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P-ブロッによる雑音楽

衆議院選挙の投票をすませてから、用賀の世田谷美術館に「P-ブロッによる雑音楽」を観に行った。P-ブロッは野村誠率いる鍵盤ハーモニカ奏者5人による楽団。雑学、雑貨、雑種、雑魚など、「雑」がつくものは面白いけれど「雑曲(ざっきょく)」というのは聴いたことがないのでつくってみよう、ということで実現した企画だそうである。受付で配布されたパンフレットは、文字が斜めに印刷されていたりして、それもなんとなく雑っぽい雰囲気を出すためとのこと。

演奏は企画展示室に入場する廊下をつっきったところの、外光が入る扇形の展示室でおこなわれた。このときの世田谷美術館はちょうど展覧会の合間で、展示室は何も展示されていないがらーんとした空間。白い壁には前の企画展の展示跡と思われる目印のような薄い線や文字が残っている。

この展示室は高い天井にやたら音が反響して、もわもわっとした音になってしまう。今までPブロッあるいは野村誠の鍵盤ハーモニカの演奏を、ライヴハウス、路上、音楽ホール、お寺などいろいろなところで聴いてきたけれど、こんなに音が反響するのははじめて。細かいニュアンスがそがれてしまう点はいまいちだけれど、またいつもとは違った音に聴こえてちょっと新鮮。

第1部は「P-ブロッ雑プログラム」ということで、P-ブロッが過去に演奏してきた曲を集めたプログラム。ここ2-3年の曲が多かったけれど、1996年のP-ブロッ結成初ライヴで演奏したという平石博一の曲もあった。この結成初ライヴのときは、「江村夏樹、しばてつ、Michael Parsons、大友良英、Taske、脇坂明史、河合拓始、平石博一、野村誠と9人の作曲家がP-ブロッのために新曲を書いた」とのこと。まったく知らない作曲家も混ざっているけれど、このジャンルレスというか、幅の広さはすごい。第1部のあと少し休憩。

第2部は「雑談と雑曲」ということなのだけれど、野村誠は、いかにも雑にとりとめもない話をしようとしつつ、「ここは音が反響しすぎて、はっきり話さないと会話が成立しないですね」。林加奈は客席を動き回って、観客に話し掛けたり、手を叩いたり、足を踏み鳴らしたり。それにしてもパンと手を叩くだけで本当に良く響く。最前列で鍵盤ハーモニカ持参で来ている子供がいて、「今日はセッションとかはしないから弾くなら今しかチャンスがないよ」と話しかけられたりしていて、休憩の延長のようなダラダラとした時間だった。そのようなわけで、第2部はもしかしたらもっと充実したものになる予定だったのかもしれないが、ほどなく10分弱で終了。

第3部は今回初披露の新曲を集めたプログラム。最初は鈴木潤雑曲「P-ブロッメンバー紹介」。単なるソロ回しになりそうでならないところがP-ブロッならでは。

野村誠雑曲「鍵ハモのための雑曲集」では、短い曲を10曲。「黒鍵カタカタ」「上昇と下降」「指づかい」「トリルと和音」「5声転調」「好きな順に」「ポンコツセッション」「どだけ・どれだけ」「マッサージ演奏」「10音のホケット」というタイトルがつけられている。ちなみに「どだけ・どれだけ」というのは、ドレミファソラシドのドだけ、ドとレだけ組み合わせたパートで構成される曲。「マッサージ演奏」では鍵盤ハーモニカをマッサージするように体にこすりつけて音を出す。とてもシンプルなコンセプトだけれど、一曲一曲おもしろかったし、全体では鍵盤ハーモニカで出すことができるいろいろな音を味わうことができておもしろかった。

林加奈の「ザ☆曲」は、演奏&叫びの力技(?)。でもあっというまに終わってしまってあまり印象が残っていない。

しばてつ雑曲「5chサラウンド・サウンド~ハイドン変奏曲」は、5chサラウンドということで、5人のメンバーが客席を取り囲んで演奏。曲は有名な賛美歌。「テーマ」「くり返し」「速くなる」「五奏法」「♪増加」「バイオリン的soloとのばし」「のばし」「ラベル風ハイドン」「カノン」「コール&レスポンス」「3音転調」「5声部」「マイナーハイドン」「コーダ」というパートごとにいろいろな奏法を駆使して演奏。パートごとのタイトルを見ながら、ふむふむなるほど、と思って聴いていたけれど、その境目がわからなかったところもあった。各々が弾いている内容はかなりシンプルなのだけれど、音を出す順番はもちろん、音をどこまでのばすかなど厳密に決まっている様子。メンバーみな非常に慎重に演奏をしていて、あまり「雑」ではなかったかもしれないけれど、試みそのものは非常に楽しめた。

吉森信雑曲「壁のむこう」は、鍵盤ハーモニカのホースをはずし、そのホースの息の噴出し側をもともと差し込んであったところに向けて片手で持ち、息が少ししか楽器に入らない状態で演奏。これはとても新鮮だった。この思いつき自体も新しいけれど、出てくるかすれた音もすごく変わっていておもしろい。

第3部終了後は美術館前広場で「犬のための音楽会」の予定だったのだけれど、あいにく外は雨。世田谷美術館がある砧公園には犬の散歩をする人が多く訪れるそうで、犬のために演奏をしようという企画だったのだけれど、雨のせいで人も犬もいない。一応エントランスの屋根のあるところに何人かの客やP-ブロッのメンバーが溜まって、外の様子を見ていたのだけれど、そうしたらなんと雨の中犬の散歩をする人が通りかかった。林加奈と鈴木潤が果敢にも雨の中出て行って演奏。でも、「かえって怖がられたみたい」と言って戻ってきた。外の雨足は相当強い。そんな具合で30分ほどだらだらと雑な感じで過ごして演奏会は終了。

ところで企画展をやっていないときの美術館を訪れたことってほとんど記憶にないのだけれど、常設展やミュージアム・ショップなどは開いていた。利用者は、いないことはないのだろうけれど、少なくともショップに2人もスタッフがいるのは無意味な気が。公立美術館に対する予算が削られて苦しいという話をよく聞くし、個人的にはその事態を憂慮しているのだけれど(昔よりおもしろい展覧会が少ないと感じるのは事実)、予算が少ないなら少ないなりにやれることはまだいくらでもあるのではないの? と思った。

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