがるというのもなんだか不謹慎なようで、どう受け止めていいものやら悩む。

ギャラリー内ではばったり岩崎さんに遭遇。岩崎さんは3日前にここでおこなわれた、笙/イシ ワコ (石川高)とサイン波/ chik  M(Sachiko M)のライヴを観て非常に感激し、今日はあらためて展示をじっくり観にきたとのこと。ちなみにそのライヴの日はわたしは六本木ヒルズで「カバレット・アリーナ」を観ていた。つい3日前もすぐ近くにいて、そして今日ここで出会うとはなかなかの偶然。このあとわたしはすぐ近くのSUPER DELUXEにライヴ&映画を観に行くので、岩崎さんに挨拶して先にギャラリーを後にした。

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